ビューティーテックは、企業と世界中の女性が待ちわびるものになる。

ビューティーテックは、企業と世界中の女性が待ちわびるものになる。

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Xテック花盛り。その現象がいつ始まったかは明らかではありませんが、古くは2000年代始めに「フィンテック」が一部で登場し、2010年代の早い時期に「Xテック(●●テック)」が始まりの火蓋を切りました。インダストリー4.0などの世界的なIT戦略ブームと相成り、Xテックは瞬く間に他分野に広がってきました。

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働き方改革や少子高齢化による労働人口の減少によって、デジタルトランスフォーメーション (DX)が、日本の社会や産業から好意的に受け入れられています。そうDXとXテックの浸透は連動しているのです。

今やフードテックやスリープテックなど、一般消費者むきのXテックも知られてきましたが、ビューティテックはご存知ですか。一言で言えばテクノロジーが創造する新たな美容商品やサービスのこと。

髪を毎日洗うことは当然と思っている人が今では多いですが、その習慣が日本人に定着したのはかなり近年のこと。初めてシャンプーが日本の市場に出てきた昭和5年のキャッチコピーは、「せめて月二回は髪を洗ってください」。昭和58年に「毎日洗う」に変化しました。

昭和初期で毎日歯磨きをしているのは、日本国民の20%ほどしかいませんでしたが、今では1日3回、さらに歯間ブラシまで登場していることは周知の事実です。

洗髪や歯磨きといった外側を磨く美容マーケットは急速に成長し、あっという間に他国を追い越しもはや飽和状態。今は「自分にとっての自分らしさ」を追求し、内面の美(インナービューティ)に考えが向いているのがトレンド。外面の美に加え、最新美容テクノロジーにより、インナービューティーを手に入れることが、ビューティテックのめざすところといえます。

ビューティテックの定義

ビューティテックとは、テクノロジーの活用で生まれた新たな美容製品やサービスのこと。例えばファンデーションやリップをAR(仮想技術)で試すことや、好みや肌状態に合わせた商品をAI技術の活用で紹介するサービスなど、特に女性の方なら、体験された方も多いのでは。

世界の化粧品マーケット状況

世界の化粧品マーケット状況

ビューティーテックでは、化粧品市場が主戦場であることは言うまでもありません。少し古いデータですが、2018年世界における化粧品市場の調査結果を共有したいと思います。

  • 市場規模:約34.5兆円
  • 2021年に約37兆円に成長する予測
  • 化粧品生産の55%は欧米(日本は8%)

化粧品市場トップ3と人口(カッコ内)
1. 米国:9.6兆円(3.2億人)
2. 中国:6.7兆円(14億人)
3. 日本:4.0兆円(1.2億人)
———————————————
8. インド:1.5兆円(13.5億人)

市場規模を押し上げる大きな要因が、人口の多い国の経済発展と言われています。インドの伸び率が今後気になるところですね。

化粧品のECの成長をビューティテックが後押し

従来化粧品はリアル店舗で購入するものでしたが、今はECの存在が無視できません。

2021年には536兆円に到達すると言われる世界でのEC市場規模。毎年20%前後の驚異的な伸び率が記録され、2021年にはEC化率が、世界全体で17.5%に達すると予想されています。

日本の化粧品・医薬品のEC市場規模(B2C)を切り出してみると、2013年に4,088億円だったものが、2017年には5,670億円に達しており、国内物販系EC市場の前年成長率でも、雑貨/家具/インテリア (9.8%) 、事務用品/文房具(8.2%)に続く第3位(7.6%)。

目覚ましい成長を遂げつつも、もう一歩のところで化粧品市場のEC化が足踏みすることがあります。その理由として次の3つが考えられますが、いずれもビューティテックが解決し、EC化をサポートする可能性が高いのです。一つづ確認してみましょう。

1. 販売チャネルがたくさんある

高級な化粧品は百貨店で、気軽な化粧品はドラッグストアで購入することに始まり、化粧品には訪問販売、カタログ通販、テレビ通販など販売チャネルが多くあります。プチプラな化粧品をECで購入すれば、送料別になるので割に合わなくなってしまうのでNG。

しかし昨今のD2Cばやりで、小さなロットで化粧品が多数リリースされるようになれば、店頭に全て並べることが、もはや物理的に不可能になります。そのためビューティテックがなくても、ECへのシフトが進むはずですが、あえて言うならAIやARを使って、効果的な宣伝ができる点がアドバンテージとなります。

2. 化粧品は試して買いたい

色味や発色、肌に乗せた感覚など実際に手にとってみないとわかりません。高い化粧品であれば尚更です。

そこでビューティテックの登場です。ARによりカメラに映った自分の顔に直接メイクをのせ、バーチャルに質感や色味を試すことができますし、スキンケアでは肌検知のビューティテックが解決してくれるのです。

3. 複雑なデジタルマーケティングと高い費用

SNS、インフルエンサー、 SEO、動画など、最近のデジタルマーケティングは選択肢が多いと同時に、トレンドが頻繁に変わるために複雑の一言。しかも多くの大手企業が軒を連ねる化粧品市場は競争が激しいため、デジタルマーケティングでの顧客一人当たりの獲得費用が高騰しがちです。

ビューティテックで、使いやすくて信頼のおける肌検知サービスを投入すれば、ユーザーはEC上で肌診断を受けられ肌質にあった化粧品を見つけやすくなるため満足度が上がり、ECで製品を選んで購入することに違和感がなくなることが考えられます。

