テレワークは非常時を生き抜く武器になるか。企業の心配と従業員が気をつけるポイント

テレワークは非常時を生き抜く武器になるか。企業の心配と従業員が気をつけるポイント

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2020年4月、コロナウィルスによる緊急事態宣言がだされたことで多くのビジネスパーソンが自宅でのテレワークが実行される事態となりました。対人コミュニケーションが不足するなどの懸念点はあるものの、強制的にこの業務スタイルを課せられたことでその合理性やその難しさなどがそこそこで語られるようになりました。

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アメリカでは以前からテレワーク(リモートワーク=remote work)での働き方がオファーされており、実に85%以上の企業でテレワークを導入しています。毎日出勤しなくてもよいのであれば、遠隔地や海外の人も積極的に応募してくるので、企業では優秀な人材と出会える確率が高くなるのです。

例えば本社はアメリカでありながら(当然社長/CEOはアメリカ在住)、営業トップはドイツ、マーケティングトップはフランスで、それぞれの部下も全世界に散らばっているので、リアルでの顔合わせは四半期に一回、週次会議はSkypeやZoomなど利用、そしてSlackやTeamsを駆使してコミュニケーションを取ることで業務は進むのです。PCとネットネットワークがあれば、大概の仕事はどこでもできるので、特にグローバルなスタートアップにとっては、テレワークがデファクトスタンダードな働き方といえるかも。

2021年にTOKYO 2020 (東京オリンピック&パラリンピック)の開催が決まり、期間中には、オリンピック780万人、パラリンピック230万人の観戦客が東京に集まると予想されます。東京都の人口が約1,400万人で、通常東京近郊の交通機関を利用して移動しているのが1日で約800万人なので、比率で言えば大した増加に見えませんが、会場の最寄り駅やターミナル駅、路線そして朝夕の通勤時間帯では、大混乱を巻き起こす恐れがあるのです。

2012年のロンドンオリンピックでは、イギリス政府の呼びかけに対応する形で、ロンドン市内の約8割の企業がテレワークを実施し、交通混乱を回避できたといいます。日本政府でも2017年から交通混乱を避けるためのリハーサルとして、オリンピック開幕式の7月24日を「テレワーク・デイ」に制定し企業の参加を呼び掛けていますが、2019年時点で大会期間中にテレワークの実施を予定していた企業は少数でした。出勤することが一つの仕事になっている意識が根強い日本企業において、新たな働き方としてのテレワークの普及がまだ発展途上のまま。

ところが2020年2月には、中国で最初に確認された新型コロナウィルスの感染者が、日本でも増えてきたために、迅速な対応が政府はもちろん企業にも求められたのです。感染者が出た企業をはじめとし、多くの大企業で突如テレワーク導入の動きが起きました。政府から全国の小中高に休校要請が出されたことで、子供の世話のために有給休暇を取らざるを得ない親が増えており、仕事を止めないためにも一時的であれ、テレワーク導入を断行する中小企業も。

突然の事態に戸惑う企業の経営者や担当者、そして対象になった従業員の方でも初のテレワークに不安に感じていると思いますが、ポジティブに考えてみると、今回の新型コロナウィルス対策が、テレワークを日本に浸透させるきっかけになるかもしれません。

今回はテレワークについて、深堀したいと思います。

テレワークとは

テレワークとは

テレワークはIT技術を活用した、場所や時間にとらわれない働き方です。働く場所によって次の3つに分けられます。

<テレワークの働き方>

  • 在宅勤務:自宅から会社のネットワークに入って働く
  • モバイルワーク:顧客先や移動中にPCやインターネット端末を使って働く
  • サードプレイスやサテライトオフィス:社外のサテライトオフィス、レンタルオフィスあるいはカフェなどから会社のネットワークに入って働く

テレワークのメリット

総務省の平成30年度の白書の中で言及されている2017年の調査によれば、テレワークの導入を計画したうちの50.1%の企業では、テレワークの導入目的に労働生産性の向上を挙げ、そのうち82.1%の企業でその効果が得られたと回答しました。

従業員側が挙げたテレワーク導入のメリットとしては、通勤時間の削減(71.5%)やプライベート時間の増加(68.1%)、また性別年代別に見ると20代の女性がメリットとして回答したのは育児・子育てと仕事の両立 (52.5%) でした。子育て世代の女性が社会的に活躍するためにも、テレワークの導入が求められることが明らかであるといえます。

テレワークが適している人

以下は一般社団法人日本テレワーク協会のガイドからの抜粋です:

  • 妊娠、育児、介護などの理由、身体障害や怪我などで、恒常的または一時的に通勤が困難な人(ほぼ毎日在宅勤務)
  • 管理部門、研究開発部門など(部分在宅主体)
  • 顧客対応業務(営業、SE、サポートなど)(モバイルワーク主体で、部分在宅も)

言葉を変えるとテレワークに適している職種や人を限定することを推奨しているかのようですが、欧米ではほとんどの職種をテレワークで行うのが当たり前です。日本は「もっと柔軟に実施しよう」レベルですね。

