マーケターは、パーソナライゼーションありきでしか通用しなくなった

マーケターは、パーソナライゼーションありきでしか通用しなくなった

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ユーザーにとって有益で有意義、ユーザーの好みにあったカスタマーエクスペリエンス(Customer Experience=CX) を提供することは、業種を問わず全ての企業やマーケターにとっての最重要タスク。ユーザー一人一人に向けたサービスを提供するパーソナライゼーション(Personalization)がCXを最大化するためのキーワードであり、今や現代社会のマーケティング戦略には欠かせないものになりつつあります。しかも対面のプロモーションを行うことがままならない昨今のコロナ禍においても、パーソナライゼーションを活用することで、市場で優位に立つことも。

今回はパーソナライゼーションについて深堀したいと思います。

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パーソナライゼーションとは

パーソナライゼーションとは、あらかじめユーザーの購入履歴や閲覧履歴などを分析し、ユーザーの好みに合わせて、自社のサービスを最適化していくマーケティング手法のことです。パーソナライズドマーケティングと呼ばれることもあります。

パーソナライゼーションの最終的なゴールとは、ユーザー自らが労力をかけることなしに、好みやニーズに合わせたコンテンツや機能を企業が継続的に提供し、ユーザーの購入意欲を刺激することだと考えがちですが、それだけではありません。情報提供元の企業への信頼感がユーザーに生まれ、ひいてはユーザーと企業が長期的な関係を構築することこそが最大のゴールといえます。

カスタマイズとの違い

パーソナライゼーションと似た言葉として、カスタマイゼーション(Customization)があります。カスタマイゼーションを定義するならば、ユーザーによって直接行われるもの。例えばFacebookでは、旧姓やニックネームを表示したり、自分の詳細なプロフィールを設定する、あるいは見たくない投稿については、投稿を隠す設定もできます。これら全てがカスタマイゼーションなのです。

一方パーソナライゼーションは、ユーザーが使っているアプリケーションが行なうもの。AIやディープラーニングなど先端技術の進化で、パーソナライゼーションがますます一般的になってきましたね。

なぜ今パーソナライゼーションなのか

なぜ今パーソナライゼーションなのか

パーソナライゼーションに今注目が集まるのはなぜでしょうか。一時的な要因としては、すでに言及した通り新型コロナウィルスが蔓延し、購買活動の範囲が狭まっているからですが、本来言及すべき理由は、2つ考えられます。

マスマーケティングではユーザーが動かなくなった

マーケティング活動の主流といえば、間違いなくテレビコマーシャル(CM)に代表される、マスメディアを活用したマスマーケティングでした。しかし1990年代後半から企業向けとみなされていたコンピューターなどのデバイスや、インターネットが広く一般ユーザーに普及したことで、状況が激変。一人最低1台のスマホを持つのが、今では当たり前になり、情報ソースとしてSNSやECサイトなどの重要性がテレビを大きく超えたのです。情報が容易に入手できるようになったことに比例し、ユーザーの興味や好みの範囲は爆発的に広がり、不特定多数のユーザーに一方的な広告宣伝を行うマスマーケティングを仕掛けているだけでは、成果がでにくくなったと言えます。

ユーザーが購買の主導権を握るようになった

SNSやWebサイトを利用することで、ユーザーは自分が興味・関心のある商品やサービスを、膨大な選択肢の中から自ら選ぶようになりました。要はコマーシャルを見るときには、もう決断がなされていうことも珍しくないということ。

そこで企業のマーケティング部門ではユーザーに訴求する商品・サービスを、パーソナライゼーションを活用して提供することが必須事項になったのです。

B2BとB2Cにおける、パーソナライゼーション

B2BとB2Cにおける、パーソナライゼーション

企業向けであるB2B (Business to Business)と、個人向けのB2C(Business to Consumer)のどちらも、パーソナライゼーションの効果が見込めます。それぞれの活用方法について確認しましょう。

B2Bの場合

B2Bでは購買に至るまで、複数のステークホルダーが関わり、商談期間も長いのが特徴ですが、インターネットの発達により、B2Bでもユーザーの購買行動に変化が生じました。今やB2Bのユーザーの多くが、営業担当者の訪問を受ける前に、インターネットサーフィンで必要な情報を収集し、すでに購買意思を固めているというデータもあるほど。この状況を受けてほとんどの企業では、積極的にデジタルマーケティングを活用するようになりましたが、そこでポイントになるのがパーソナライゼーション。ユーザーのニーズや、検討ステージに応じセグメントし、パーソナライゼーションズでユーザーが必要とするであろう情報を、ユーザーが見つけるより先に提供することができれば、コンペに対しての差別化ができて、商談のスピードアップにも期待できます。

BtoCの場合

B2Bの場合より、パーソナライゼーションの活用方法がより多く考えられます。例えばECサイトで商品をかごに入れた際に、類似商品を同時に表示する、あるいはレコメンド商品をメール配信するといった方法ですね。

パーソナライゼーションに必要な情報

パーソナライゼーションに必要な情報

パーソナライゼーションを活用しなければ、ユーザーの購買意欲を掻き立てるのが難しくなってきたことがわかりましたね。パーソナライゼーションを行う場合、企業ではどのような情報を活用しているのかを確認しましょう。

