サードプレイスを日本流に再構築!サウナやスナックも立派なサードプレイス

サードプレイスを日本流に再構築!サウナやスナックも立派なサードプレイス

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「サードプレイス」を直訳すると「第三の場所(居場所)」。一足先に海外に進陶し、日本でも昨今は広く馴染んできた言葉となっています。今回はサードプレイスの必要性やその役割について、正しく理解していきましょう。

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サードプレイスとは

サードプレイスが生み出す新しい経済と日本でのありかた

アメリカの社会学者であるレイ・オルデンバーグ氏が、著作である「The Great Good Place」で1989年に提唱した概念です。その中でのサードプレイスとは、帰宅前に軽く息抜きができたり知り合いにも会える、最も居心地のよい第三の場所。

ちなみにファーストプレイスは家庭(自宅)のことで、セカンドプレイスは職場や学校など、自宅以外で長時間を過ごす場所のことです。

以前のアメリカといえば完璧な自動車社会で、ビジネスパーソンは、自宅と職場を往復するだけの状態でした。つまりサードプレイスが消滅していたのです。そこで同氏はサードプレイスという概念を改めて提唱することで、アメリカ社会に警鐘を鳴らし、ゆとりや活気そしてコミュニティが必要なことを示しました。

サードプレイスのイメージは、イギリスのパブ、フランスのカフェ、日本ならサク飲みできる居酒屋でしょうか。つまりサードプレイスのキーワードはスロー・フードです。こうした場所が、ストレスの多い現代人にリラックスを与えてくれるのです。

サードプレイスの特徴

オルデンバーグ氏が挙げる、サードプレイスの特徴は次の8つ:

  • 中立性
  • 社会的平等性の担保
  • 会話が中心に存在する
  • 利便性がある
  • 常連の存在
  • 目立たない
  • 遊び心がある
  • 感情の共有

様々な立場の人々が社会的立場を気にせず、気軽に交流できる場が、サードプレイスといえますね。

日本はサードプレイスが浸透しにくい?

それは何故でしょうか。ファーストプレイスとセカンドプレイスの整備に注力された結果、再開発された都市近郊地に集められた国民のほとんどは、通勤に長時間費やすことになり、自宅と職場の往復でほとんど1日が終わっていたからです。

日本人は欧米の人々に比べ、サードプレイスが持ちにくかった理由は他にもあります。

  • 飲食店の単価が高くて、気軽に立ちよることができない
  • せっかく店となじみになっても、再開発事業などで店がなくなってしまう

しかし近年ではベットタウンの広い家より、利便性の高い都市部の狭い部屋を選ぶ人が、若者のみならずシニア層にも増えてきたので、徐々に状況が変わってきました。

サードプレイスがもたらす効果

問題や悩みを抱えている時、人は自分だけの「逃げ場所」にこもりたくなるものです。物理的な逃げ場所があれば、いつの間にか安らいで、解決策が浮かんでくる可能性が大きいため、サードプレイスには、精神的負担を軽減する効果があるといえます。

日本のサードプレイスは3タイプ

日本のサードプレイスは3タイプ

法政大学地域研究分野の論文である、地域コミュニティにおけるサードプレイスの役割と効果 によれば、日本におけるサードプレイスには交流型と、マイプレイス型があるとのこと。さらに交流型には、社交的交流型と、目的交流型に分けられます。

1.社交的交流型

社交的な交流を目的にする場所のことで、オルデンバーグ氏が提唱したオリジナル

例:イギリスのパブ、フランスのカフェ、日本の居酒屋

2.目的交流型

社交以外の明確な目的がある場所。さらに新たな特徴が付加されている

例:異業種交流会、地域コミュニティ、クラウドファンディング、サードプレイス・ラボ

3.マイプレイス型

誰にも邪魔されずに、自分一人が気持ちよく過ごす場所。サードプレイスの特徴で、会話、常連などの要素が該当しない

例:日本の喫茶店、コアワーキングスペース、シェアオフィス

余談:日本のスターバックスは欧米とは違う(らしい)

日本と欧米ではカフェの位置づけが違います。パリのカフェは他の人とのコミュニティを作る場でもありますが、日本のカフェ(喫茶店)は閉鎖的なところが好まれるので、交流は生まれません。

アメリカ発祥のスターバックスは、イタリアのエスプレッソバーの雰囲気が気に入って、アメリカにも同等な交流の場所を作りたかった創業者の思いから始まったので、サードプレイスを意識した店作りをしています。

日本に上陸したときも同じ姿勢で、交流型としての店づくりでした。まもなく若い世代中心とする熱狂的なファンが生まれましたが、中高年の男性には居心地が悪いものでした。彼らはカフェ(喫茶店)に交流の場を求めておらず、一人の空間を欲したからです。

そこで日本のスターバックスでは、欧米にはないマイプレイス型並行の店づくりに転じたというわけ。今ではシニアな男性にも支持されていますね。

日本にもあったサードプレイス

サードプレイスが、新規ビジネスや地域振興の起点になりつつあります。飲食店や駅、図書館など、誰にでもおなじみの場所が、年齢、性別、そしてバックグラウンドが異なる人同士を結びつける場に変わったのです。例をあげてみましょう。

