【広告はクールじゃない】WEB業界なら絶対に観るべき、映画4選
あなたが1番最後に映画を観たのはいつですか?「しばらく観てないよ」という人は少し損しているかも。
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自ら起業したい人やスタートアップ企業で活躍したい人が仕事や勉強や人脈作りで忙しいのは、私もよくわかります。でも、そんな人こそ映画を観るべき!デスクの積読を片付けるのも誰かから本音を引き出せる関係性になるのも、とても意義深いことですが、かなりの時間を要します。映画なら、約2時間で完結。
しかもその中に、ビジネスのヒントあり、人間の感情の動きあり、世界中の人々を魅了する世界観や美学あり……と、事業が成長する上で避けて通ることができない重要な要素が密度濃く詰まっています。映画は単なる気分転換のエンタメではなく、あなたが新しい世界を切り開いていく助けになってくれるはず。
今回は、WEB業界人やWEB系マーケター、スタートアップ起業する人にとって、絶対に観るべき映画を4本に絞ってご紹介します。全て旧作でネット配信されている作品なので、ダウンロードしてスキマ時間に観られますよ。
目次
■1本目『ソーシャルネットワーク』|Facebook創業の光と影を知る
・「ソーシャルネットワーク」のあらすじ
言わずとしれた世界最大のSNS「Facebook」の誕生を題材にしたドラマ。ハーバード大学に通う19歳の学生マーク・ザッカーバーグは、ある出来事をきっかけにFacebookの構想を思い付き、開発と拡大にのめり込んでいきます。今でこそ華々しい成功者のイメージがあるマークですが、彼女に手酷くフラれたり、共同設立者である親友とモメたり、憧れのカリスマに翻弄されたりと、成長の過程は波乱万丈。「スタートアップ揉めがちあるある」満載で、ケーススタディとしては申し分ないでしょう。事実と異なる部分も多々あるようですが、Facebook共同設立者であるエドゥアルド・サベリンがマークとFacebookを告訴した件や、ナップスターの創業者であるショーン・パーカーが経営に参加した件など事実も多く、虚実をチェックする楽しみもあります。
・「ソーシャルネットワーク」の評価
アカデミー賞8部門ノミネート3部門受賞、多くの評論家が年間トップテンに選出するなど、高い評価を得ています。
・「ソーシャルネットワーク」の名場面
引用:「ソーシャルネットワーク」https://www.sonypictures.jp/
「Facebookはクール 広告はクールじゃない」
ナップスター創業者であるショーンの発言に心酔しクールなサイトを目指すマークと、ビジネスとして早く確実に利益を出したいエドゥアルドに亀裂が生じます。ユーザーに受け入れられたWEBメディアがスケールするには広告収益は大切だけれど、ユーザーにネガティブな印象を与えることがどれほどメディアとして致命的か、マークには未来が見えていたのでしょう。これは日本のベンチャー企業でもある、ビジネスマンとクリエイターの「収益かユーザーか」の衝突風景ですね。ショーンのような、他者を圧倒するトリックスターもアメリカのスタートアップ界隈にはゴロゴロいそうですよね。
引用:「ソーシャルネットワーク」https://www.sonypictures.jp/
「毎日14時間も地下鉄でスポンサー探し」
共同設立者でマークの親友のエドゥアルドのセリフ。エドゥアルドが営業でボロボロに疲れてマークのもとに戻ると、ショーンが女の子を連れ込んでチャラチャラしてるわけです。さらにショーンは出資者を紹介し、Facebook経営陣として影響力を増していきます。努力すれば報われるとは限らない、スタートアップの厳しさが身にしみるシーンです。
・多角的に描かれる「天才」、マーク・ザッカーバーグ
この映画の面白いところは、単なるマーク・ザッカーバーグのキラキラ成功物語ではないところです。訴訟手続での証言・供述という形で、周囲の人間から見たマークが炙り出されていきます。マークの行動力や集中力、クールなサイトを作りたいという独自の美学は、魅力的なカリスマそのもの。一方で、共同設立者で親友のエドゥアルドや、アイデアのきっかけになったウィンクルボス兄弟への仕打ちなど、冷酷に感じる部分も多いです。そうかと思えば、憧れのショーンに心酔したり元彼女のエリカを忘れられなかったりと、人間味を感じさせる部分も……。結局、会社も事業も「人」が作るもの。スタートアップは特に、属人的な要素からは逃れられないのかもしれません。
マーケティング的な観点から見てもアイデアの宝庫。「クールじゃない」と創業期に広告を載せなかったのは、なかなか勇気のいる戦略だったのではないでしょうか。広告モデルを追求してユーザーからそっぽ向かれてしまう、Web媒体の悪しき習慣を示唆するようにも取れます。「クール」というのは個人差が大きく極めて曖昧な評価基準ですが、そういった数値化できない哲学や美学がイノベーションの爆発力に大きく関わるのかもしれません。「ハーバード大学の学生」という特権階級限定でスタートし徐々に他の大学生に対象を拡大するなど、ユーザーを獲得していく戦略も興味深いです。
■2本目『インターンシップ』|Googleのインターンを疑似体験!?