非常時だからこそ、テレワーク導入に挑む

テレワークとは、単に制度の導入すれば成功するものではありません。テレワークでも業務が円滑に回るように、業務の見直しや従業員の意識改革、もちろんテレワークに耐えられるシステムの導入など、本来は時間と労力をかけてしっかり取り組む必要があるのです。ただ大きな資金が必要になることはありませんから、会社規模に左右されずどちらの企業でも十分に対応できるはず。

そして「従業員の感染リスクを最小限に抑えるための対応」という大命題が今企業に課せられているので、テレワークを導入し、従業員を一箇所に集めない措置をすべきなのです。

企業の心配その1:情報漏洩

企業にとってセキュリティーの確保は重要課題。重要な企業情報が外部に漏れることがあれば、顧客にも迷惑をかけますし、企業のブランドに傷もつきます。

テレワークの導入で致命的な情報漏洩が起きた、という事例は今までもあまり聞いたことがありません。情報漏洩の多くは社内で発生し、会社に対して悪意のある従業員の手によるものがほとんどです。テレワーク時に悪意を持って情報を漏らしたとすれば、誰が犯人がすぐわかってしまいます。万一漏洩があったとしても、経営者は想定内のことと割り切るべきです。それでも心配であるなら、セキュリティツールの導入で解決するはず。

企業の心配その2:従業員の評価

テレワークしている部下の評価はどうしたらいいかと、心配する上長が多いと聞きます。つまり部下の仕事ぶりが目視できないと、正しく評価できないと考えているわけでしょうが、ちょっと待ってください。そもそも評価とは成果に紐づくものです。

もっとも部下の仕事ぶりを見て評価してきた管理職に、明日から成果のみで判断せよといっても難しいでしょう。業務時間中のアプリの利用時間をグラフ化したり、作業画面を保存するなどして、業務の見える化ができるツールを活用するのはどうですか。評価方法について会社として見直すのも一考ですね。

企業の心配その3:従業員の管理

すでにテレワークを導入している企業でも、テレワークだとさぼったり、逆に過剰労働になる従業員が出ることを心配し、適正な時間で自律的に仕事ができると上長が判断した人だけが、テレワークできるルールを置いている場合が少なくありません。

成果ありきで、あとは厳密に管理しないくらいの柔軟性を持たなければ、特に非常時に対応することができません。この機会に裁量労働制の範囲を広げるなども、検討するのはどうでしょうか。

従業員の心配その1: 膨大な紙のデータ

初めてテレワークをする従業員も不安でいっぱいです。まずは業務で必要な紙のデータを自宅でどう利用するかではないでしょうか。多くの企業では大量の資料が、紙媒体で保管されており、中には手書きの伝票も。従業員各自が仕事に必要な紙の原本をそのまま持ち帰れないから、テレワークは無理と判断するのは早すぎです。

代替案として考えられるのは、紙の資料をすべてデジタル化するということですが、全てを処理するには膨大な時間がかかるので非常時では非現実的。ここは発想を転換させましょう。紙の資料を原本としていても、元々の資料はPCのツールで作っていることが多いはず。そうであれば自分のPCに元データがあるのですから、それを一時的にでも原本とみなせばよいのではないですか。手書きの伝票などは、スマホで写真に撮ればことが足りますよ。

従業員の心配その2:コミュニケーション

オフイスにいないと、上長や同僚とコミュニケーションがうまくとれないので、取り残されているようで不安。それが自分の評価にも影響するのなら、何がなんでもオフィスに行きたいという気持ちになりますね。

Web会議システムが完備されていても、相手がシステムの前にいなければ、思い立った時に即会話は難しいのは事実です。そこで活用すべきはSlackやTeamsのビジネスチャットアプリです。自分が今対応可能かどうかのフラグも立てられますし、音声なしでも相当のコミュニケーションは図れます。

テレワークのススメ

テレワークのススメ

繰り返しになりますが、大切なことは自分や自社で、テレワーク導入は無理と決めつけないことです。

安倍総理大臣が、2020年2月の記者会見で次のように語っていましたね。「この機に、感染拡大防止の観点からも、テレワークなど、IT技術を活用しながら、社会のあらゆる分野で遠隔対応を進め、未来を先取りする変革を一気に進めます」。これは正しい見解だと思いますが、いかがでしょうか。

新型コロナウィルスが蔓延しているのは不幸ですが、通常業務がこなせるテレワークができるように、大きく世の中が進化できる機会が到来しているともいえます。テレワークが人材確保の点でもポジティブに働くことはアメリカの例からも明らかです。

資金面で不安な場合は、厚生労働省の「新型コロナウィルス感染症対策(テレワークコース)」や、従来からある「時間外労働等改善助成金(テレワークコース)」、あるいは東京都しごと財団の「テレワーク活用・働く女性応援助成金」など支援策もありますので活用するのもよいでしょう。

従業員の方々に思い違いしてほしくないのは、テレワークしていたら、会社に行かなくてよいということではありませんよ。離れて仕事をするからこそ、上長や同僚に会うことの大切さを、テレワークを通じて知ってほしいのです。これが我々が今後目指すべきテレワークのあり方でしょう。

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