高級品/ブランドリユースのマーケット再編成_メルカリエフェクト
昭和の高度成長期時代に「中古品」というと他人の使い古しのイメージが強く、あるいは質屋の質流品など、購入した後なんとなく出所を隠しながら使うネガティブなものでした。しかし最近ではリユース品(中古品)の価値が上がっているのです。
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インターネットの普及でフリマサイトが知れ渡り、その一覧性とプレゼンスの高さが、リユースの流通性を一変させました。以前はバザーやリアルなフリーマーケットやリアル店舗で、目当てのリユース品を見つけるのは極めて困難でしたが、フリマサイトならブランドや価格帯、保証書の有無や、汚れの度合いまで確認しながら探せようになったのです。
それまでは価格が付かなかった品にも、場合によっては価値が認められるようになりました。例えばブランドショップの紙袋や、ブランドジュエリーの箱、ユーザーの手作り品一点ものなど。ちょっと見ではがらくたにしか見えないものでも、ブレークした瞬間高値がつき、売り切れになることも。
スマホで簡単に操作できるフリマアプリがブレークしたことで、パソコンを持たなくても気軽にフリマを利用できるようになったので、リユース品はすっかり一般的になり新品同様に流通し始めたのです。
現在リユース品市場での、顧客や商品の争奪戦がどんどん激しくなってきました。フリマアプリの出店者は一般消費者のお小遣い稼ぎがメインですが、そこからノウハウを得て物販ビジネスを起業する人も増え続けています。大手のフリマアプリでは1日に約100万点が出品され、リユース品を取り巻く環境は劇的に変わっているのです。
リユース業者では高値で再販売することが前提となり、未使用の実質新品を含めた、リユース市場がさらに広がることが考えられます。今回は高級品リユース市場についてフォーカスしたいと思います。
目次
メルカリ・エフェクト
メルカリは2018年7月にフリマアプリ利用者1,032名を対象に実施した「フリマアプリ利用者における消費行動の変化」に関する実態・意識調査の結果と、そこから認識できた周辺市場への経済効果を発表しました。
フリマアプリ利用者の半数以上が、売ることを前提に新品を買っており、新品であることを重視している人は3割以下で、特に20代の半数以上がリユース品に抵抗がないことが明らかになりました。フリマアプリの普及が、リユース業界の旧来秩序を揺るがしていることが、メルカリ・エフェクトといわれる現象です。
同調査によればフリマアプリの利用前後の多くの周辺サービスの利用頻度や利用金額が増加したということも明らかで、その経済効果は最大752億円に達したのも特筆すべきことでしょう。
利用頻度が増えた店舗やサービスでは、商品発送のための郵便局・コンビニや、箱や緩衝材などの包装資材を購入する100円均一ショップが上位にランクインしました。利用金額の増加という点では、意外にも家電修理店や洋服・アクセサリーの修理店などの、修理に関するサービスが大幅に増額したのです。
その結果から明らかなのは、フリマアプリのユーザーは修理すれば使えるものは、修理して出品するケースが増えているということ。自分ではもう使いたくないものでも、ちょっと直せば他の人にとっては、お宝になるということなのです。
またリペア産業はフリマアプリから恩恵を得ています。例えば大手のミスターミニットでは、フリマ出品ページに「ミスターミニットで修理済」という記載が増えたことが、一つのブランディングになっており、とくに伸長している分野は時計のリペアで、フリマアプリの登場以降は約1.5倍の規模に成長しているといいます。
リペア産業が盛り上がれば、修理技能をもった定年世代の再雇用先になるかもしれませんし、持ち込まれた商品をカスタマイズするという方向に進化する可能性もあるので、伸び代はまだありそうです。
メルカリ・エフェクトが周辺サービスにも、大きな影響を与えているのは明らかといえます。
高級品のリユースは実は狙い目
フリマサイトの急成長のため、独立系中小クラスのリサイクル店では、一気に商売が立ち行かなくなってしまい、経営破綻に追い込まれることが多くなっていきました。
リユースを手がける既存の大手各社にも危機感が走りましたが、フリマアプリの急成長にすぐにはなすすべもありませんでしたが、2019年9月からは同業者の買収が相次いで始まったのです。
彼らの再編の背中を押したのも、もちろんメルカリ・エフェクトでした。買収戦略でメルカリの影響力が弱い高級品のリユース分野で、買い取りやデジタルサービスに磨きをかけることで、生き残りをかけけた勝負に挑み始めました。
低価格帯では戦わない
フリマアプリが得意とするのは、ゲームや雑貨、子供用品など数千円の低価格帯で、ブランドバッグや宝飾品など10万円以上するような高額品の取引は少ないのです。ユーザーの立場からすれば、インターネット上でブランド品の取引は、事前に商品を手に取って確認できないため、にせ物をつかまされるリスクも大きく、気軽に手が出せません。
フリマアプリのトップランナーであるメルカリでさえ、2017年にブランド品のリユース事業を始めましたが、一年後には撤退を余儀なくされました。
