葬儀のニューノーマル 「リモート葬儀」実はもう始まっていた

葬儀のニューノーマル 「リモート葬儀」実はもう始まっていた

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新型コロナウィルス感染拡大は、我々の常識や慣習の多くを一気に変えてしまいました。葬儀も例外ではありません。そもそも葬儀は宗教的な儀式としてよりは故人とのお別れを認識する区切りとして執り行われる意味もあるため、葬儀や告別式に参列できないと、亡くなったことをうまく自身で処理できない人もいるようです。

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そのため全国の葬儀場では、日本政府が緊急事態宣言を発令してからは三密を避け、さらには高齢者・妊婦・遠方からの移動を伴う参列者の健康と感染予防のために葬儀をオンライン形式で行う「リモート葬儀」の導入が目立って増えています。

コロナ禍の今、フューネラル業界(葬儀業界)もパラダイムシフトを迎えたといえるでしょう。今回はインターネットテクノロジーを活用した「リモート葬儀」について開設します。

リモート葬儀とは

リモート葬儀とは

ます「リモート葬儀」の定義を確認しましょう。リモート葬儀とは、インターネットを使い、葬儀のライブ動画の閲覧、参列はもちろん、香典、供花、供物、返礼品の受け渡しなどがインターネットやアプリで完結できる、オンライン葬儀形態を指します。

遠隔地にいる家族や親族・親戚、あるいは故人と親交のあった方に、PCやスマホ・タブレットなどの携帯端末から、インターネット経由で葬儀に参列してもらうことができるもの。

リモート葬儀の歴史

リモート葬儀が始まったもともとの理由は、海外に住んでいて、急な葬儀のためにすぐ移動ができない方や、介護施設に入居している高齢者など葬儀に参列するのが難しい方のために、SkypeやZoom、Teams、LINEなどのビデオ通話アプリを使って、葬儀の様子をライブ映像で配信し、実際に参列しているのと変わらないバーチャルな場を提供するためでした。

実は仏教界でもコロナ禍以前から、リモート葬儀が始められていました。それは若手僧侶が中心となり、若者や仏教に馴染みがない人にも仏教を知ってもらおうと、さまざまな仏事をSNSで中継する、あるいはYouTubeで配信する試み。彼らの努力も虚しく、残念ながら、今まで普及することはありませんでした。

誰でも背筋が伸びてしまう静寂な寺院の雰囲気や、葬儀の臨場感、あるいは参列した後に得られる達成感のような気持ちと比べてリモート葬儀は、「異なもの」と捉えられてしまっていたからです。

コロナ禍で家族葬がデフォルト化→リモート葬儀の受け入れに一役

葬儀スタイルのニューノーマル :リモート葬儀とは

新型コロナウィルス感染者が増え、その犠牲となって亡くなった方々の葬儀を受け入れるか否かが、葬儀会社にとっての早急に解決すべく課題となりました。感染リスクを考慮すれば、現場スタッフは遺体の引き取りをも躊躇してしまうし、通常の葬儀を喪主から依頼されても、三密以外の何者でもなく開催不可能。しかし故人、遺族のことを考えたら、どんな形であれ葬儀を行わないわけにはいきません。

そんな中で、2020年5月に全国葬祭業協同組合および、一般社団法人全日本冠婚葬祭互助協会では、葬儀業「新型コロナウィルス感染拡大防止ガイドライン」を定め、葬儀施行のポイント、遺体の引き取りから火葬後までの流れを示したのです。

会場ではマスク着用、ソーシャルディスタンスの遵守、アルコール消毒薬やティッシュペーパーの常備などが求められ、家族と葬儀会社スタッフの立ち合いも最小限で行なうことが推奨に。

参列者は最小限という観点から、家族葬を選ぶ喪主が増えましたが、遠くに住む親族や故人に近しかった方の、最後のお別れを一緒にしたいというニーズが高まったため、家族葬に合わせリモート葬儀サービスを活用することが広まったのです。