デモグラフィック(Demographics=人工統計学的属性)

まずはデモグラフィックが挙げられます。年齢、性別、興味関心など、顧客分析の切り口の一つで、ユーザー各自が持つ社会経済的な特質データ。つまりユーザー属性となる情報です。他とセグメンテーション手法と比べると、データを入手しやすいのが特徴といえます。

デモグラフィックの取得方法として一般的なのは、スマホアプリのインストール時や、オンラインショッピングサイトの会員登録時に、ユーザー自身で個人情報を入力してもらう方法。最近はSNSと連携し、情報を間接的に入手することも多くなりました。デモグラフィックは、パーソナライゼーションではトラディショナルな情報と位置付けることができます。

コンテクスト (Context=状況・文脈)

コンテクストとは、消費者行動 (Consumer behavior) の背景となる情報のことで、ユーザーが何を、どこで、誰と関わったかという要素の組み合わせ。ユーザーがサービスを利用する時間帯・日・曜日、アクセスするデバイスの種類、住む地域などが代表的なコンテクストの例です。

例えば、ユーザーの行動範囲が分かれば、範囲内にある店舗の情報をピックアップし、アプリ上で提案(レコメンド)することができますし、ユーザーが使うデバイスの種類が分かれば、スマホの通知機能を利用し、興味関心に合ったコンテンツをユーザーに送ることも可能になります。

ビヘイビア(Behavior)

パーソナライゼーションで、最も高い効果が期待できるのがビヘイビア。ユーザーの過去における行動履歴のことです。

例えば特定のECサイトで、決まった商品ばかりクリックするユーザーの行動傾向が見出せたのなら、その商品に関連したコンテンツを優先的に表示することで、ユーザーの購買意欲をくすぐることができるというもの。ビヘイビアの解析は難しいといえますが、一度ものにしたら非常に精度の高いパーソナライゼーションが実現できるのです。

パーソナライゼーションの事例

パーソナライゼーションの事例

ここでAmazon.comを使った方なら、誰でもご覧になったことがある、Amazonの事例を紹介したいと思います。

Amazon: レコメンド機能

Amazonが誇るパーソナライゼーション施策として、レコメンド(オススメ)機能が知られています。Amazonで買い物をすると「この商品を買った人はこんな商品も買っています」という案内が表示されますが、これこそがレコメンド機能です。

レコメンドは、ユーザーの閲覧履歴や購入履歴、購入頻度といった情報をもとにして、ユーザーが欲しいと想定できるおすすめ商品を表示。ユーザーの購買意欲をさらに刺激するのです。

Amazonのみならず、Yahoo! JAPANやZOZO TOWNといった高収益企業では、オンラインとリアルといったオムニチャネルのパーソナライゼーション、AIやディープラーニングなど先端技術を活用した予測に基づくパーソナライゼーションといった、高度なパーソナライゼーションに取り組んでいます。

パーソナライゼーションの注意点

パーソナライゼーションの注意点

残念ながらパーソナライゼーションにはリスクもあります。それはユーザーの個人情報の取り扱いです。サイバーテロなどにより、大企業で保有する大量のユーザー情報が、オンラインで垂れ流しされていたという事故をよく耳にしますが、それに伴って個人情報の取り扱いに対する世間の目が、日に日に厳しくなってきたのは事実。

2018年8月には欧州でGDPR(General Data Protection Regulation=一般データ保護規則)、2020年1月にはアメリカカリフォルニア州で、CCPA(California Consumer Privacy Act=カリフォルニア州消費者プライベート法)が施行されました。

個人情報保護の法律ができたことで、欧州やカリフォルニアの企業がパーソナライゼーションを行う際には、ユーザーの個人情報の取り扱いに、一層の注意を払う必要が生じたのです。

日本では

日本国内でも2003年5月に個人情報保護法が施行され、ユーザーのプライバシーが守られています。5000名以上の個人情報を有する場合になりますが、違反すれば罰則規則により6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金。

実は日本の個人情報の範囲は、CCPAが定義するそれよりも広く、個人を識別できる情報だけでなく、それに関連した情報も含まれます。ですからパーソナライゼーションを行う際には、収集したユーザーの個人情報を安全に管理し、ユーザーから開示請求を受けた際にいつでも対応できる組織体制をつくる必要があるのです。また個人情報が外部に漏洩しないよう、万全な情報セキュリティ対策を施すことも必須。

超えるハードルは多くて疲弊してしまいそうですが、企業存続のためにもパーソナライゼーションに着手することは肝心です。

パーソナライズに乗り遅れるな

パーソナライズに乗り遅れるな

情報過多ともいえる現代社会において、企業とユーザーが相互に信頼し合い、継続的につながりを持つために、パーソナライゼーションが有効であることがわかりました。企業にとって、一人ひとりのユーザとどれだけ多く向き合えるかが勝負です。

技術の急速な発展により、ぱーソナライゼーションが行いやすくなりました。この先、顧客のデータを集め、行動を知り、ユーザーごとに選択された情報やサービスを届けることがいずれデファクトスタンダードなると考えられます。

今後のマーケティング施策を考える際には、パーソナライゼーションを活用して、時代遅れと言われるマーケティング施策だけにしがみつくのはやめにしませんか。

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