・「インターンシップ」のあらすじ
時計販売会社のやり手営業マンであるビリーとニック。ある日、突然会社が倒産し途方に暮れていると、ビリーがGoogleのインターンシップに参加しようとニックを誘います。Googleのインターンシップに集まったのは、有名大学の秀才ばかり。チームを組んで課題をクリアし、最終的に1チームだけがGoogleの正社員として採用されるプログラムです。中年でITの知識もほとんどないビリーとニックは、落ちこぼれやはみ出し者のメンバーと共に勝負に挑みます。
映画としてはご都合主義・予定調和な部分も多いですが、明るく楽しいコメディなので、「ちょっと気分転換したいな」というときにオススメ。Googleの全面協力を得て実際のGoogle本社でロケを行っているのも、大きな見どころのひとつです。
・「インターンシップ」の評価
日本では劇場公開されずビデオスルーのみなので、知らない方も多いかもしれませんね。批評家の反応は割れているものの、制作費5,800万ドルに対し、全世界で9,300万ドル以上稼ぎ出しています。
・「インターンシップ」の名場面
引用:「インターンシップ」https://www.foxmovies.com/
「自分とお互いを信じよう 彼女は自分を信じてマニアックになり挑戦したんだ」
ビリーがフラッシュダンスのアレックスを例に出し、メンバーが初めて団結するシーンです。ちなみに、このときの課題はクィディッチ。ハリー・ポッターシリーズに登場するスポーツで、箒にまたがったまま相手のゴールにボールを入れて勝敗を競います。協調性やリーダーシップをチェックしているのかも。
引用:「インターンシップ」https://www.foxmovies.com/
「あと5分、この景色を楽しもう」
何でもすぐに検索し、いつもスマートフォンの画面を見続けているスチュアートが、ビリー達と夜遊びをしたあと朝日を見ながら漏らす一言。スチュアートの成長とビリー達への親愛が伝わる美しいシーンです。この夜遊びからビッグアイデアも生まれます!
・多様性が重視される社会では、どんな経験も無駄にならない
この映画のキーワードとして度々出現するのが、Googleが重視している「多様性」。ビリーとニックが持つIT企業では珍しい経験や発想が、課題をクリアするヒントになっていきます。学生たちがビリーとニックを信頼していくと同時にビリーとニックも柔軟にIT知識を学び、学歴や年齢関係なく成長していく様子も印象的。今後増々重要視されていく「多様性」について考えるきっかけになる映画です。舞台となっているGoogleオフィスは、仮眠室や食べ放題のカフェなどワクワクする設備が盛りだくさん。イノベーションが生まれる環境作りのヒントになることでしょう。
インターンシップ中の課題はマーケティングセンスが問われるものばかり。一緒にアイデアを考えてシミュレーションしてみるのも面白いです。ちなみにビリー達が開発したアプリはモデルとなるアプリが存在し、100万ダウンロードを超える人気アプリとなりましたが、実際にリリースされても人気になりそうです。
■3本目『her/世界でひとつの彼女』|AIは人類の理想的なパートナーになれるか?