僧侶の苦悩がリモート葬儀を後押し

コロナ禍はまた、葬儀の対応を含む緊急ガイドラインの作成を、日本の各仏教教団に課すことになりましたが、そこには僧侶の苦悩がわかる内容も。例をあげてみましょう:

  • 棺の近くの僧侶は、積極的にマスクや手袋をすることができないのに、僧侶側の対策が確立されていない(曹洞宗)
  • コロナ禍においては、浄土宗としての葬儀式の基本を実現できれば、葬儀式執行の変更は許容できる(浄土宗)

僧侶がマスクをして読経しても、葬儀の内容や質が変わらないことは言うまでもありません。しかし故人に対する尊厳を大事にし、遺族に対する深い慈しみから、あえてマスクを外す僧侶が多いのが現状です。感染予防のため僧侶は常にマスクや手袋をするべきか、あるいは宗教者はコロナ禍でも動じず、平時どおりに儀式を行うのがよいのか、どちらが正解かを見出すことができる人はいません。

そんな現場で、救いとなったのもリモート葬儀の台頭によるものなのです。僧侶の無事と健康を守るためにも、リモート葬儀は有効といえます。

リモート葬儀の方法

現状では全ての葬儀会社が、リモート葬儀に対応しているわけではありません。リモート葬儀を検討したい場合には、まずは依頼する葬儀会社で、リモート葬儀サービスも提供しているかどうかの確認をします。リモート葬儀ができることがわかったら、次に通常葬儀会社で、どのようなオンラインツールを使っているかを確認します。Zoomが一般的と考えられますが、もし参列者に使い慣れている別のツールがあるなら、対応可能かどうか使えるかも確認しましょう。

リモート葬儀サービスを提供している葬儀会社では、PCやスマホの画面で資料を見ながらの、リモートによる事前相談を受け付けているところも多いため、対面相談に不安を感じる遺族の間で、こちらも急速に活用頻度が増えています。リモート対応では契約書類の作成もメール経由で行えるので安心です。

リモート葬儀の日程の連絡は、メールを使って喪主または葬儀会社から、参列者に対して行います。連絡をもらった人が、出欠の連絡をオンラインで行えば、参加者リストも自動的にできてしまう仕組みをほとんどのリモート葬儀サービスでは持っています。

また弔電や香典のサービスを提供している場合も多いので、参列者は必要に応じて利用するとよいでしょう。

リモート葬儀の相場

斎場で行う家族葬での葬儀と、リモート葬儀を合わせて行う場合の費用目安は、一般的に100万円前後です。もちろん宗派によってはこれより高額になることもありますが、一般的な葬儀だと190万円ほどなので、安価に抑えられることがわかります。

家族葬費用の内訳は次がメインです:

  • 葬儀一式の費用
  • 飲食の費用
  • お布施(読経代・戒名料・御車代・御膳料)
  • 返礼品費用

これにリモート葬儀対応費用がプラスされますが無料であることが多く、有料でも1~3万円というところ。リモート葬儀対応は無料オプションの扱いとしている葬儀会社が少なくないのがわかりますね。

追記:リモート法要も知られてきた

リモート葬儀と同じく、コロナ禍のため法要ができないでいる方のために、インターネットを介して、僧侶に読経をしてもらえるオンライン法要というサービスも知られてきました。

四十九日法要、一周忌法要、三回忌法要、七回忌法要、十三回忌法要などの様々な法要の場で利用ができ、自分の宗教、宗派を選択できるものです。リモートであれば、身内の方も自宅から安心して参列してもらえますね。

リモート葬儀のメリット

リモート葬儀を行うメリットを確認してみましょう。

  • 場所の制限がない、環境に左右されない:インターネット環境があれば、どこからでも参列可能です。
  • 喪主の負担軽減:参加者リストや、連絡通信、香典返礼品など事務的なことは、オンラインで完結できます。
  • 参列者の負担軽減:通常の葬儀へ参列するのと比べて、自分の行動が果たして慣習に促しているかなどの、心配事や気配りが大きく減るといえるでしょう。

