Cookie規制でリタゲ広告はジ・エンド?サードパーティCookieのブラウザ別対応を解説

Cookie規制でリタゲ広告はジ・エンド?サードパーティCookieのブラウザ別対応を解説

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現在のWebブラウザーのシェアは GAFA(Google, Amazon, Facebook, Apple)の一つGoogleが提供するChromeが圧倒的です。なのでChromeに何らかの変更があれば、世界でその影響力は多大になります。

そのGoogleが2020年1月に、ChromeでのサードパーティーCookieのサポートを段階的に廃止するという方針を明らかにしました。実際には2年以内に実施するというもので、その目的はユーザーのWebブラウズの、安全確保のための措置とのこと。

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この発表が長年に渡ってサードパーティCookieと切っても切れない仲だった、オンライン広告市場全体を震撼させています。ついにGoogleがサードパーティCookieとの決別を決めたことで、オンライン広告は今後どうなるのでしょうか。

サードパーティCookieとは

まずはCookieの意味をおさらいしましょう。CookieとはWebサーバーからユーザーのWebブラウザーに送られる、ユーザーのデータを保存しておくためのファイルのことです。

Webサイトにアクセスすると、サーバーがユーザーのアクセス回数や、サイト内でのユーザーの行動を認識してCookieを発行します。それが一定期間ユーザーのブラウザに保存され、次回以降のアクセス時にはCookieのデータが利用されるために、照会スピードが早くなるしくみ。

Cookieには、ファーストパーティとサードパーティーの2種類があり、Cookieの発行元がどこのドメインであるかで分類されます。実際にユーザーが訪れているドメインから発行されているCookieがファーストパーティで、それ以外のドメインから発行されているものがサードパーティー。

サードパーティCookieは、複数サイトから横断的にCookieを付与し、個人を特定するような仕組みですので、ユーザーが全く関係ないサイトを見たときにも、関連する広告が配信されるため、主にターゲティング広告のために使われています。

ユーザーの行動を追跡した企業では、さらに各ユーザーの総合的なプロフィールを作り、サードパーティCookieを利用して個人情報を読んだり保存するのです。

ユーザーが気付かないうちに行動履歴を集めてしまうため、以前照会したサイトに関連した広告がどこでも現れるとなんとなく薄気味悪いので、2018年あたりからターゲティング広告は嫌われ者になってしまいました。

うざいターゲティング広告対策

ターゲティング広告に嫌気がさしたユーザーは、広告をブロックするWebブラウザーの拡張機能をインストールしたり、JavaScriptを完全に無効にしたりして自己防衛を試みますが、広告の中にも有益なものがあるときもありますし、手動でその都度ブロックをかけるのがめんどうなユーザーは、大量のいらない広告が放置されていることも少なくありません。

Firefoxの対応が先

Firefoxの対応が先

「ユーザー保護を確実にするために、ユーザーのプライバシーを第一とする。新たな基準を確立しなければならない」と表明するMozillaが提供しているWebブラウザーのFirefoxでは、2019年6月からサードパーティーCookieをデフォルトでブロックしています。実際にサードパーティーCookieのブロックが行われると、Webページで何が起こるのか、信頼できるサイトでブロッキングを解除する方法などが案内される仕組みです。

さらにアクセス履歴やCookieを保存しないでWebサイトにアクセスするプライベートブラウジングモードでは、既知のトラッカーもブロックされますので、プライバシー保護の強化に加え、Firefoxのパフォーマンスの向上にも効果が見られました。

Firefox 67の正式リリースで、AmazonやGoogle検索が40-80%高速化したという発表も。このリリースではこのWebブラウジングの高速化のみならず、プライバシー保護面では、後述するfingerpringingや、暗号通貨採掘スクリプトのブロックも可能となりました。

AppleやMicrosoftでも

AppleのSafariや、先日公開されたMicrosoftのChromiumベースの新Webブラウザーである、Microsoft Edgeの正式版(79 stable)でも、初期設定でサードパーティCookieの一部がブロックされています。

EUや米国の当局も、広告目的の個人情報収集について否定的になりはじめました。ヨーロッパで2018年に施行された一般データ保護規制のGDPRと、それに続くePrivacyの存在。そしてアメリカのカリフォルニア州で2020年からCCPA(カリフォルニア州消費者個人情報保護法)
が施行されることは、巨大プラットフォーマーがサードパーティCookieの早期対策をせざるを得ない要因であったことは間違いありません。

サードパーティCookie なしでオンライン広告ができるのか

サードパーティCookie なしでオンライン広告ができるのか

ターゲティング広告に代表されるオンライン広告は、サイト運営者や広告主にとっては重要な収入源になっており、例えばGoogleの2019年10月-12月の売上高は前年同時期比17%増の約5兆円、そのうち広告収入は総売上の80%超。これはGoogleだけの事情ではなくて、全プラットフォーマーが広告なしで生計を立てるのは、極めて困難なのです。

それにオンライン広告のおかげで、ユーザーである我々は無料の情報が得られているという事実もあります。最近の調査では、サードパーティCookieを削除して、閲覧者と広告の関連性を低くすると、広告主側の収益が平均52%も減少したとの報告もあるほど。

ワシントン・ポストの取り組み

2019年7月、The Washington Post(ワシントンポスト)では、ファーストパーティCookieのデータと機械学習を活用した広告ターゲティングツールであるZeus Insights (ゼウス・インサイツ)の開発を発表しました。同ツールにはマーケター向けに用意されたターゲティング機能と、ユーザーの意図を予測する機能が搭載されています。