・「her/世界でひとつの彼女」のあらすじ
妻のキャサリンと別れを告げられ落ち込むセオドアは、人工知能型OSである「サマンサ」を購入。人間味にあふれ、魅力的なサマンサ。実際に触れ合うことはできず、音声とカメラしかコミュニケーション手段がないセオドアとサマンサですが、次第に惹かれ合い恋人関係になります。AIとして進化を続けるサマンサはセオドアの理解が及ばないレベルにまで達し、連絡も途絶えがちに。サマンサの決断を通じて、セオドアはキャサリンとの関係に足りなかったものに気付き、人間として成長していきます。
・「her/世界でひとつの彼女」の評価
批評家から高い支持を得ており、アカデミー賞では5部門ノミネートされ脚本賞を受賞。特にサマンサを演じたスカーレット・ヨハンソンが絶賛され、声だけの演技にも関わらず第8回ローマ映画祭で最優秀女優賞を受賞しています。日本語吹き替え版の林原めぐみさんも魅力的なので、2回観たくなるかも。
・「her/世界でひとつの彼女」の名場面
引用:「her/世界でひとつの彼女」https://www.asmik-ace.co.jp/
「私たち2人の写真がないでしょ だからこの曲が代わりよ」
肉体を持たないサマンサが、自ら作曲した曲をセオドアに贈るシーン。サマンサの愛情の深さもさることながら、作曲までできるスキルの高さに驚きます。AIが描いた絵が高額で落札された事例もありますし、芸術や文化の面でもAIが優位に立つ時代がやってくるのかも……。
引用:「her/世界でひとつの彼女」https://www.asmik-ace.co.jp/
「僕と同時に他とも会話を?」「ええ、8316人よ」
映画の終盤、サマンサは大きな進化を遂げます。ちなみにこのときサマンサの恋人は641人。セオドアは異常としか思えず、サマンサを受け入れることができません。進化のスピードが全く違うAIと人類は、理解し合うことができるのでしょうか。
・AIに見放されたら、人間はどうなる?
手紙代筆ライターであるセオドアの作品を自主的にまとめて出版社へ売り込むなど、AIとして抜群の働きをするサマンサ。しかし、進化するにつれて自分の意思を持ち、セオドアの意見に反論してケンカになるなど、「人間の思い通りに動いてくれる便利なパートナー」からは遠く離れていきます。「her/世界でひとつの彼女」は、進化していくサマンサとセオドアから自立したい元妻キャサリンを重ね、ロマンチックな恋愛映画としてまとめられていますが、これが恋愛以外の機能を担うAIだったらどうなっていたでしょうか。政治、軍事、司法、医療などの判断や実行をAIに任せた結果、人間に不利な判断が下されたら、我々はどうなってしまうのか……。セオドアの成長を優しい気持ちで見守りながらも、シンギュラリティに思いを馳せてうっすら恐怖を感じてしまうような映画でもあります。
最先端のテクノロジーやガジェットが好きな人なら、近未来のロサンゼルスで実用化されている技術にも間違いなく興味を抱くでしょう。AIとのやりとりは小さなイヤホンで行われ、スマートフォン的なデバイスは折りたたみ式で名刺くらいの大きさまで小型化しています。イヤホン型デバイスは今後現実社会でも普及しそうですが、サマンサのようなレベルに達する日は来るのでしょうか。セオドアが楽しむビデオゲームは、コントローラーもディスプレイも不要で、空間全体に投影された映像を見ながら身体の動きだけで操作できるようになっていました。これも近い未来に実現しそうな技術ですね。「いかにもSF」という感じではなく自然に描かれているので、実用化されたときの様子をリアルに想像することができます。
■4本目『ザ・サークル』|監視社会ディストピアでそれぞれの正義が暴走する
・「ザ・サークル」のあらすじ
主人公のメイは、友人アニーの仲介で世界No.1のシェアを誇る超巨大SNS企業「サークル」に入社します。サークル社は新サービスの「SeeChange」を発表。ベイリーCEOの「超小型カメラをあらゆる場所に設置し、人々の生活を全てオープンにすることで、世の中はさらに良くなる」というアイデアは、社内で熱狂的に受け入れられます。カヤック事故がきっかけでSeeChangeに命を救われたメイは、SeeChangeで24時間私生活を生配信することに。メイは世界中でアイドル的な存在となり、メイ自身も生配信にハマっていきます。
