日本での「無人コンビニ」。現金主義の改革で普及するかも

日本での「無人コンビニ」。現金主義の改革で普及するかも

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日本のコンビニにはリアル店員がレジにいて、商品を持っていくと商品に添付したバーコードを店員がスキャナで読み取って精算しています。一方AIのテクノロジーを用いた無人コンビニでは、店員がいなくても精算できる仕組みを採用し実現しているのです。

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無人化コンビニが世界的に話題になっています。日本でも2018年にJR東日本がJR赤羽駅で実証実験を行いましたが、コンビニ各社が積極的に無人コンビニを展開しようと動きは未だにありません。

少子高齢化で働き手が急激に減少している日本だからこそ、無人コンビ二の実用化が求められているように考えらるのですが、果たしてコンビニからリアル店員が消える日が日本に来るのでしょうか。

無人コンビニの先陣は、アメリカと中国

無人コンビニの先陣は、アメリカと中国

2018年1月にオープンしたAmazonの無人コンビニであるAmazon Goは、その一年後の2019年1月後半の段階で1店舗あたり売上が$1.5M(約1.5億円)、これはアメリカの一般的なコンビニ売上の約1.5倍でした。

Amazonは2021年までには3000店舗の出店を計画しているようですが、1店舗あたり$1.5Mの年間売上だとすると、3000店舗でのAmazon Goは年間$4.5B(約4500億円)の売上を生むビジネスになります。もっともAmazon全体の売上からすれば驚くほどの規模ではありませんが、アメリカにはコンビニが約15.5万店舗あるとされてますから、のびしろが十分あるのです。

中国もアメリカに負けていません。中国のEC第2位の京東(ジンドン:JD.com)が展開する無人コンビニ無人超市は、Amazon Goより早い2017年10月に北京の京東本社内に1号店が開業し、その後北京市内、天津や大連、西安、そしてインドネシアの首都ジャカルタに店舗を開きました。現在国内外に約20店舗を展開しています。

無人超市では専用アプリをあらかじめスマホにダウンロードし、自分の顔写真を登録。入店する時にアプリに表示されたQRコードをゲートのタッチポイントにかざし、あとは好きな商品を手に取り、出口のゲートを通過して退店するだけで決済が完了します。RFIDのテクノロジーが無人超市のシステムを支えていますが、運用コストを考えるとRFIDには課題があるため京東ではRFIDを使わず、顧客の全身を認証する新しいシステムの実験を、2019年4月から開始しました。

画像認識のテクノロジーを進化させ、RFIDに依存しないローコストモデルの無人コンビニを実現することで、京東は無人超市の多店舗展開にはずみをつけることを目論んでいます。

無人コンビニのメリット、デメリット

無人コンビニのメリット、デメリット

メリット

無人コンビニが広まることで、次のメリットが享受されると考えられます。

人件費・コスト削減

少子高齢化の現代では、どの業界でも人手不足です。そのためアルバイトの時給をアップしたり条件を向上せざるを得ず、企業の台所事情を圧迫しています。無人コンビニが普及したら人手不足の穴埋めができ、人件費が削減できます。また顧客には人件費の削減による商品の値下げも期待できるかもしれません。

少ない働き手で同レベル(同レベル以上)のサービスを提供

小売業での働き手不足の状況は深刻で、働き手がアサインできないために廃業を余儀なくされている店もあります。無人コンビニならそのテクノロジーを駆使し、最低限の人手で運営ができるのです。

スピーディーな会計

顧客にはこれが最も嬉しい点でしょう。 無人コンビニならレジ待ちはないし、現金決済ではないので、会計スピードはさらにアップしますし、また小銭を持ち歩く必要も無くなります。

デメリット

しかしいいことばかりではありません。デメリットも考えられます。

結局ゼロ店員にはならない

日本のコンビニのサービスメニューは豊富なためにリアル店員が必要で、テクノロジーだけでは完結できないものが多くあります。商品の補充・陳列・管理はもちろんのこと、公共料金の支払い、チケットの引換などです。人手を最小限に減らすことができても、ゼロ店員で店を回すのは今の所現実的ではありません。

初期コストがかかる

無人コンビニの実現には、店の全商品にICタグを埋め込む必要があります。ICタグ1枚あたり10-20円ほどのコストがかかるといわれていますから、かなりのコストが発生するわけです。

またICタグの読み取りに対応したレジ端末の導入も必要になるので、テクノロジー利用のための初期コストの高さがデメリットになります。さらにはおでんや肉まんなどの、コンビニ定番商品にはICタグがつけられないものが多く、それらの例外的対応も課題です。

システムは絶対ではない

システムには100%セキュアである保証がありません。最新のテクノロジーを使っていても、セキュリティの脆弱性やバグのため、支払額の計算が正しくできない時がある、身に覚えのない支払いが確認されるなどや、あるいは無人コンビニでは実は万引きが多いなどというトラブルなどが報告されています。

