キャリアのゴールは部長だけ?管理職を目指さない選択と専門職制度を考える

キャリアのゴールは部長だけ?管理職を目指さない選択と専門職制度を考える

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多くの日本企業のキャリアパス制度とは、概ね管理職の階段をのぼっていくことだけ。つまり従来は

係長→課長→部長→事業部長→役員

と昇進することが、全ての会社員にとっての目標・ゴールでした。

しかし、価値観や働き方が自由になりつつある昨今。果たして、会社勤めの全ての人にとって「管理職になること」が最終目標でしょうか?上級管理職になることだけがキャリアのゴールでしょうか?

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より上の役職を目指すことが勤め人としてのモチベーションという人もいますが、企業に勤務するすべての人が管理職に向いているわけではありません。仮に自分で管理職になることを希望していたとしても、マネジメント業務がうまくいかないことだってあります。

あるいは、自分の専門性をもっと高めたいのに一定年齢や勤続年数に達すると管理職の道だけを打診され、部下の世話ばかりで自分の技術スキルを磨く暇がなくなり、そのストレスから心の病になってしまう事例も少なくはないのです。

2002年に島津製作所の田中耕一氏がノーベル化学賞を受賞できたのには、いちエンジニアとして研究開発の現場に居続けることがポジティブに作用したとも考えられませんか。学位も地位からも距離を置き、ただ自分の好きな研究に没頭できたからこそ、大偉業を成し遂げたとも言えますよね。

欧米企業、とりわけIT企業では専門職のキャリアパスを設けている企業がほとんどです。そして役員待遇の専門職が、本物の役員より高給取りということもざらにあります。

日本市場にもエンジニアという職種の人が格段に増えてきました。IoTやAI、RPAなどの先端技術の進化で、特にITエンジニアと総称される人々は、まさにこの時代の寵児といえます。

彼らの多くは管理職のレールに乗るより、第一線の技術屋であり続けることを望むので、ITエンジニアの増加がひとつの引き金となって、ついに日本でも専門職制度を新たに設ける企業が増えてきました。役員と上級エンジニアの発言力が同一なんて、スキル探求したい人にとっては理想的です。

今回は専門職制度を導入する意義について、考えてみたいと思います。

キャリアパス

キャリアパス (Career Path) とは経営学用語の一つで、企業における従業員が(目指す)職位に就くまでに、進んでいくことになる経験や順序のことです。従業員の異動や昇進のルートとも言えますね。

また個人の視点から見ると、将来自分が目指す職業あるいは職位に到達するためには、どのような形で経験を積んでいくかという順序や計画を指します。

キャリアプランとの違い

キャリアパスはキャリアプラン (Career Plan) と混同されがちですが、その違いは次の通りです:

  • キャリアパス :所属する企業で出世するための目標
  • キャリアプラン:転職や独立起業も含めた個人の職業計画

キャリアパスは、企業とその従業員に紐づくものであることが、確認できましたね。

キャリアパス制度のアドバンテージ

日本企業でもキャリアパス制度が必要となってきた背景には、終身雇用が当然だった時代がついに終わったことがあります。

新卒社員でさえすでに入社時の段階で、将来キャリアアップのために転職する時期を頭に置いているのが当たり前となった今では、誰にとっても将来のキャリア像が描きにくくなってしまったのです。

今や新規採用も思うようにいかない企業にとって、離職者を一人でも多く減らし、優秀な人材を継続的に確保することが、大きな課題となりました。そのソリューションの一つとして、キャリアパス制度の導入が、あっという間に日本企業のトレンドとなりました。

自分のキャリアパスから、どんな仕事をどの位の期間担当し、それがどの程度のレベルになれば、どのポストに昇進できるのか、あるいは自分のスキルと経験を社内のどこで、どのように活かせて、その先にはどのようなチャンスが待っているのかを、従業員一人一人に把握させることが企業側でのキャリアパス制度の目的です。

従業員側も、自分が企業のどの位置にいるのか、何年後に出世の可能性があるかなど想定することができるため、転職にも慎重になるため、突発的な人材の流出を防ぐことにもなりました。

管理職にならない場合

ところがキャリアのゴールが管理職だけとなれば、当然問題になるのが管理職ポストが足りないということ。実力もさることながら、タイミングが悪くて上が詰まってしまっていたため、担当課長、担当部長といった組織を持たない管理職という、微妙な位置づけの管理職ポストを後付けするしかなくなりました。

それでも管理職を自分のゴールとしている人は、明日を夢見て打診されたポストを受け入れますが、問題なのは技術系であれ、営業系であれスキルフルな従業員の場合。彼らは組織の面倒を見るより、研究開発に没頭したかったり、部下の後始末をするより、自分だけのインセンティブの方が大事なので、上長が管理職への昇進を匂わせたところで、全く興味を示さないということも。

能力があってそれを企業も認めているのに、昇進しないことには、大きく待遇がよくなることもない。そんな彼らを何らかの形で取り立てることが、現行のキャリアパス制度ではなかったために、希望をなくした彼らは転職したり、独立して企業を去って行く人が多くなったのは、仕方がないことでした。