●スナック

全国に約10万軒はあるといわれるスナック。店馴染みの男性が、カウンターの綺麗なママに身の上話をしているイメージがあります。ちょっと前までは中高年男性の天国でしたが、今はサードプレイスとして関心を寄せる若者が多く、交流の場を求める若者が夜な夜なスナックに集まり、新規ビジネスねたをつまみに、お酒を飲む風景が珍しくありません。

●サウナ

サウナも新たなビジネスの起点になりました。JALが2019年末にスタートさせた、大人気マンガの「サ道」と提携した各地のサウナを案内する「サ旅」(Aauna Journey)。

このキャンペーンは、「サウナで企業がつながる」というオープンイノベーションであり、JALとコクヨが共同代表を務めるJAPAN SAUNA-BU ALLIANCE (ジャパンサウナ部アライアンス)のメンバーが、サウナの中で話し合ったことから生まれました。

●コワーキングスペース

昨今のコロナショックで、日本企業のテレワーク導入が待ったなしになってきました。家族が同居しているので、自宅で仕事をするのが困難というビジネスパーソンにとって、今後テレワークの拠点として、サードプレイスが重要なインフラになります。

無論コワーキングスペースは、フリーランスやクリエーター、スタートアップ企業など、副業、起業の場にも活用されるので、いろいろなタイプの利用者が集まることで、様々な交流が生まれます。そこでの出会いから新たなアイデアが生まれることも。

不動産サービス大手JLLによると、2018-20年にコワーキングスペースの床面積が、東京都の中心5区で、年5割前後拡大するとの見通しです。

●図書館

米ニューヨークの図書館などの先進的な取り組みに触発され、この20年で日本でもビジネス支援機能を備えた図書館が増え、現在ほぼ全ての都道府県立図書館が、加えて市区町村立図書館でも約4割がビジネス支援機能を備え、サードプレイスとしての図書館という役割を担うことに。

もちろんサードプレイスとしての、図書館を預かる司書の育成も行われています。ビジネスの知識を学ぶ「ビジネス・ライブラリアン講習会」など各地で開催され、毎回多数の司書が受講。

まずは中小企業の経営者が、図書館をサードプレイスとして利用することが多くなってきました。そして経営者のみならず、ビジネスパーソンの利用も広がっています。例えば東京都大田区の図書館では、ビジネス書や閲覧用ビジネス雑誌のナンバーが豊富で、希望すれば無料Wifiを使用でき、利用方法に制限はありますが、検索用にPCを借りることができますし、座席指定はあるもののノートPCの持ち込み可。フタが閉まるものであれば、コーヒーなど飲料も持ち込めます。

同武蔵野市の図書館「武蔵野プレイス」では、22時まで使える予約制の自習席を設けています。また同千代田区の図書館では、働くシングルマザーなど向けに託児サービスを開始しました。千代田区民なら子どもを館内の「子ども室」に預けて、資格取得など勉強に没頭できる環境が得られるのです。

本離れが進む中、図書館ではサードプレイスという役割を加えることで、再度活性化しようとしています。

乗り物がサードプレイスに?

人口減少や高齢化に悩む地方。乗り物をサードプレイスに変える試みを行なっている、石川県輪島市の事例を紹介しましょう。

輪島市では2006年2月に3.4万人だった人口が、2018年には2.7万人まで減少。高齢化率は43.1%に達し、高齢化の進行と、人口減少による地域内移動が大きな課題でした。そこで立ち上がったのが同市の商工会議所。同所リードで「WA-MO (Wajina Small Mobility=ワーモ) 」が始まったのです。それは電動カートを3ルートで走らせ、住民と観光客が無料で乗れるというもの。4人乗りと7人乗りの小型車両のため、乗り合わせた人同士は自然に会話するようになり、思わぬ交流が可能になりました。

車両を無償貸与するのはヤマハ発動機。同社では「モビリティ・アズ・ア・サードプレイス(サードプレイスとしての乗り物)」という言葉を掲げ、移動のみを目的とするのではなくて、地域生活の質向上のための手段として位置づけ、住民の交流の場としてのモビリティを提供し、地域社会の中にそれを浸透させようとしています。

WA-MOの利用者数は2015年度の2,170人から、2019年度は7月末時点で4,120人と急増しました。2018年度までは地元利用が約3割、観光客利用約7割でしたが、2019年度には地元利用が7割近くに上昇しており、地域の移動手段としてWA-MOが定着し始めていることが明らかです。

オフィスにもサードプレイスを

オフィスにもサードプレイスを

カフェスペースや、ファミレスブース、トレーニングスペースなど、オフィスにサードプレイスを取り入れた企業が増えています。

サードプレイス導入で、従業員のコミュニケーションの活性化はもちろんのこと、創造性向上や情報共有、生産性向上などの課題解決のきっかけとなりますし、働き方改革の推進にも一役買うことになるのです。

いつも何かに追われ、疲弊している都市生活者が増えている今、サードプレイスが今後企業にとっても、大切なキーワードとなっていくと考えられます。

 

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