SalesTech:直感型営業スタイルの終焉

SalesTech:直感型営業スタイルの終焉

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IoTやビッグデータといった先端技術の進化の後押しもありFintechや不動産Techなど、多くの業種でITありきのビジネスプロセスへ変わり始めていますが、職種カットでもxxTechが台頭しついに日本の営業分野でもSalesTechが広まり始めました。

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SalesTechとは何か

SalesTechは営業(Sales)と技術(Technology)を掛け合わせた造語で、ITの活用で営業活動を効率化する方法です。すでに欧米ではSalesTech領域に多くのスタートアップが生まれています。

CRMやSFAなどの活用で商談の始まりから受注までのプロセスや、顧客情報の分析結果が見える化され、さらに会社全体の現状を常に把握できるようなツールも一般的になってきました。

以前は多くて週に一度あるいは月に一度の確認でよかったビジネスに関する現状把握が、今やリアルタイムの確認が必須となってきたために、SalesTechが登場したのです。

日本の従来型営業スタイル

製品が高品質であれば、営業担当が新製品の紹介・提案を的確に行うことで製品はそれなりに売れました。つまり日本では製品力に頼る営業活動がメインだったのです。

営業担当は顧客を頻繁に訪問し、時に無理難題も含まれる顧客からの依頼に素早く対応するため休日出勤や徹夜も当たり前、さらには頻繁に顧客を接待して誠意を示し、受注を得る時代が長く続きました。伝統的に「営業が強い」と言われる企業では、今でもこの営業スタイルを続けているところがあります。

営業職は職人芸

できる営業担当は一匹狼。つまり「情報共有を徹底する」の真逆で情報は自分以外知らないのが当然で、人には教えないということが暗黙の了解だったのです。新人は現場に放置され、営業成績が良いのはいつまでも古参のエキスパートで変わらず。新人が成果をあげるためには、エキスパートのノウハウを盗んで覚えろという、まるで料理人の世界のようでした。

SalesTechが必要とされた理由

日本でSalesTechの必要性が増しているのはなぜでしょうか。2つの理由が考えられます。

リソース不足

日本ではいざというときには営業の人数を増やしてその数で勝負する、人海戦術を多用していました。しかし団塊世代の定年退職に続く少子高齢化により営業人員の確保が困難になり、さらに2019年4月から本格的に稼働した働き方改革により長時間労働がNGとされたので、限られた営業リソースでより短時間かつ効率的に営業活動を行なうことが必要になりました。

そこでITで解決できる業務はシステムに任せ、営業担当が行なうのは生身の人間でしかできない業務に特化するという流れが進み、Sales Techに注目が集まることになったといえます。

営業支援ツールのモバイル化

すでにお話しした通り1990年代からSFAやCRMのツールは存在しており、以前から導入している企業が日本にも多くありました。これらを有効活用する前提条件が営業担当による正確な数字や状況を逐一システムに入力することだったのですが、外出が多い営業担当には都度PCを開いてデータ入力するのが面倒で、どうしても情報のアップデートが遅くなってしまいました。つまりシステムは導入したけれど、有効活用に至らなかったのです。

しかしスマホやタブレットなどのモバイル端末が普及したため、外出の隙間時間でも簡単にデータ入力ができるようになりました。その結果ほぼリアルタイムに顧客情報が更新できたり、分析用のデータの蓄積が簡単になったことが、Sales Techの普及につながったと言えるでしょう。

またAI技術の進化もSalesTechの普及を後押ししています。過去のデータに基づいた分析予測がより正確に行えることで、迅速に成果を上げるためにどんな活動をしたらよいか、想定しやすくなったのは言うまでもありません。

グローバルで通用しない日本の営業スタイル

グローバルで通用しない日本の営業スタイル

今や営業先や競合先が海外グローバル企業であることも珍しくありません。グローバル企業の営業担当は必要不可欠な自社製品の知識を得て、提案力、顧客分析力、競合の情報分析力そして交渉力といったプロフェッショナルな営業スキルを習得しています。さらに顧客先で利用する営業資料もSalesTech のツールを使って企業一元管理でリアルタイムに更新されていることが多いのです。

外資系企業の日本法人に所属する営業担当もまた、世界標準の生産性の高い営業スキルを身につけています。日本企業の人海戦術に対して外資系企業は少ない人数で、個々が最大限に戦略性を発揮することでコンペに勝利していくのです。