専門職制度

専門職制度とは、特定の分野における専門知識や、優れた能力を持つ従業員を評価して、管理職や役員と同じような待遇で厚遇するもの。管理職と同等の権限が付与され、同レベルの管理職と同等かそれ以上の給料が得られます。

日本における専門職制度は意外と古く、1960年代ごろに登場していました。しかしそれは単に既存の人事制度の穴を埋めるものとしての位置付けでしたので、現在の専門職の内容とは異なります。

平成時代の専門職は、まずは先端技術のITエンジニアのような、最新の技術力を持った従業員が対象でした。得意分野での能力に対して評価されるため、管理職でない技術者にとって、働く意欲や自己を向上させるモチベーションとなりました。

専門職がエキスパートとしてさらに自らの能力を高め、そのスキルを組織内で発揮してくれるのならば、企業にとっては大きな利益になるというもの。こうして自社のキャリアパスに専門職制度を取り入れる企業が、IT企業を先人として徐々に増えていきました。

企業によりますがその後専門職の対象は拡大して、営業のエキスパート、弁護士、弁理士、税理士など特定の資格を有する人材も専門職に加えられています。

管理職以外のキャリアの設定ができるようになるので、専門能力の高い若い従業員にとって先人となる専門職の活躍が、大きな励みとなるのは間違いないでしょう。

専門職としての職責と立ち位置

専門職の業務内容と職務の評価基準は、もちろん企業によって異なりますが、得意分野で企業に貢献することが絶対条件です。よって専門職は自己の専門スキルを継続して向上させる必要があり、また率先して新しい経験を積まなければなりません。

部長待遇の専門職の所属はxx部であっても、レポートラインは事業部長、役員、社長など自分より上の役職となることがほとんどです。

重要案件では企業横断型のプロジェクトチームを作り、自らプロジェクトマネージャーとしてチームを率い、プロジェクトを成功させることも期待されます。

あるいはエキスパートとして、勉強会やワークショップを開催し、自分の優れたスキルを他のメンバーに伝授する「親方」的な役割も担うのが常でしょう。

専門職制度の課題

残念ながら専門職制度の導入はいいことばかりではありません。ほとんどの企業でまだ歴史が浅い制度なので、専門職の従業員がいく末を悩まないように、課題は迅速に解決すべき。

地位が確立していない

日本ではどうしても、「xx長」と役職についている人が偉く見えてしまう。企業内の評価がどんなに高くても、外部の人には専門職の地位は低いとみなされることがほとんどなので、時には心が折れてしまうこともあります。

キャリアの次ステップが見えない

管理職の場合は、昇進の段階が明らかですが、専門職の場合はその上に昇進するための道筋が不明瞭な場合がまだ多いのです。専門職のモチベーションがなくならないうちに、企業では専門職のキャリアパスの詳細を定めることが望まれます。

○オムロン社の事例

ここで2005年から専門職制度を置いている、オムロン社の事例を紹介しましょう。

制御機器から電子部品、公共交通、健康機器などさまざまな事業を展開しているオムロンでは、企業価値の向上と持続的な成長のためには、組織管理力の強化、そして専門性の向上が心要であると考え、求める人財像を管理職と専門職の2つに大別し、それぞれの昇進コースを明確にしています。

同社には管理職経験がなくても、30歳から受験できる専門職の昇格試験制度を設置しています。これは書類審査、論文および面接試験で適格者を認定するもので、研究、開発といった技術分野をはじめとし、生産、品質環境、SE、営業、スタッフ(税務、知財、法務)などの分野で専門職認定を実施し、現在約80名の専門職が認定されています。

事業貢献を担う人材として専門職の給与の上限は、同レベルの管理職より高く設定しているので、成果次第では昇格次の2倍以上の年収を得ることも可能ですが、結果が芳しくなければ降格もあります。

専門職のランクは、管理職同様に四段階の用意があるので、専門職になって次のステージが見えないということがありません。技術者の専門職に関して言えば、まだ該当者は不在ですがトップランクは執行役員待遇の「フェロー」と称され、ノーベル賞クラスの人材であることが期待されているのです。

晴れて専門職になった人たちに課せられる条件は厳しいものですが、ある程度の責任と裁量を持ちながら、現場に近いところで仕事が続けられることこそが、専門職が最も望むところ。さらに専門職としての能力発揮やスキルアップ、事業貢献の在り方の特性を踏まえた、次の制度が用意されています:

  • 個人単位の特別予算
  • 最長1年間の探究休暇(専門性を高めるための休暇)の設定
  • 定年(60歳)後もオムロンが必要とすれば、本人の合意をもとにマスター専門職として契約

自分の専門技術の成果が評価され、やりたいことに挑戦できることや、自由な立場なので他部門とのコラボもしやすいため、新たな新事業のアイデアがどんどん生まれているようです。

専門職制度導入のススメ

従業員の特性を生かし、優秀な人材の採用や定着にも寄与する専門職制度は、企業の生き残り策としても有効な仕組みです。専門職に求める役割を明確化し、キャリアパスを整備していくことで、社内外の専門職の地位も向上していけば、最初から専門職のキャリアパスを選ぶ若い世代が増えるはず。

第三の企業発ノーベル賞受賞者の出現が、そう遠くないかもしれませんね。

 

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