ギグワーカーだけが真の働き方改革を起こす

ギグワーカーだけが真の働き方改革を起こす

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働き方改革をよく耳にするようになりました。それと連動して労働環境も変化し始め、シェアリングエコノミーの概念が日本でも理解されつつあります。そして現代の働き方や経済圏を表現するキーワードとして注目されているのがギグエコノミー (Gig Economy) です。

ギグエコノミーとは、空き時間を利用して自由に働ける経済圏のこと。そしてギグエコノミーの働き手がギグワーカー (Gig Worker) です。

この新たな労働形態であるギグワーカーと、それを可能とする経済圏のギグエコノミーが、今後世界にどのような影響を与えるのかを考えたいと思います。

そもそもギグとは

英語でギグを「gig」と書きます。元々は英語のスラングで、アメリカのミュージシャンが単発のライブ演奏を行うことをギグと呼んでいました。そこから単発の仕事のことを指す言葉として、ギグが使われるようになったようです。その後2015年頃からギグエコノミーという用語が使われ始めました。ギグエコノミー = gig(単発の仕事)+ economy(経済)は造語ですが、その意味は単発の仕事で成立する経済を指しています。

ギグワーカーはフリーランスと違うのか

正社員に行わせていた仕事を、フリーランスにアウトソーシングする企業が増えてきました。フリーランスはクライアントに専門技術やスキルを売る成果報酬型の働き方で、企業と雇用契約を結ばずに、単発プロジェクトを請け負う働き方です。

正社員でない働き方の代表はアルバイト。アルバイトにはあまり高いスキルを要求されずに、未経験でも採用されることが多く、一定期間の労働を約束して、企業と雇用契約を結ぶ、時間報酬型の働き方ですね。

ギグワーカーの定義はどちらとも少し異なります。パソコンやモバイル端末などを使い、オンライン上で単発の仕事を受ける働き方で、単発プロジェクトに関わる点はフリーランスと同じですが、請負いでは仕事を受けません。

そしてアルバイトのように、サービス提供者とギグワーカーを繋ぐプラットフォーム事業者と雇用契約を結びますが、決められた時間の労働のために、企業と契約することはありません。

案件まるごと完遂する必要はなくて、部分的作業を担うのです。つまり自分の好きなタイミングで仕事を開始して、好きなタイミングで辞めることができるというところがギグワーカーの働き方です。

本業の合間にちょっと時間が空いたので、その時間だけ自家用車に客を乗せて報酬を獲る、米Uber Technologies (ウーバー)のドライバーもギグワーカーの一例です。

アメリカ事情

アメリカではギグワーカーが社会に浸透しており、ギグワークで生計を立てるのが珍しくありません。CNNビジネスの記事によれば、アメリカでは2017年5月時点において、労働力全体の約34%がギグエコノミーに属しており、2020年までには約43%に増加すると推測されています。

アメリカのギグワーカーの2018年の総収入は、1兆4000億ドル(約152兆円)で、決済業界情報サイトのPYMNTS.comギグエコノミー指標(Gig Economy Index)によると、ギグワーカーの40%が10万ドル(約1,090万円)以上稼いでおり、その平均年収は5万8000ドル(約630万円)前後とのこと。

もっともギグワーカーの40%は専門スキルを持ち、博士号を持つ人も少なくありませんので、全てのギグワーカーが高収入であるのではありません。ちなみに現在アメリカのギグエコノミーを支えているのは、東南アジアをはじめとした新興国のエンジニアのようです。

ギグワーカーが救世主に?

ギグワーカーが救世主に?

ギグワーカーとして働く理由はいろいろあるでしょうが、次の二つが代表的な理由でしょう。

  1. 短時間だけ働きたい
  2. 給料に加え、ちょっとだけ収入をアップさせたい

子育て中の主婦、家族の介護をしている方、学生など長時間労働が難しい方が、隙間時間で仕事をしてちょっとお小遣いを稼ぐなら、ギクワーカーの働き方は魅力的です。正社員として通勤して、長時間会社で仕事をすることは無理でも、自宅でちょっとした合間に、あるいはフルタイムはさすがに難しいけれど、午前中の数時間だけならなど、各人の状況でギグワーカーの形は様々。

働き方改革を推進する日本政府が、ギグワーカーを積極的に支援すれば、次の効果も期待できます:

  • 労働人口アップ
  • 労働生産性アップ、経済効果
  • 育児との両立可能、出生率アップ
  • 正社員の負担軽減

ちょっとした仕事をギグワーカーに依頼してゆとり時間を作ることができれば、育児との両立がしやすい環境が整い、キャリアアップとの両立に悩む若い世代も、出産、育児を安心して行えますし、男性も育児に協力しやすくなりますね。

日本でギグワーカーが増えるか

しかし日本でギグワーカーが増えるのは、まだ先だと考えられます。ギグワーカーとして自由に働くことを夢見ていても、日本人は正規雇用(正社員)志向が強く、しかも企業内でしか成立しないスキルが多いのです。副業ちっくにギグワーカーで働く分には良いでしょうが、フルタイムでのギグワーカーになるだけのスキルがない人も多いのも実情なのです。

