ウルサス(ULSSAS)せずにSNSマーケティングとか言ってない?
その昔(10年ほど前をそう呼ぶのであれば)、商品やサービスを購入する前には、まずはテレビCMや検索エンジンで情報収集をするものでしたが、今はSNSの口コミで高評価の商品を選ぶことが増えています。実際にはリアル店舗で購入したとしても、口コミをチェックしたことがきっかけで、お店に行くことになることが少なくありません。
GoogleやFacebookといったデジタルマーケティング時代を代表するプラットフォーム上で、多くの企業が広告やコンテンツ配信で競い合っています。これは明らかに飽和状態。
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2020年3月31日から4月2日にかけ、Googleで大きな順位変動が起きました。Googleのアルゴリズムの細かな調整が、継続して行われていることに起因したのです。単にタイトルだけを定期的に変更したり、多少文章が変でもキーワードをできるだけ詰め込むSEO施策では、もう順位が上がらず、ユーザーが求める情報の量、簡便性、正確性、ユニークさなど、ユーザーの検索意図がGoogleで理解されるようになり、それにあった答えがあるサイトが上位にくるようになったというわけ。つまり従来型のSEO施策しかできない企業はネット上で生き残れないといえるでしょう。
短期的に効果を上げる方法として既存顧客などの顕在層へのアプローチがありますが、顕在層はやがて枯渇してしまうもの。既存手法だけでは成果を出し続けることが難しい状況の中で、SNS活用を再検討する企業が増えています。その中でもSNSにより新たに出現した購買プロセスであるウルサスに注目が集まっているのです。
今回はウルサスについて、確認していきたいと思います。
ウルサス(ULSSAS)とは
ウルサスとはSNS時代の行動購買プロセスのことです。現代のユーザー行動を活かし、費用対効果の優れたマーケティングを行うためのものです。
ウルサス(ULSSAS)とは、以下の単語の頭文字を並べたもの:
- U:UGC(ネット上の口コミ)
- L:Like(それを見たユーザーがいいね)
- S:Search1(TwitterやInstagramなどで検索)
- S:Search2(GoogleやYahooで検索)
- A:Action(購買)
- S:Spread (購買や利用した事実を拡散)
「この商品は使える」「このサービスはおトク」といったネット上の口コミを見て、フォロワーや、商品やサービスに気になった人が「いいね」をしてSNSを検索し、Googleなどの検索エンジンでの検索を経て購買。購買後の感想などを口コミし、それがまた別のユーザによって拡散されるというユーザー配信のサイクルが、ガンガン回りだすのがウルサスです。
企業のSNSはうまく行っているか
SNSマーケティングで最も重要なのは、企業の発信した投稿に対し、興味を持ったり、コメントするユーザーが何人いたかということです。リアクションをしてくれるフォロワーをできる限り多く獲得し、彼らのリアクションにより情報が拡散され、それが企業に対する興味度アップにつなげることが大命題のはずなのですが、実際のところSNSアカウントを使って情報発信ができたらゴールと思い違いしたり、フォロワー数の増減ばかり気にするケースが見受けられます。
つまりSNSマーケティングに取り組んでいるのだけど、うまくいっていない企業が多いのです。
取り組む目的に立ち返ること
自社でSNSマーケティングに取り組む目的はなんでしょうか。それは売上をあげることに他なりません。つまりSNSマーケティングの目標として掲げたフォロワー数や、リツイート(RT) 数を達成しても、SNSのゴールといえないのです。
SNSマーケティングでは、売上に繋げるための戦略を立て、どのような施策を実行すればよいのかを絶えず意識しなければなりません。
アーンドメディアの観点でのSNSマーケティングを
ユーザーとのコミュニケーション手段として、トリプルメディアというフレームワークがあり、オウンドメディア、ペイドメディア、アーンドメディアという3つに分類することができます。
オウンドメディア (Owned Media)
企業が管理する自社メディア。自社/ブランドのウェブサイトやECサイト、ブログ、パンフレットが該当し、企業のSNSアカウントも含まれます。
ペイドメディア(Paid media)
企業が費用を支払って、獲得した枠に広告掲載を行うメディア。SNS広告(Facebook広告など)、検索広告(Google AdWordsなど)交通広告、リスティング広告、ディスプレイ・バナー広告が含まれます。
アーンドメディア (Earned Media)
ブログや口コミサイト、掲示板、SNSなど、顧客など第三者が発信者となるブログや口コミサイト、掲示板、SNSなど。一般ユーザーが無料で自社の商品やサービスをクチコミしてくれて、拡散もしてくれる点が特徴です。また読み手側のユーザーにとっては、自分と同じ立ち位置の人による発信のため、評判や信頼を得やすく、企業による情報統制ができない点が、ほかのメディアと大きく異なります。
アーンドメディアに含まれるSNSは、一般ユーザーの間で、コミュニケーションツールとしての意味合いが大変強いのですが、この特性を正しく理解していない企業では、自社のSNSアカウントを、オウンドメディアのように使ってしまいがち。それもSNSを使って自社の認知を獲得していく手段といえないことはありませんが、アーンドメディアとしての観点で、SNSマーケティングを行う方がより効果的であることは間違いありません。
UGCが注目される理由
ウルサスを行う上で、重要になるのがUGCです。 優れた商品やサービスがあればUGCが生まれ、UGCにユーザーの行動が徐々に連鎖していくのです。
