早くダークソーシャルの解析を|見えないアクセスをマーケティングする
ダークソーシャルに聞き覚えはありますか。ソーシャルといえばFacebookやTwitterなどのソーシャルメディアのことをまずは連想しますよね。「ダークソーシャル」はGoogle Analyticsなどのアクセス解析ツールでソーシャルメディアとみなされないソーシャルからのトラフィックのことを指します。「ダークトラフィック」ともいわれます。
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昨今ユーザーのFacebookなどソーシャルメディア離れが進み、ソーシャルメディアを使ったコンテンツシェアの割合が減少傾向です。ユーザーが他人とコンテンツの共有をやめてしまったということではなく、共有方法に変化が生まれたといえます。
ダークソーシャルは今やモバイルでのURLシェアのうちの大半を占めており、ユーザーの行動を解明する上で無視できない存在となりました。今回はダークソーシャルを理解し、どう活用するか考えたいと思います。
目次
ダークソーシャルとは
ダークソーシャルとはWebサイトのアクセスの中で、参照元(リファラー)が不明なもので、リファラー情報を引き継がないツールを経由したアクセスのこと。言い換えるとデータなどでは可視化されない、見えないソーシャルのことです。
日本人にお馴染みのLINEではAPIが提供されておらず、解析ツールで計測ができないので、ダークソーシャルの仲間といえます。
ダイレクトに分類されるが
一般的に知られたアクセス解析ツールでは、リファラーが不明なアクセス経路をダイレクトと呼ぶことが多い。ダイレクトに分類される経路といえば、ブックマークやURLを直接入力することだと考えられていました。
しかしWebサイトの規模が拡大・複雑化し、さらにモバイルツールが急速な進化を遂げ爆発的に普及したため、ユーザーの流入経路が急速に多様化しました。その結果ソーシャルメディアとみなせないものは全て、ダイレクトとして分類されることになったのです。今ではダイレクトの多くをダークソーシャルが占めると考えるのが自然でしょう。
次のような経路からのトラフィックは、ダークソーシャルとみなされ、ダイレクトに分類される可能性が高いと考えられます。
モバイルアプリのアクセス
多くのアプリでみられるが、Webサイトを別のブラウザで開くか、スマホのブラウザに、新規ウィンドウでリンクを開くように強制するもの。
eメール転送からのアクセス
自分にとって興味があるコンテンツを含むeメールが友人から転送され、そのコンテンツをクリックしたことで、Webサイトにジャンプするトラフィック。
メッセージアプリ、チャットプラットフォームからのアクセス
Snapchat、Slack、Lineなどのダイレクトメッセージやプライベートチャット添付されたURLをクリックした場合。
マーケター泣かせのダークソーシャル
すでにお話した通り、ダークソーシャルはアクセス解析ツールで可視化することができませんし、ツールごとの利用頻度やが経路も確かめることはできません。そのためマーケターにとって、プロモーションしにくい分野といえます。
見えない以上管理することも難しいのですが、見えないからデータが存在していないということではないのです。ダークソーシャルでのコンテンツシェアが増えている現在、マーケターは戦略を立て、ダークソーシャルに対する施策を積極的に行なっていくべきでしょう。
特にB2Bビジネスの範疇では、ダークソーシャル以外にもデータでは可視化できない範囲が広がっています。例えばF2Fでの打ち合わせやランチ中の会話なども、抑えておくべき情報の流通経路なのです。
データで把握できるのはほんの一部です。ですからマーケターはデータのその先にある、人のリアルな行動や、その心理状態を想像する力も必要となるのです。時には心理学者のような、あるは分析官のような多様性がマーケターに求められます。
ダークソーシャルを分析する必要性
現在ダークソーシャルはWebサイト全体の80%ほどを占めています。ダークソーシャルを通じたコミュニケーションの増加で、プロモーションの効果を測定が困難になるのは、企業やブランドにとって脅威です。
しかし困難だからといって、諦めてはいけません。自社のWebサイトのどくらいの割合のトラフィックが、ダークソーシャルから流入しているのかを知り、またそれらをできる限り分析して、次のマーケティング活動に生かすことが大切です。
効果は計り知れません。ダークソーシャル経由の多数のコミュニケーションが、爆発的に広まり、自動的にコンテンツを広めてくれる可能性が大きいといえます。
ダークソーシャルの分析方法
ではダークソーシャルのトラフィックの分析はどのように行うべきでしょうか。具体的な方法を共有しましょう。
短縮リンクの利用
SNSなどで一般的に使用されている、URL短縮サービスを利用します。ツールによってはクリック数や、クリックされた時間帯、ユーザーの属性(住んでいる国など)が追跡できます。
ただし短縮サービス提供先がサービスを終了した場合には、リンク切れが発生してしまうので、注意が必要です。
UTMパラメータを利用する
広告やコンテンツのリンク先になるURLの末尾に、UTMパラメータという文字列を付与することで、どのメディアから流入したトラフィックかを識別することができます。
UTMパラメータには次の種類があります:
- utm_source(必須): ページの流入元の名称になる部分
- utm_medium(必須): キャンペーンメディアを指定する部分
- utm_campaign(必須): キャンペーン名やプロモションコードなどを設定
- utm_term(任意) : 検索キーワードを設定
- utm_content (任意):複数の広告がある場合に広告を区別する時に設定
