健康寿命を超える人生100年にバリューはあるか(20年ごとに寿命は3年伸びている)

健康寿命を超える人生100年にバリューはあるか(20年ごとに寿命は3年伸びている)

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長寿国日本の女性の平均寿命は世界第2位、そして男性は第3位です。2017年に日本における90歳以上の高齢者が初めて200万人を超え、今も高齢者の割合が増え続けています。

しかし全ての人が健康であり続けながら長寿を全うできるわけではありません。自立して幸せに生き続けるために何をするべきでしょうか。

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人生100年といわれるけれど

人生100年時代は人生の過ごし方が変わります。これまでは学校教育終了するまで15-22年、その後仕事に40年ほど従事し60歳で引退した後は余生という位置づけでしたが、100年生きるとなれば70歳まで働いたとしても、引退後の人生が30年もあるのです。引退後の人生も安心して暮らすための蓄えに加え、健康に活動ができる期間を延ばすことが人生戦略の重要ポイントといえます。

人生100年時代の政策を検討する場として、2017年に安倍首相を議長とする、人生100年時代構想会議が設置され、翌2018年まで9回にわたり議論が行われました。

以下は同会議の中間報告からの引用です。

  • ある海外の研究では、2007年に日本で生まれた子供の半数が107歳より長く生きると推計されており、日本は健康寿命が世界一の長寿社会を迎えています。
  • 100年という長い期間をより充実したものにするためには、幼児教育から小・中・高等学校教育、大学教育、更には社会人の学び直しに至るまで、生涯にわたる学習が重要です。
  • 人生100年時代に、高齢者から若者まで、全ての国民に活躍の場があり、全ての人が元気に活躍し続けられる社会、安心して暮らすことのできる社会をつくることが重要な課題となっています。

人生100年時代で最大の壁となりうる少子高齢化に立ち向かうため、新しい経済政策パッケージも閣議決定されています。

しかし現実的な人生100年時代の到来はまだ先のことのようです。人生100年時代構想会議が設置された2017年の平均寿命は男性81.09歳、女性87.26歳。現在も100歳には到達していません。しかも心身共に自立し日常生活が支障なくできる期間を指す健康寿命は男性72.14歳、女性74.79歳。つまり100歳まで生きられても、日常生活に支障がなく生きる可能性が小さいのは周知のことです。

人生100年時代と騒いでいるのは年金制度に対する国民の不安感をあおり、金融商品に投資させたいだけではないのかと疑いたくなるのも仕方ありません。

健康寿命とは

健康寿命とは介護や人の助けを借りずに起床、衣類の着脱、食事、入浴など普段の生活が自分1人でできて、自立して健康な日常が送れる期間のことをいいます。

WHO(World Health Organization=世界保健機関)が2000年に健康寿命の概念を提唱したのち、厚労省でも「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」を健康寿命と定義づけました。

現在日本では

  • 日常生活に制限のない期間の平均
  • 自分が健康であると自覚している期間の平均

の2つから健康寿命を算出するのが一般的です。

平均寿命-健康寿命=不健康寿命

平均寿命と健康寿命との差は、日常生活に制限のある「不健康寿命」を意味します。厚労省が2018年に発表した2016年での調査結果での不健康寿命は、男性8.95年、女性12.3年であり、これは寝たきりや認知症になる期間を示しています。

健康寿命を延ばさないことには、長寿の記録更新をしたところで健康面の不安だけでなく、医療費や介護費の増加が家計を圧迫し、本人だけでなく、家族をも苦しめることになります。今も認知症の介護に疲れた夫が妻を殺すなどの悲しいニュースが後を絶ちません。

健康寿命は延びるはず

健康寿命は延びるはず

厚労省が公表した健康寿命に関する延伸目標や課題などを検討する「健康寿命のあり方に関する有識者研究会」の報告書によれば、日本には健康寿命を2040年までに3年以上延伸させる余力があるとのことで、具体的数値では男性75.14年以上、女性77.79年以上ということなのです。

もっとも20余年後に3年程度の延びが見込まれるといわれても、なんともコメントが難しいですが、現在でも100歳を超えて現役で仕事をしている方も存在するので、何か自分で心がけることで健康寿命を延ばすこともできるに違いありません。

適度な運動は最大の自衛策

運動を続けることにより認知機能の低下や、認知症を予防できる可能性があることは多くの研究で確認されていますが、具体的にどんな運動をどのくらいの時間行えば効果的なのかは、まだ明らかではありません。

アメリカの運動ガイドラインでは、ウォーキングなどの中強度以上の運動を週に150分間行うことを推奨していましたが、ボストン大学医科大学院の研究チームが、アメリカで1940年代から行われている心筋梗塞や脳卒中の予防策を調べるための研究である「フラミンガム心臓研究(Framingham Heart Study)」のデータから、2,354人の平均年齢53歳の男女のデータを解析したところ、ウォーキングなどの運動に費やす時間が1日に1時間増すごとに、脳の老化は1.1年遅くなることが明らかになりました。