その点高級品リユース大手には有利な点が。たとえリユース企業のネットサイトで商品を見つけたとしても、彼らはリアル店舗を有するため対面取引が可能な点は、顧客にとって安心材料ですし、商品の鑑定は全て専門家が行うため信頼度は高いのです。高級品リユースは、フリマアプリの攻撃を受けない領域。生き残りをかけ、リユース企業各社では買収による買い取り能力の増強や、顧客層の拡大を図る構えです。
高級品専業のリユース企業の再編成
高級品リユース分野で最大手のコメ兵は、2019年ライバルで準大手のブランドオフを買収する方針を発表。ブランドオフでは2008年から香港や台湾を中心に海外出店を積極的に進め、出店数は12店舗。北京やバンコクで展開するコメ兵の海外拠点と合わせて、海外戦略を強化できる点が大きな判断ポイントであったことが考えられます。
この買収が完了すれば高級品専業リユース分野では、コメ兵・ブランドオフ合わせた売上高は600億円超で1位、2位のSOUに倍近い差をつけることになり、3位は大黒屋という順番になります。
2位のSOUでは差別化を図り、AI技術を駆使した資産価値を見える化するアプリである、Mineyを発表。人間の主観が入らない、公平な商品の査定が24時間可能になることを謳い文句で対抗です。
総合リユース企業でも
ゲームや雑貨などの低価格帯も扱う総合リユース企業も、高額品へのシフトが鮮明になってきました。その最大手であるゲオHDでは2019年4月、高級品リユース専業のおお蔵を買収し、完全子会社とすることを発表。商材の調達力や海外展開にも強みを持つ同社を傘下に置くことで、高級品リユース事業を強化することが目的です。
リユース書籍やCD販売のブックオフも、今では高級品リユースに注力しており、同年9月に中古宝飾品のジュエリーアセットマネジャーズを傘下に収めました。ブックオフではジュエリーアセットマネージャーズの、ジュエリーのリペアやリフォームというサービスに付加価値を見出しており、ブックオフで展開する総合買取窓口等で買い取った商品にジュエリーアセットマネージャーズのサービスを付けて販売することで、新たなビジネス展開に期待しています。
以上の結果ゲオHDとブックオフが総合リユース企業において、それぞれ1位、2位という規模となりました。
メルカリ・エフェクトはリユース企業にもメリットが
フリマアプリの台頭により、リユース品への抵抗感が薄れたので、市場全体では大いに活性化しています。つまりメルカリ・エフェクトはリユース市場に刺激を与えたことは、悪いことばかりではないということ。
例えばゲオHDの19年3月期決算は売上高全体では約2,930億円と前期比2%減ったのですが、リユース事業に限れば7%増えました。高級品に特化したリユース事業で商機は大きいと、同社ではデジタル技術や海外展開を強化すると発表しています。
高級品リユースの価格に異変が
コメ兵では20年近く前の定価65万円の高級時計ロレックスの買い取りが200万円になるケースが多々あります。新品よりリユース品の方が高くなるなんて信じがたいことですが、1950年代の革パッチ付きのリーバイス501 XXが、状態がいいと100万円という価格も珍しくなかったので、古い方が高いのは今始まったことではありません。
リユース品市場の今後
全体的に一般的な日用品から高級品まで、リユース品の価値は確実に上がっています。成長著しいリユース市場ですが、これからどうなっていくのでしょうか。
政府の調査から
リユース品は長く市場とみなされておらず、統計がほとんど存在しませんでした。しかしながらリユース品市場の成長スピードを無視できなくなった経済産業省がリユース品の調査を始めたのが2017年度なので、まだ最近の話なのです。
その調査によれば2016年のインターネット経由の個人間取引(車・バイクなど除く)は、フリマアプリが3,052億円、「ヤフオク」など個人間競売が3,458 億円とのことでした。リユース品のリアル店舗の売り上げを加えたら、現在は1兆円を楽に超える市場に成長していることが明らかに。
経産省ではまた同時期の調査で、過去1年間に使わなくなった製品の価値が7兆6千億円に上ると算定していました。環境省の別の調査では、過去1年間にリユース品を売買した人は全体の2割。つまり潜在的なリユース品が家庭に多く眠っているといえます。
異業種が近づく気配
これまで高級品リユースモデルが成功していたのは、自動車業界などに限られていました。中古で十分な値段が付くから新車が売れるとメーカーは考え、ユーザーは車を資産として家計に組み込んたのです。
その考えが他の商品の購入にも当てはめられてきました。いずれ売ることを前提に新品を購入するユーザーが増え、リユース相場を確認してから新品を買う強者たちも。彼らは10万円の商品も5万円で売れるとまず考えるので、5万円で買った感覚になり、高級品の新品購入のハードルが下がっているようですので、これ幸いとばかり、リユース品を買うユーザーを新品に誘導しようとする動きも増えそうな気配です。
アマゾンジャパンではリユース品に目を付け、リユース業者にネットの売り場を提供するだけではなくリユース品の買い取りも行っていますので、ブランドのリユース品を買うとアマゾンから直送なんてことがもっと増えそう。リユース業界に異業種との参入が加速しそうな気配を感じます。
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