使用例:顧客にDMを2020年2月に配布する場合
WebサイトのURL/?utm_source=202002_dm&utm_medium=email&utm_campaign=202002_promotion
• utm_source: 202002_dm
• utm_medium: email
• utm_campaign: 202002_promo(キャンペーン名)
なおUTMパラメータは、Google Analytics内の、Campaign URL Builderで作成できます。
ソーシャルメディア管理プラットフォームを利用する
ソーシャルメディア管理プラットフォームの中には、ハッシュタグ、アカウント、キーワードの追跡が可能なものもあります。さらに利用しているソーシャルメディアの数が多い場合には、管理作業の手間が減らせます。
ダークソーシャルを完全に追跡することは難しいですが、以上の3つの方法のうまく組み合わせれば、ある程度分析することができるのです。
ダークソーシャルとインフルエンサーマーケティングのタッグ
ユーザーがパーソナルメッセージ上で連絡を取り合っている相手は、友人や家族、会社の同僚など。自分が信頼できる人から送られてきたリンクであれば、安心してクリックするものです。マーケターはこの点に意識して、インフルエンサーと一緒に戦略を立てるのがよいでしょう。
インフルエンサーにはそれぞれ固定ファン(フォロワー)がおり、インフルエンサーとフォロワーの間には信頼関係が存在します。フォロワーはインフルエンサーのつぶやきに常に耳を傾け、インフルエンサーは商品の購入判断に際し、フォロワーに影響を与えるのです。LineやFacebook Messangerなどのプライベートメッセージを通して、インフルエンサーからフォロワーにリンクを送ることで、企業では高いクリック率が期待できます。
大切なのは、パーソナルで密な関係性です。ソーシャルで知り合いと交流する場合、多くの人は完全オープンなソーシャルメディアより、鍵をつけたり、公開範囲を制限することを好むはず。
クローズドで特別なつながりの場を作るには、必ずしもフォロワーの多い有名なインフルエンサーに頼る必要はないので、フォロワーとのエンゲージメント率が高いインフルエンサーを探します。加えてマイクロインフルエンサーとのコラボレーションも有効ですね。
インフルエンサー事例
ダークソーシャルで、インフルエンサーマーケティング活用した、Adidasの事例を紹介したいと思います。
Adidasでは2015年から、WhatsAPPなどダークソーシャルなプラットフォームを使って自社のPRを行うといった、マイクロインフルエンサーを重視した小規模なネットワークを開始していましたが、まもなくTango Squad キャンペーンが大ブレークしました。
Tango Squadはヨーロッパ主要都市に住む、16~19歳のサッカーファンと、コンテンツクリエイターのグループ。彼らの目的は次の世代のサッカー系インフルエンサーを生み出し、コミュニティを築くことで、商品を売ることではありませんでした。無論ブランド価値が醸成できさえすれば、顧客はあとからついてくると想定されていましたが。
Tango Squadキャンペーンでは、まずTango Squard FCの番組制作が始まりました。Tango Suard FCとはAdidas お抱えのマイクロインフルエンサー集団の中で、トップレベルのストリートサッカー選手を集めた同社初のソーシャルメディア発のサッカーチーム。番組の内容は彼らの足跡を追うものです。
Adidasのマーケターはどの選手が注目されているか、どのサッカーテクニックが繰り返し見られているかをYouTubeのデータから確認し、重視するシーンを決定。データは各シーズンの開始、中間地点そして各話の終了後に見直され、結果はその都度制作チームと共有され、その後の番組の方向性を決めていきました。
番組はYouTube、Facebook, Instaram, Twitterで配信し、1~2シーズンの合計再生数で4,100万回を記録。そのうちYouTubeのユニーク視聴者数は1,700万で、視聴時間にして1億分に相当したのです。その相乗効果から、Adidasの他のYouTubeチャンネルの登録数も増加しました。
Tango Squadキャンペーンはすでに3年以上も継続し、全世界にフォロワーを獲得。ダークソーシャルをより有効に利用するため、キャンペーン用のアプリも開発され、Tango Squadのコンテンツクリエイターはこれを用い、フォロワーとの独自のクローズドコミュニティを育てています。
Tango Squadが、Adidasのインフルエンサーマーケティングを再構築したといっても過言ではありません。従来のインフルエンサーマーケティング手法に、F2Fのコミュニケーションが加わることで、ブランドのファンを増やすツールが出来上がったのです。
Tango Squadに関わったマイクロインフルエンサー集団の中には、ローカルなマイクロインフルエンサーから、Adidasブランドを伝えるグローバルレベルのブランドアンバサダーに進化し、SNSのトップスターに上り詰めた人も少なくありません。
現在Adidasでは、デジタル広告の配分を増やしており、今後はインフルエンサーが、広告戦略でなおも中核的な役割を担うようになりそうです。
ダークソーシャルをもっと活用しよう
分析が困難なダークソーシャルは、コンテンツマーケティングに携わる人間にとって、嫌な存在でしたが、スムーズに潜在顧客にリーチするためには、ダークソーシャルのアクセスを出来る限り分析し、マーケティング活動に活用することが、今後のマーケターの姿でしょう。
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