さらには運動ガイドラインで推奨されている基準を満たしていない運動であっても脳に良い効果を与えることがわかったのです。もちろん若いうちから運動を始めるのはベターですが、何歳から始めてもそれ相応の効果は期待できるようです。

そして運動の量は多いほど良く、1日に1万歩以上歩く人では、1日に5,000歩未満の人に比べ、脳の容積が大きいことが示されました。もちろん頑張りすぎて疲労骨折しては元も子もないですが、運動すると脳にいいなんて、これはもはや目から鱗レベルの情報ですよね。

健康寿命を延ばすためには、次のことも心がけましょう:

  • 適切な食生活:主食、主菜、副菜をバランスよくとり、薄味を旨とし、心して野菜を多めにとることです。果物を適度にとることも有用。お酒は適度に摂取し、休肝日を設けましょう。
  • 十分な睡眠:規則正しい生活を心がけることで、体内時計が整いホルモン分泌や生理的な活動を調整して良い睡眠をとることができるものです。
  • 禁煙:喫煙は百害あって一利なしです。気分転換には他の方法を見つけましょう。
  • 歯・口腔の健康維持:歯周病と全身の病気との関連が報告されていますので、毎日の歯磨きと定期的なデンタルヘルスチェックを。

ヘルステックの拡充は必須

ヘルステックの拡充は必須

個々人の努力と人海戦術ソリューションだけで人生100年時代に幸せは訪れません。当然のことながらそれに対応する新たな社会システムが必要です。ヘルスケアの領域でもAIやIoT、VR(バーチャルリアリティ)などの先端技術を活用したサービスが数多く誕生しており、これらはヘルステック (HealthTech) と呼ばれています。健康寿命を延ばすためにもIT技術でサポートできるところはどんどん活用すべきですね。

すでに実装しているヘルステックの例を挙げてみましょう:

  • ウェラブル機器を活用した健康管理
  • 生涯型電子カルテサービス(Personal Health Record=PHR)
  • オンライン診療(遠隔医療)
  • オンラインでの保健指導やモニタリング
  • 電子健康記録 (Electronic Health Record=EHR)
  • AI創薬
  • デジタルメディスン(服薬状況をIoTデバイスで確認するしくみなど)
  • 介護ロボットや見守りセンサー
  • AIによるケアプランや転倒防止システム

ヘルステック市場は急速に拡大しており、ヘルスケア分野のIoT市場規模は、2016年から2021年に向けて年平均成長率26.2%で成長するとの見通しがあるようです。

30年で2000万円足りなくなる

老後に向けた資産形成をめぐり「30年間で2000万円が必要」と試算した金融庁審議会のワーキンググループの報告書が、不認可という異例の扱いとなったのは記憶に新しいですよね。確かに「年金生活としてを30年暮らしたら、合計で2000万円足りなくなる」という報告を受け入れてしまったら、日本の年金制度の崩壊を政府が認めたと国民にとられても仕方ありませんよね。

ベビーブームで新しい働き手がどんどん生まれた昭和であれば問題がなかったのでしょうが、時代は平成、令和と移り、少子高齢化となった現代社会で、昭和と年金制度が同じでは歪みが起こって当然です。

「世間に著しい不安や誤解を与えている」と金融相に言われても、年金をしっかり納めている国民でも今や年金だけでは生きていけないのが現状でしょうし、あるいは年金を支える若い働き手が年金制度に絶望していることも、政府が責任を持って解決策を講じない限り、国を信用せよといわれても無理な相談です。

ここで発想の転換を。まもなく定年退職、再雇用という言葉が死語となって、幾つになっても同じ条件で働き続けられる社会に必ず変わりますから、元気なうちは健康維持のためにも働き続けたいという人にとっては悪いことばかりではないかもしれません。

明るい未来のために

誰もが年をとります。そして年を重ねることに、明日が無事来るのか、自分が自分のままでいられるのかと不安になります。

幸せな人の周りには、幸せな人がいる場合が多いのは偶然ではありません。驚くなかれ幸せは伝播し広まっていくことが学術研究からも明らかになっているのです。加えて幸せな人は、人との様々なつながりを維持できるという研究結果も。

健康で自立でき、いくつになっても夢と希望を持っていろいろな人と意見交換しながら、毎日ワクワクして過ごせる幸せがある国といわれるような、超高齢者大国日本でありたいものです。

日本は世界に先駆けて、誰も経験したことのない人生100年時代にいち早く突入しようとしています。もちろん解決すべきことはたくさんあり、お金のこと、健康維持など不安要素は多いですが、その一方で100歳にしか見ることができない景色がきっとあるのです。

元気でそれを眺める自分を想像するのもちょっと楽しみではありませんか。

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