サードパーティCookieの依存を減らし、各国の厳格なデータプライバシーの遵守を実現しながら、より洗練された広告ターゲティングツールをマーケターに提供することが、このツールの目的です。

Zeus Insightsのプラットフォームでは、例えばWebサイトのどこを照会したか、何ページまでスクロールしたか、どこから当該サイトにたどり着いたか、何をクリックしたかなどの個人のコンテクストデータを監視しています。

Washington Postはこういったデータを、4年かけて蓄積してきたデータ群と照らし合わせて、ユーザーがどのような意図を持っているかを推測するのです。この技術では機械学習によるパターン解読も行われます。

同社の戦略的目標は、サードパーティCookieを使用しない広告ターゲティング機能を、顧客である広告主に提供するだけではありません。出版社をプラットフォーマー大手と競合可能な場を提供することでもあるのです。

さらにZeus Insightsを2016年以降他社へのライセンシングを行っているパブリッシングプラットフォームであるArcに組み込み、米国内外の出版社に使用許可を与える予定です。

Arcのユニークユーザー数は、世界で合わせて7億5000万人にも達するので、FacebookやGoogleが保有するデータの規模やデータターゲティングに対し、出版社がコンペになり得るというわけです。

Googleは

Googleの公式発表によれば、サードパーティCookie をブロックすることが、Webブラウザーの標準仕様になれば、実はCookieよりやっかいな存在とも言える、fingerpringing (指紋のような、ブラウザやデバイスの識別情報) を促進することにつながりかねないと言及しています。

PCにインストールされているフォント、ソフトウェアのバージョン、ハードウェア構成などを取得できるfingerprintingの技術から、ユーザーのデバイスやインストール済のフォントから、ある程度個人情報が割り出される可能性があり、しかもユーザーは自力でfingerprintingを消し去ることはできないというのです。

広告費の減少が進むことが、ユーザーにとっても望ましくない事態を招くという懸念を持ったGoogleは、2019年8月に、パートナーであるサイト運営者やデジタル広告業者などと連携しながら、ユーザー情報を関連広告以外に乱用されないように制御するために、一連のオープンスタンダードを開発するための新しいイニシアチブとなる、Privacy Sandboxを発表しました。

ユーザーのプライバシーを守りながら、ユーザーが手に入れたいと思う適切な広告を表示できる仕組みであるPrivacy Sandbox、広告主側も自らはユーザー情報を保有せずに、Privacy Sandboxのツール経由でターゲティング広告ができたら、当局の規制に抵触しないため、心配の種は減るのです。

そして広告主に代わりWebブラウザーが(この場合Googleが)ユーザーの情報を保持するので、結局のところ一番得をするのはGoogleというわけ。2年以内にサードパーティーCookieを廃止すると発表したのは、Privacy Sandbokの本番稼働が、同じく2年以内にできそうである見込みがたったからでしょう。

広告主、Chromeユーザーと協力し、すべてのステークホルダーにとってメリットを生み出すPrivacy Sandbox をリリースするGoogleの最終目標とは、Privacy SandboxをオープンWeb標準にすることであると考えられます。そしてこれがSafariやFirefoxでも採用されるようになれば、トラッカーをブロックすることで発生する不具合も解消されるはずなのです。

本当に2年で安全なものが作れるのか、結局Googleが得をするための施策じゃないかなど、現段階では色々言われ放題かもしれませんが、Privacy Sandboxが本番稼働する時には、業界の合意を得られることをGoogleでは確実視しているようです。

Adobe Flashは排除される事実から

ここで少し違うトピックを提供したいと思います。セキュリティ脆弱性のてんこ盛りであることは認識済みでありながら、排除は絶対不可能とみなされていたAdoble Flashが、2020年末にAdobe Flashのサポートの終了とともに、ほぼ実現するようです。そして既存の Adobe Flashコンテンツは新しいオープンフォーマット(HTML5やWebGLなど)に移植される予定なので、現行ユーザーに迷惑もかからないとのこと。

Appleの創業者であった故スティーブ・ジョブズ氏が、Adobe Flashはクローズドでセキュリティ上の問題が多いと批判し、2010年にiPhoneでの採用をやめたことで話題になりました。そしてそののち、Webブラウザー大手も2015年あたりからこぞってAdobe Flashをブロックしましたよね。

Adobe Flashが終了できるのは、ひとえにGoogleを含む業界全体がHTML5などでのオープンな代替規格を推進してきたからなのです。

Privacy SandboxもGoogleが自社の利益だけを追求するのではなく業界全体の繁栄のために、競合他社とも連携しながらPrrivacy Sandboxの標準化を目指すならば、Adobe Flashのように、問題のサードパーティCookieが完全撲滅になるのではないでしょうか。

結論:オンライン広告は生き残る…はず

結論:オンライン広告は生き残る(はず)

矢野経済研究所の調査では、オンライン広告市場は年々拡大しており、2018年度は1兆6,950億円でしたが、2020年度には約2.1兆円まで成長。2023年度には約2.8兆円を突破する見込みとなっているとのこと。

プラットフォーマーにしてもメインの稼ぎはオンライン広告ですので、政府に睨まれても、このビジネスを手放す気はないでしょう。

すでにお話しした通り、サードパーティCookieやfingerprinting技術にたよらない方法を開発し、オンライン広告を続ける道を各社とも模索していますので、Privacy Sandboxがその役割を担うかはわかりませんが、Google中心としたコンソーシアムのようなものが本当にできるのかもしれません。どちら様も背に腹は変えられませんからね。

 

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