UGCとはUser Generated Contentsの略称で、直訳するとユーザー生成コンテンツ。例えば、ユーザーが利用したときのレビュー投稿やコメント、あるいはシェア記事のこともあります。つまりネット上の口コミのことです。
UGCにはTwitterやInstagram上の口コミに加え、グルメや映画などのレビューサイトに載っている書き込みや、転職支援サイト上の従業員のコメントも含まれています。
企業が作成したオウンドメディアやペイドメディアではなく、ユーザーがユーザーに向けて発信するアーンドメディアであるUGCは、SNSの知名度が上がるとともに、一般ユーザーの購買プロセスに多大な影響を与えるコンテンツとみなされるようになりました。
GoogleやYahoo!で検索する前に、多くの人がInstagramやTwitterで検索をするそのわけは、企業が作成した文章やコピーより、一般ユーザーの口コミの方がより信頼できるから。
このような背景のなか、一般ユーザーによるUGCには共感が生まれやすく、拡散しやすいため、有効なプロモーションの一つとして企業に活用されるようになりました。
UGCとCGMの違い
UGCと類似する用語に、CGM(Consumer Generated Media)があるのはご存知でしょうか。こちらは消費者生成メディアと訳されるもので、インターネット上にユーザーが投稿したコンテンツで、内容が生成されるメディアのこと。プロの制作者がコンテンツを作るメディアと対比して使われます。
CGMを成功させるには、Webサイトの構築やガイドラインなどの環境整備のために労力を費やすことが、企業には必要となります。
CGMの中身がUGCであるといえばわかリやすいでしょうか。つまりCGMは情報のやり取りが行われる場所で、UGCはその情報というわけです。
CGMの代表的な成功例は、クックパッド、食べログ、Yahoo知恵袋などが挙げられます。
UGC活用のメリット
UGC活用のメリットは、次の点が挙げられます:
- 読み手側のユーザーが、親近感を持ちやすい
- UGCに共感したユーザーが、商品やサービスについて迅速に拡散してくれる
- 拡散が広がれば広がるほど、UGCにリアリティが生まれる
- 一般ユーザーからの、客観的な評価が得られやすい
デメリットをメリットに変えるポイント
一方、UGCを活用する上での、デメリットも否めません:
- 口コミにはネガティブなコンテンツも含まれる
- UGCの正確性や質を、企業がコントロールすることは困難
- 著作権や肖像権などの権利侵害が起こることも
デメリットを回避するポイントを次であげてみたいと思います。
情報の正確性
UGCは一般ユーザーが作成するコンテンツ。発信される前に、それが本当に正しい情報かどうか、誰もチェックをしていませんので、ユーザーの勘違いで間違った情報が拡散されてしまう可能性があります。もちろん悪意でフェイクニュース的な口コミが流れてしまうことも。
間違った情報がウェブ上に掲載されたままでは、業務に支障が出る可能性がありますので、UGCはこまめにチェックし、万一間違いを発見した場合の対応ルールを、定めておく必要が企業には課されますね。
質の管理
ユーザーが作成するUGCは、作成者のセンスや能力に左右されるため、コンテンツのレベルが様々になることが多い。すべてのコンテンツの質をある程度の水準にするためには、作成に際して、ユーザーに丸投げするのではなく、ユーザーが自らコンテンツを作成したくなるような工夫をすることが企業には必要です。
例えば企業からユーザーへ、ハッシュタグやテーマを指定したキャンペーンを定期的に開催するのも、UGCの質の水準を保つための管理方法と言えます。ユーザーが新規ユーザーの役に立つ質のよいUGCを、どうすれば作成してくれるかを、企業は常に意識することが大切です。
権利侵害の可能性回避
ユーザーが作成するコンテンツでは、作成者本人が意図せずに権利を侵害している可能性があります。例えばユーザーがSNSで投稿した店内写真を企業側で拡散したら、写真の中に別の人が映っていて、後日肖像権侵害のクレームが発生する場合などです。
肖像権や著作権など、ユーザーが見落としがちな権利侵害には、企業側が十分に注意する必要があります。
ウルサスはSNSマーケティングの第一歩目。
よいUGCが継続的に公開され、そのフォロアーが増えていけば、ウルサスのサイクルは成立します。最後にウルサス活用のメリット・デメリットについて、確認したいと思います。
ウルサスを行うメリット
広告費の削減
ユーザーが自身の手でUGCを拡散してくれるため、企業が広告費を費やす必要がありません。多額の広告費を掛けていた企業ででウルサスを行うことで、コストの大幅カットが見込めるのです。
顧客満足度の向上と、商品力の強化に繋げられる(商品にコストを割くことが可能になる)
広告費を削減できれば、浮いたお金を商品・サービスの開発費に充てられることが考えられます。より良い商品・サービスが提供でき、顧客満足度も高くなれば、優れたUGCがどんどん生まれるので、活用の幅も広がり、多くの拡散が行われるようになります。
ユーザーが好意的に商品・サービスを手にして拡散してくれる、理想の状況を生み出すことができるのです。
デメリット
そもそもUGCがない場合や少ない場合には、ウルサスは成立しませんので、有償のキャンペーンを講じるなどして、ユーザーに働きかけなければいけません。それには相応の労力とコストがかかることは覚悟してください。
またUGCが評価が低い口コミである場合には、企業にとって、マイナスイメージしかもたらしません。だからといって企業がUGCを捏造するのは絶対にダメです。ユーザーが継続してよいUGCを寄せてくれるよう、継続した品質向上、顧客満足度向上を目指す必要がありますね。
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