日本国内でならまだ人海戦術が功を奏す場合もありますが、海外でコンペになったら日本国内同様のリソース確保はまず不可能。

企業のグローバル化を考えるならば、従来型の営業担当の資質とは全く違う、少数でも海外で存分に営業活動ができるスキルを会得しなければ、勝ち目はありません。

グローバルで勝つために

グローバルで通用する営業活動は語学力だけでなく、今まで日本で主流であった製品紹介・提案型とは違うスタイルを習得する必要があることが明らかです。SalesTechを取り組むことで誰でも新たなスキルが、いつでもどこでも効率的に身につけることができ、リアルタイムでの営業進捗状況も共有できるようになれば、社内の風通しがよくなり営業のみならず全社的に仕事に対するモチベーションが向上することが実現すると考えられます。

アメリカの営業職の位置付け

ここでアメリカの現況も押さえておきましょう。日本企業の営業職は総合職とされるので、途中で人事や開発などに異動することも珍しくなく、また新卒の社員が営業職に割り当てられていることも少なくありませんが、アメリカの営業職は専門職と位置づけられています。つまり転職するときも他の職種に変わることがまずないということです。

給料は完全歩合制になっていることが多く、日本円に換算すると年俸2000万円を超える人もざらにいます。しかもアメリカではインサイドセールスが営業の主流となりつつあるため、客先に行って対面営業を行うことがもはや必須ではありません。もちろん厳しい成果主義があり、成果を出せる人だけが残ることになりますが、実はこの方法がより営業の生産性を高めることにつながっているのです。

営業は十分な成果を出すためにどうすれば良いのかを考え、企業は優秀な営業に会社に残ってもらうにはどうすれば良いのか検討します。その結果営業はより生産性高く働き、企業は多額の報酬に見合った収益を得られるという仕組みです。

SalesTechを支援するツール

企業の資金調達状況や業界レポートを提供していることで知られるCB Insightsが、SalesTechのカオスマップを公開しており、すでに多くの企業がSalesTechに参入を明らかにしています。

このカオスマップによればSalesTechには大きく分けて次の7つのカテゴリーがあり、各カテゴリーには支援するツール群があることを示しているのです。

1、セールスイネーブルメントとアクセラレーション

このカテゴリーには営業活動を加速させるツールが当てはまります。具体的にはMAやCRMなど、営業活動における多様な業務をデータ化し、効率的な活動を支援をするものです。

セールスイネーブルメントは営業活動の改善に必要な要素をトータルに考えようとするもので、トレーニングやシステム、コーチングといった施策の内容を一元管理することで営業活動の効率化し最適化を図るもの。セールスイネーブルメントは日本でも特に注目が集まっています。

2、ゼネラル CRM

営業活動を商談、顧客ごとに追跡できる顧客管理 (CRM)がここに分類されています。外出の多い営業担当にとって、どこからでも簡単に確認できるCRMの存在は必須です。 モバイル化が進む現代のビジネス環境のなかで、クラウドツールを中心に成長し続けています。

3、カスタマーエクスペリエンス (CX)

顧客が商品やサービスを使用して得られる満足感や効果といった、心理的または感覚的な付加価値の最大化して売り上げをさらに伸ばすのがCXですので、サイトに訪問したユーザーの訪問回数や流入経路に合わせて適切なポップアップを配信するWeb接客ツールや、チャットツールなどがこの領域のツールです。

4、コンタクトとコミュニケーション

顧客との直接のコンタクトの質向上を図る領域ですので、コールセンターのシステムや顧客からの電話内容を分析してオペレーターに最適な回答方法を進言するツールが代表的でしょう。

5、ピープルデベロップメント(人材開発)とコーチング

営業担当の教育やモチベーションの向上を図る領域で、ツールとしては教育資料の動画プラットフォームや、オンラインでロールプレイングを実施し評価も出来るものがあります。

6、インテリジェンスとアナリティクス

営業活動に必要なデータ活用を最大化するための領域です。GUIで簡単にデータ分析が出来るツールや、営業担当の商談中の会話の分析ツールなどがこの領域に属します。

7、カスタマーサポート

この領域では顧客のサービス継続率を高め、サポートの質を最適化を実現します。問い合わせサイトの構築や管理を簡単に行えるツールや、ヘルプデスク最適化のためのツールがあります。

今後はどうなる

日本の営業活動がITの活用により個人の経験や勘に頼らず、また論理的に行えるものに変わりつつありることがわかりました。

従来の仕事の仕方に固執せず、柔軟に新しい技術を取り入れていく姿勢がこれからの営業担当には必要不可欠です。 必要トレーニングのタイムリーな受講や、リアルな情報共有のためにSalesTechが今後も広まるでしょう。

管理職、経営者には、数字を見てスピーディに判断できる能力がより求められるでしょう。SalesTechにより各営業担当の状況や最新顧客データがほぼリアルタイム共有されるので、その情報をもとに、チームや事業部、ひいては会社全体で最大の成果を出せるよう、日々戦略を見直していくことが企業存続の要となるのです。引き続きウォッチしていきましょう。

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