ビューティテック元年

ビューティテック元年

2018年はテクノロジーを駆使したさまざまなデバイスが続々登場したので、「ビューティテック元年」と位置づけられました。その後異業種やベンチャー企業も化粧品業界に続々と参入。もはや化粧業界とIT業界の境目もあやふやになりつつあり、大手化粧品会社ではAIや人工皮膚などを取り入れた研究開発に、自ら注力を始めています。

日本大手各社の取り組み

ビューティテックの取り組みに注力している2社を紹介します。

ポーラ・オルビスホールディングス(HD)

化粧品の枠を超えた研究開発を強化。2018年にはグループ全体の研究統括機能を集約する、マルチプルインテリジェンスリサーチセンター(MIRC) を新設しました。内閣府と経済産業省が創設した「宇宙ビジネス投資マッチング・プラットフォーム(エス・マッチング)」にも参画し、宇宙科学とつなげることで、皮膚科学の飛躍的な発展を目指しています。

またAIの活用で、肌の状態と健康状態の相関関係の解明を進め、化粧品が健康や心理状況に影響を与える可能性を探る研究も行っています。肌状態を見ることで睡眠不足かどうかを判定するなど、肌から新たな価値を創造することを目的とし、2020年以降には、肌状態から感情や健康状態を把握するような、新たなサービスサービスのリリースを計画しています。

資生堂

2017年から米ベンチャー企業の買収を始め、これまでにMatchCo(スマートフォンアプリによる肌色測定で、各ユーザーに最適なファンデーションを提供)、Giaran(AI技術によるパーソナライゼーション)、Olivo LaboratoriesのSecond Skin 事業(人工皮膚形成技術)を手中に収めました。2018年には都市型オープンラボであるグローバルイノベーションセンター(S/Park) を開業し、化粧品開発のノウハウと、テクノロジーの融合を推進しています。

そして2019年にはユーザーそれぞれの、日々変化する肌状態に合わせてケアが変わるIoTパーソナライズスキンケアの、同社初ブランドとなるOptuneを発表しました。

アマゾンの取り組み

すでにお話しした通り、ビューティテックは美容業界の企業だけが注力しているのではありません。アマゾンの事例を紹介します。

2019年アマゾンは自社開発の、PBスキンケアブランドであるBeleiを発表しました。トレンドであるパーソナライゼーションや、スモールマスとは真逆をいくコンセプトで、誰にでも合わせられるちょうど良い製品と言えるものです。

皮膚科医による品質テスト済みで、動物実験はしておらず無香料。含まれていると消費者から厳しく指摘を受けることが多い、硫酸系化合物やパラベン、フタル酸エステルは不使用。パッケージや外装は、リサイクル可能な素材からつくられています。

Beleiはエシカルがコンセプトで、ラインアップは12種類、一番の高額商品でも40ドルと、一般消費者が手が届きやすい価格設定です。

次はアマゾン・ゴーのビューティ版を狙うのか

2017年以降アマゾンではPB戦略を進めています。美容分野でもアマゾンに出店する各ブランドの商品の購入履歴やm売れ筋情報などのデータをもとに、確実に成功するPB化粧品を開発した結果がBeleiです。

アマゾンが美容分野での次の取り組みとして、強いメッセージを持つ化粧品スタートアップや、セレブやインフルエンサーと協業したら、世界的に大きな影響力を持つブランドが誕生する可能性は大きいと言えます。魅力的なPB化粧品のラインを増やした上で、アマゾン・ゴーのビューティ版が設立されたのなら、既存の美容業界に激震が走るでしょう。ひょっとしたらBeleiはその準備なのかもしれません。

時代の先を行くか、美容スタートアップ

ビューティテックは、テクノロジーを駆使したユニークなサービスを持つスタートアップにも活躍の場を提供しています。

米Proseは、ユーザーがオンラインで髪質や頭皮の状態、ライフスタイル、生活環境(自宅の郵便番号の入力で、その地の紫外線量や湿度といった気象情報が自動的に抽出される)といった質問に答えると、独自のAIアルゴリズムで解析し、76の自然派成分からユーザー一人ひとりに最適な組み合わせでのヘアケア品を提供。

英WAH LONDONでは、ユーザーがVRヘッドセットを装着し目の前に自分の手をかざすと、さまざまな色やアートデザインが自分の爪の上にバーチャルに描かれるというサービスを提供。気に入ればネイルプリンターであるWAH Nail Printerを使って、実際に自分の爪にプリントするか、あるいは該当のネイルカラーを注文し自宅で受け取ることもできるというもの。またネイリストにデザインを転送し、そこで施術を受けることも可能という、オンラインとオフラインを融合させるサービスが注目を集めています。

日本のスタートアップも

サービスのユニークさでは、日本のスタートアップも負けていません。最後に美容院でのビューティテックの例を共有しましょう。

日本ではコンビニの数より美容院があると言われており、大手、中小交えた生き残り競争は熾烈で、廃業に追い込まれることもあるのです。

こうした現状を改善しようと設立されたのが、自前のサロンを持たなくても営業できるよう、フリーランスの美容師に個室スペースを貸し出すGO TODAY SHAiRE SALONや、ヘアサロンでは画期的な定額制通い放題サービスMEZONを運営するJocyなど、ビューティテックのスタートアップ。

彼らが保守的とも言える美容院業界にどんな改善をもたらすのか、投資家から注目を集めています。今後も「とんがって」ビューティテックを先導してほしいですね。

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