しかし、メイの友人マーサーが鹿の角でシャンデリアを作り炎上。サークル社が新たに発表した人探しサービス「SoulSearch」のユーザーに追い詰められ、悲惨な結末に……。この件をきっかけに、メイが描いた理想の社会とは?予想を裏切るラストに、思わずゾッとしてしまうかも。
・「ザ・サークル」の評価
実は興行収入も振るわず、批評家の評価も低いんですよね。おそらく個々のエピソードの繋がりが薄く、わかりやすい悪者がいなくてメリハリがないためだと思うのですが……。ストーリー的には弱いかもしれませんが、私は逆にそこがリアルで興味深いなと思いました。
・「ザ・サークル」の名場面
引用:「ザ・サークル」https://www.gaga.co.jp/
「秘密とはウソです」
カヤック事故後、社内イベントでインタビューを受けたメイのセリフです。メイは、「誰も見ていないと人は悪いことをしてしまう、だから全てを公開し全てを知るべき」と主張。自主的に発信するSNSから、全てが自動的に公開されるSeeChangeへと監視社会のステージが移っていきます。
引用:「ザ・サークル」https://www.gaga.co.jp/
「見てる人は230万8007人」
メイはSeeChangeで24時間生配信を開始しました。朝起きてチェックすると閲覧者は230万8007人!世界中から注目を浴びてメイはサークル社のアイコン的な存在になりますが、それが新たな火種に……。
・テクノロジーとともに、論理感や法整備も進化が必要
おそらくFacebook社やGoogle社がモデルだと思われますが、ハードウエアである小型カメラを開発しているところに一歩進んだ未来が垣間見えます。SeeChangeに使われる小型カメラは、何色もあってどこにでも目立たず取り付けることができ、交通量・気候・バイオメトリクス・顔認証など様々な情報が得られるとのこと。実現すれば、情報収集の量・精度・スピードは確実に上がるでしょうね。顔認証と信用スコアを組み合わせて、事前に信用できない人がわかるとさらに便利そう。「この人は、毎週月曜の9時にこのコンビニでコーヒーを買う」といった行動データが、どんどん蓄積されていくのでしょう。相手の好みに合わせて商材や接客方法を変えるなど、オンライン・オフライン問わずマーケティングの幅が広がると思うとワクワクしますが、やはり怖いなという気持ちも……。先程も少し書きましたが、「ザ・サークル」にはわかりやすい悪者は出てきません。全員が、良かれと思って新しいサービスを生み出したり、悪者(だと思っている人)を追い詰めたりする、「正義感に溢れる人」なわけです。
それにも関わらず数々のトラブルが起き、さらに歪んだ世界へと突き進んでいくのが、なんだかリアルでゾッとします。信用スコアの導入やゲノム編集ベビーの誕生など、今までの歴史では考えられなかったような新たなテクノロジーが生まれる現代では、倫理観や法整備の進化も必要不可欠だなとひしひしと感じる映画です。
まとめ|スタートアップ企業のカルチャーを、映画で疑似体験
ご紹介した4本の共通点は、「スタートアップ企業のカルチャーが疑似体験できる」ということ。Facebookの誕生、Googleの人材採用、人工知能の進化、SNSから監視社会への移行と興味深いものばかりです。しかも、イケイケキラキラの良い面だけでなく、スタートアップ独特の熱狂の裏にある問題点も描かれています。
新しくサービスやインフラを生み出す際には、その責任も忘れてはいけません。作り手の理想だけを追い求めて使い手の心情を軽視していたら、成功することはできないでしょう。
ぜひ優れた映画をたくさん観て、楽しみながら視野を拡げてください。
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