オンライン葬儀のメリット
1.インターネット環境があれば、オンライン葬儀に参列できる
2. 実際の葬儀の進行と同じタイミングで、オンライン経由で弔問できる
3. オンライン葬儀にはリラックスして参列できる
参考:オンライン葬儀:ニューノーマル 時代における葬儀の新たな形 _ 葬儀のデスク

デメリットがあることも想定内

残念ながらリモート葬儀には、次のようなデメリットがあることも、理解すべきです。

  • 条件に合ったインターネット環境がなければ参列不可:高齢者家庭ではPCの保有率が低く、スマホどころかガラケーを持たないお宅もあります。インターネット環境があっても、回線スピードが遅いと、葬儀の途中でライブ配信が切れる、画面が固まって動かなくなることもあるので、このような状況でのリモート葬儀の参列は無理でしょう。
  • プライバシーの問題:セキュリティ確保がされていないと、リモート葬儀のライブ配信が垂れ流しになってしまうことも。
  • 目的を見間違える:リモート葬儀は簡単だから、安いから、手間がかからないからという理由で選ぶと、葬儀が軽々しいものになり、故人、参列者に失礼なことになります。参列者からの、リモート葬儀への理解を得るのも難しくなるでしょう。

リモート葬儀における注意点

リモート葬儀は、通常の葬儀と同様の進め方になりますが、100%代替できるものではありません。例えばライブ配信を含め、撮影の許可がおりない火葬場での火葬炉前でのお別れや、遺骨の収骨の様子を配信することは不可能です。リモート葬儀ではお通夜、告別式など式場内に限るライブ配信になることを、参列者に対し周知しておく必要があります。

リモート葬儀に参列する場合のガイドライン

リモート葬儀に参列する場合の必要なことも確認しましょう。葬儀会社が弔電、香典の送付までカバーする葬儀サービスを用意している場合には、それを利用するのもよい方法です。

服装

リモート葬儀の参列なので、参列者側は映らないという理由から、どんな服装でもいいという考えはNGです。見えなくても喪服または、喪服に準じた服装での参加が、失礼がないと考えられます。

弔電

一般的な葬儀と同じです。故人の宗教を確認し、忌み言葉を使わないなどのマナーを守って文章を作成し、送るようにしましょう。

香典

リモート葬儀だからといって、香典については一般的な考えと変わりません。リモート葬儀に参列するなら、喪主に香典を送るのが礼儀です。喪主から香典辞退があった場合には、その意向に従いますが、代わりに供花、供物を送ることができるかも合わせて確認し、香典の代わりに送るのもよいでしょう。

香典相場

一般的な相場をご紹介します。これはどんな葬儀形式でも同じです。

  • 親、兄弟姉妹、親族など:1~10万円(関係性が深ければ金額が増える)
  • 友人・知人およびその家族、恩師など:3千円~1万円(あまり高い金額にしない)

リモート葬儀まとめ

リモート葬儀まとめ

リモート葬儀はウィズコロナの今、急速に広まってきた形式で、オンラインベースでも故人を思う気持ちを大切にする文化ができつつあるという現れと考えられます。

生前の故人にとても近しい存在だが、遠いところに住んでいるためリアル葬儀に参列が難しいという方にも参列してほしい、介護施設にいる親戚の高齢者にも、故人のお見送りをお願いしたい、そして三密を避けるといった具体的な目的があるから、リモート葬儀を選択することは忘れないで下さい。

リモート葬儀であってもなくても、大切なことは故人を偲ぶ気持ちです。故人を送り出す手段の一つとしてのリモート葬儀です。オンラインで完結するからといって、短パンTシャツスタイルで参列するなど、礼儀を欠くことがないようにしたいですね。

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