スマホがないと買い物ができない

日本ではこれが無人コンビニにおける最大のデメリットかもしれません。無人コンビニの使用にはスマホとアプリの保有が絶対条件です。しかしいまだガラケーの人も多い現実。その人たちにスマホ決済を求めるのは難しいのです。

日本のコンビニ事情の特徴として「個食」の高齢者の利用が多いことも挙げられますが、基本的に彼らは現金払いオンリーで、スマホどころか携帯電話を持たない人も少なくありません。クレジットカードの利用も躊躇する人が多い年代が、QRコードなどのテクノロジーを理解するのが難しいでしょうし、コンビニとしても優良顧客の高齢者をみすみす失うわけにもいきません。

日本でも取り組みが始まっている

日本でも取り組みが始まっている

オフィスに設置する無人コンビニ600を提供する600は、2019年1月に朝日メディアラボベンチャーズ、SMBCベンチャーキャピタル、アプリコット・ベンチャーズ、AGキャピタルの他複数の個人投資家などから1億円を調達したと発表しました。

2018年6月にサービスを開始した600はすでに50箇所に無人コンビニを設置済みで、LINEやKDDIなどの大手企業からスタートアップまで幅広い企業に利用されており、累計商品販売数は2万個に達しています。

600は今回あらたに調達した1億円で、無人コンビニの製造体制や物流網の強化を行う予定です。また同社は2019年中に600の設置数を現在の50箇所から500箇所にまで拡大し、累計販売個数も現在の10倍である20万個にすることが目標としています。

さらに2024年までに店舗を1万箇所に増やし、平均日販3万円を達成することで、年間1000億円規模の取扱高の達成を計画中です。

コンビニ大手は及び腰?

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セブン-イレブン・ジャパンとNECは2018年12月にNECのグループ会社が入居している東京都港区にある三田国際ビル内に、NEC社員の利用だけに限定されたセブン-イレブン初の省人型店舗「セブン-イレブン三田国際ビル20F店」をオープンしました。

これはセブン-イレブンが「省人化」と「マイクロマーケット」に関する実証実験を行う店舗であり、NECが国内初導入の顔認証による決済、ロボットによる接客支援、「ターゲット広告サイネージ」といったAIやIoTのテクノロジーをこの店舗に導入していることでも話題になっています。

コンビニにとって顧客とのコミュニケーションや変化対応が一番大事な部分で、これがなければ「近くて便利」や「ほっとする店舗作り」が不可能であると断言するセブンイレブンでは、未だ無人コンビニの設置を正式には行っていません。省人化が優先順位が高いとみなしているようですので、無人コンビニの開発を継続しつつも、米中や日本の無人コンビニのスタートアップとは違う形での挑戦をしていく予定のようです。

日本は現金主義

日本は現金主義

EUでは高額紙幣の500ユーロの廃止が決まり、2019年1月から回収が始まっています。欧州中央銀行(ECB)が500ユーロ紙幣の市場流通の廃止を決めた一番の理由は、犯罪の対価として50ユーロー紙幣が集中的に使用されているためとしていますが、紙幣を使う人が年々減少し、特に高額紙幣を使いたがらない人が増えたという理由も考えられます。

日本のスタンダードはいまだに「超」がつく現金主義です。タンス預金が好きな国民性ですから、キャッシュレスより現金が一番と考える人が多くても不思議ではありません。

2018年4月に経済産業省が発表したキャッシュビジョンによれば、キャッシュレス比率はそれぞれ

  • 日本の18.4%
  • 韓国の89.1%
  • 中国の60%
  • イギリスの54.9%
  • アメリカの45.0%

と比較してもかなり低い結果でした。

日本にクレジットカードが紹介された当初、その先進的なテクノロジーは消費者に受け入れられず、クレジットカードが普及するはずはないとまで言う人もいましたが、今では日本でのクレジットカードの保有率は高いですし(実際に使用していない人も多いですが)、スイカの登場で電子マネーはようやく普及しつつありますので、現金主義に固執しない人も微々ながら確実に増えているようです。

とはいえPay Payやオリガミなどのモバイル決済サービス企業がさかんにキャンペーンをしていても、そのテクノロジーに呼応できて、恩恵にあずかっているのは若者が中心で、日本全体でみたらまだマイノリティのままです。

あり、なしどっち?

あり、なしどっち?

この先日本の無人コンビニの未来はあるのでしょうか。無人コンビニが普及するために、まずはモバイル決済が市民権を得る必要がありますし、コンビニ会社・店舗ではそのテクノロジーを稼働させるシステム導入の新規投資が必要なため、課題は多いと考えられます。

しかし慢性的な人手不足で悩む日本の小売業ですから、無人コンビニの必要性が徐々に高まるのではないでしょうか。無人コンビニが普及することは、ある意味働き方改革の一環とみなすこともできますので、国も積極的に支援するかもしれませんね。

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