ギグエコノミーがもたらすもの

ギグエコノミーが広がることがもたらすメリットは、どのようなことがあるでしょうか。

1.柔軟な働き方が選択可能に

勤務時間や勤務方法、仕事量、働く場所を柔軟に選ぶことができるので、ワークライフバランスを自らコントロールできるようになります。

2.埋もれていた才能やスキルの有効活用

スキルや才能があっても、それを活かせる場所に自分がいなければ意味がありませんでしたが、インターネットを通して仕事の依頼・受注ができるようになったので、場所は自分で作れるように。

3.固定費を抑えることができる

特定の案件が終われば固定費を払う必要がないため、単価は多少高くても、固定のコストを払わなくていいという点では、案件単位の労働者を求める企業は多くなるでしょう。

4.優秀な人材を多数の企業が共有できる

ギグエコノミーには優秀な人材を多数の企業で共有することで、可能性を広げていこうという考えがあります。つまり優秀なギグワーカーがより幅広く活躍することで、社会には有益なコンテンツが増えていくのです。

いいことばかりではない

ではデメリットはどんなことがあるでしょう。

1.不安定な雇用が増加する

ギグワーカーの雇用形態は不安定であり、仕事を失うリスクと共に生活しなければなりません。また社会保険などの福利厚生が受けられない場合も多く、最低賃金の保証もありません。

2.格差社会が深刻化する

優秀な人はギグワーカーとして高単価の案件が受注できるでしょうが、能力の低い人は低賃金の仕事しか得ることができなくなり、能力の格差が収入の格差に直結します。またギグエコノミーはインターネットを活用することで成立しているため、デジタル機器やテクノロジーへのリテラシーがない人は、ギグワーカーとして働くことができないのです。

3.セキュリティや信頼性の担保が難しい

インターネットを通して遠隔で仕事の受発注を行うことが多いですが、情報漏洩などのリスクと背中合せです。正社員には会社がセキュリティに関する教育をすることが多いので、必要知識の会得はたやすいですが、ギグワーカーは身銭を切って知識を得るしかありません。

4.終身雇用が減少する

ギグエコノミーでは一部の基幹業務のみを正社員に任せ、残りの業務をギグワーカーに回すこととが多くなりますが、その結果正社員の終身雇用が、だんだんと減っていくことになってしまいます。

ギグワーカーを守れ

高いスキルを持つ人が、それをギグワーカーとして活用できれば儲かることは間違いないでしょうが、そうでない場合はお小遣い程度の収入を得ることがほとんど。ギグワーカーには社会保障がないので、働かない限り収入はゼロとなるので、十分な自衛が必要になります。

不安定な状況を脱しようと、ウーバーテクノロジーズの宅配代行サービス「ウーバーイーツ」の日本のある配達員が、労働組合結成に動き出しました。配達中に転んで腕を骨折し、2ヶ月間働けず無収入になったことがきっかけでした。

ちなみにウーバーの日本法人では、約1万5千人いる配達員の事故に関し、相手の損害は保険で補償しますが、配達員本人への損害の補償はありません。同労働組合準備委員会では、事故時の配達員への保障制度づくりなど、企業は利益に見合う負担をすべきといった要求案をまとめています。

日本政府も動き始めています。個人事業主には最低賃金、有給休暇、労災保険などは適用されないのですが、厚労省の検討会で議論が始まり、中間整理では雇用に近い形態で働く人のために、契約ルールの整備や報酬の適正化などを検討する方向が示されています。ただルール整備の時期についてゴールは定めておらず、海外より遅れていることは否めません。

アメリカでは法案ができるようだ

米カリフォルニア州議会上院では、2019年9月にギグエコノミー企業による労働者の扱いに変更を迫る法案のAssembly Bill5(AB5)を可決しました。

AB5は、企業が労働者を独立した請負業者として扱うことを難しくするもので、カリフォルニア州知事が承認した場合、ウーバーやLyft (リフト)など、多くのドライバーを請負業者として抱える企業に大きな影響を与えることが考えられます。すでに州知事は支持する姿勢を示しており署名する可能性が高く、AB5が成立した場合には、2020年1月から施行される見通しです。

AB5では企業が労働者を請負業者に分類するには、一定の条件をクリアする必要があります。たとえば、労働者が企業の指揮命令から自由であること。

条件に該当しない場合、企業は労働者を従業員として雇用する義務が生じ、企業側は最低賃金のほか、有給休暇、超過時間手当、労災保険などを保障する必要が生じます。また労働者が団結する権利を保障も必須です。

AB5はギグエコノミー企業だけでなく、ビルの清掃員やトラック運転手、建設労働者、ネイリスト、ソフトウェアプログラマーなど、幅広い職業に影響を与えると見られています。AB5の施行で100万人以上の労働者の分類が変更される可能性がありますし、アメリカ他州でカリフォルニア州に追随する動きが出てくると予想されます。

安心してギグワーカーが働ける世の中とは

労働者は今後10-20年にかけて、ロボットやAIに仕事を奪われ、失職するリスクと背中合わせです。マッキンゼー・アンド・カンパニーのレポートでは、2030年までに4~8億人分の仕事が自動化されることを示唆しています。

ギグワーカーに限りませんが、よりクリエイティブ性が求められ、高スキルな仕事をこなせる人材だけが生き残る時代に差し掛かっているといえるのでしょう。

しかし今後日本は致命的な少子高齢化となるので、労働力確保の意味でも、一層のギグワーカー支援が考えられます。しかしギグワーカーが安心して働けるにはまだ遠いので、日本政府の迅速なテコ入れが必要でしょう。

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