リーガルテックが承認フローを解決する。「まだ紙でやってるの!?」問題。

リーガルテックが承認フローを解決する。「まだ紙でやってるの!?」問題。

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「○○テック」から外れた業界はもう存在しないのではないでしょうか。よく知られたところで

●AD Tech(アドテック=広告)

●FinTech(フィンテック=金融)

●SalesTech(セールステック=営業)

●HR Tech(ヒューマンリソース=人材)

目新しいものでは

●Sport Tech (スポーテック)

●FashonTech(ファッションテック)

●Agri Tech(アグリテック=農業)

●Ed Tech(エデュケーションテック=教育)

なども。

 

既存業種や既存職種に「Tech」がついた用語の総称は XTech(クロステック)と呼ばれ、 IT技術との組み合わせでIT化が遅れている部門に「ITを持ち込み新しい価値をユーザに届けようとすること」の総称です。

さて本題に話を進めましょう。法曹界の代表とみなせる裁判所には膨大な量の情報が蓄積されていますが、そのほとんどは弁護士が裁判所に提出した、2穴パンチでヒモ綴じされた紙媒体です。つまり法務部門では紙に印刷されたものだけが正式な文書とされ、デジタル化を前提とするIT技術の支援を阻む構造がありました。

しかしITとは無縁に見えていたこの部門にも、ついにITの風が吹きました。LegalTech(リーガルテック)時代はすでに始まっているのです。

リーガルテックとは

リーガルテックとは

リーガルテックは、法(Legal) と IT (Tech)を組み合わせた単語です。今までIT技術を活用することがほとんどなく、紙が重要なツールであり続けた法律部門で、効率的な業務フローが整備されてこなかった弁護士が行う業務を始めとし、司法書士が行う登記業務、弁理士が行う特許や商標業務までを対象としています。リーガルテックはまた、業務自体のデジタル化や、IT技術による効率化の実装をも意味しています。

リーガルテックと近しい位置づけのものでは、役所など公共機関の手続きなどを支援する、行政寄りのGovTech(ガブテック)もこのところ認知されてきました。

リーガルテックの歴史

リーガルテックはXTechの中でもかなり新しく分野とされ、発祥の地はアメリカです。すでにアメリカにはリーガルテックのスタートアップが多数生まれており、アメリカ国内だけでなくグローバル展開も視野に入れて活動しています。

アメリカにおけるリーガルテックの代表格は、日本法人もある電子署名のリーディングカンパニーのDocuSign社。その創業は 2003 年ですから日本に比べたらだいぶ前にリーガルテックのビジネスが始まっていることが明らかですね。アメリカのリーガルテック市場は現在160億ドル規模と言われており、世界中で盛んに買収や投資が行われている業界といえるでしょう。

日本では

契約書を含む文書の解析という取り組みに関して言えば、日本でもかなり前から始まっていたのですが、法曹界に特化したサービスという点では、2005 年創業2014年に東証マザーズに上場した弁護士ドットコム株式会社が、日本におけるリーガルテックのフロンティアです。

そして同社の電子契約サービスである、クラウドサインがリリースされた 2015 年前後からは、リーガルテック関連サービスを生業とするスタートアップの名前を耳にすることが増えました。

スタートアップ以外でもコピー製品や印刷サービスを展開していた企業が、契約書管理サービスに進出するなど市場が拡大し、例えばコピー機で有名な株式会社リコーでは、Ricoh Contact Worlflow Serviceなどリーガルテックの複数サービスを提供しています。

リーガルテックが日本で注目されてきたわけ

リーガルテックが日本で注目されてきたわけ

まずは労働環境とIT技術という両面でまとめてみました。

労働環境

少子高齢化が急速に進む日本では、労働人口は急激に減少しているため、以前にも増して労働生産性が低い状況です。しかもグローバルにおいて日本企業の存在感が低下し、「Japan as No. 1」はもう遠い過去のこと。

この数年で労働環境が変わりましたよね。高度成長期のモーレツ世代には当然であった、昼夜問わず、休日返上も厭わない働き方が否定されるようになり、ついに日本政府は「働き方改革」を提言するように。このことが男女問わず育児休暇取得や副業の奨励など、社会全体で新しい働き方を基本とした、新しい社会をデザインする動きにもつながっています。

少ない人数で効率的に業務を回すことは大命題であり、しかも今までと同じことをしていてはダメな時代です。残業を削減し従業員の余暇を増やすには、事業部門に限らず全ての組織において生産性の向上が必須。人の手を介してしかできなかった仕事について、ビジネスプロセスの見直しが急務となり、今までは効率化ということに一番遠かった総務や法務の管理部門も、見直しの対象となりました。その結果管理部門の業務の自動化・効率化を支援するサービスが増加することとなり、リーガルテックのサービスとして認知されてきたのです。

IT技術

法務の業務はソフトウェア(主にワープロやデータベースソフトなど)による作業以外で、IT技術の影響を大きく受けることは今までありませんでした。そして契約書を紙に印刷する、紙の契約書に捺印する、そして契約書に自筆の署名をするなどの手作業から、法務担当は逃れることができなかったのです。

しかも専門性の高いスキルや知識はもちろんのこと、加えて日本法や日本語という海外からみれば特殊なソースを駆使して仕事をすることは法務部門のプライドであり、それらをIT技術で置き換えることができる時代が来るとは、誰も考えなかったのです。

AI などの先端技術が発展したことで、様々な業種において、人間が行ってきた既存のビジネスプロセスを、IT技術で代替する取り組みが一気に進んできました。法務部門も例外ではなく、判例や商標の検索といった従来からあるサービスに加えて、案件に最適な弁護士の検索や、紙や印鑑を使わない承認フローをシステムが実現。今までは人間の手でしか対応できなかった業務が、システムで対応できる時代がついにやってきました。

経産省も動いた

平成30年1月から3月まで4回にわたり開催された、経産省の「国際競争力強化に向けた日本企業の法務機能の在り方研究会」のワーキンググループでも、日本におけるリーガルテックの市場構造が紹介されました。法務機能強化のためのリソース確保の手段としてのリーガルテックの活用は、法務部門での業務の効率化を期待できるサービスとみなされ、契約書作成や登記・電子署名などのサービスが取り上げられたことを機に、リーガルテックの注目度がさらに増したのです。

日本で提供されるリーガルテックサービス

日本国内の主なリーガルテックサービスから契約書業務を支援するサービスと、登録・申請を支援するサービスの2つに分けて紹介しましょう。

契約書関連

競合する企業が特に多いのが、契約書関連業務を支援するサービスです。契約書関連の中でもさらに2つの領域に分けられます。

1. 契約書の締結と管理

作成した契約書を電子データで保存することや、契約書へ電子署名を行うサービス。今まで紙で交わされた契約書を電子データに置き換えることで、契約締結までのワークフローを効率化されるというものです。このサービスの導入で契約書を印刷してきた紙が不要になりますし、契約書のファイルを保管するための倉庫費用や印紙税なども削減できるというメリットがあります。

代表的なサービス

2. 契約書の作成・審査と交渉サポート

契約書内のテキストをシステムが読み込み、修正が必要な箇所や自社にとってのリスクの有無を判定し、どの点を修正したり締結先と交渉すべきかをサポートするサービスです。今まで目視での確認方法しかなかったので、完了まではダブルチェック、トリプルチェックが必要でしたが、24時間365日稼働し続けるシステムにより、正確な内容の契約書がスピーディに作成できるようになったのです。人件費削減はもちろんのこと、契約書の信頼度もアップすることは言うまでもありませんね。

代表的なサービス

登録・申請

会社の登記や特許、商標など、今までIT技術と無縁と思われていた領域においてもリーガルテックが台頭しつつあります。最近はサービスによって GovTech(ガブテック)や IP(知財)Tech などとさらに細分化して分類されることも増えてきています。

代表的なサービス

弁護士のあるべき姿:今後

弁護士のあるべき姿:今後

弁護士免許を苦労して取ったところで、弁護士として生きていけない時代がしばらく続きましたが、この2年くらいで状況が変わり、求人募集の方が増えてきているようです。その理由の一つは司法修習後に弁護士事務所に就職する人が減り、その代わりにスタートアップで働く弁護士が増えていることなのです。加えて大手の法律事務所で弁護士として働いていた人が、スタートアップに転職することも増えています。

スタートアップでは、ベンチャーキャピタルなどから調達してきた何千億円という資金を急ピッチで投資し、市場をひっくり返してしまうほど爆発的な勢いで企業が成長していきます。リーガルテックのサービスを展開するスタートアップであれば、弁護士自身もステップアップできるというのが魅力です。どちらかといえばアドバイザー的なポジションであった弁護士でしたが、ついに弁護士が直接事業に挑戦できる土壌ができたのです。

企業では顧問弁護士など企業外の弁護士に対して、全ての企業情報を開示するわけではありません。それは企業の持つ価値観や文化、将来の展望などを、外部の弁護士が完全に理解しことは不可能だからです。そういう意味で企業内弁護士のポジションが、ますます重要になってきますが、リーガルテックに知見がないと、企業弁護士でやっていけないことになりますね。

裁判手続IT化のための法整備が進む

2018年3月に内閣府直轄の裁判手続き等のIT化検討会が、裁判手続きIT化に向けた取りまとめを発表しました。

その骨子を抜粋してみました

  • 裁判手続等の全面IT化として、民事訴訟について訴訟提起からその後の手続までオンライン化を進めると共に、訴訟記録の電子化を実現する。
  • また、裁判において、Web会議等の導入・拡大を行い、遠隔地での裁判へのアクセスを改善する。

2019年度中には法務省、行政府、司法府でそれぞれの課題検討が行われる見込みですので、国家規模でリーガルテックが整っていくことは間違いありません。連動する形で今後裁判所、弁護士や企業のための法律部門サービスのIT化が進みそうです。その結果今まで想定すらしなかったリーガルテックの新たなサービスも登場してきて、また新たなヒーローが生まれるのでしょうね。

最終的にリーガルテックが日本でどういった方向に進むのかはまだわかりませんが、引き続き動向に注目したいと思います。

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