マーケターの役割がますます複雑化?コロナ禍で変化が加速
新型コロナウイルス感染症の拡大は、我々の生活やビジネス環境を一気に大きく変えました。
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中でもB2Bマーケティング業務は、その影響を大いに受けた業務といえます。マーケターにとってブランドの確立が最重要なので、従来の主戦場は、オフラインのプライベートセミナーや展示会。しかしコロナ禍ではリモートワークを余儀なくされ、外に出ての活動もままなりません。
全ての常識はニューノーマル へ。デジタルでのマーケティング活動へ移行ができないマーケターは、自分の居場所を失うことになるのです。
ウィズコロナの今、そしてアフターコロナでのマーケターに求められる役割について確認してみたいと思います。
目次
真っ先に予算を切られるのはマーケティング部門
マーケティング活動にはお金がかかるため、企業業績が悪化するとマーケティング予算はまっ先に削られるもの。その後業績がリカバリしても、マーケティング予算の復元はすぐに実現しないだけでなく、以前の状態に戻らないことも少なくありませんが、それが世の常です。
コロナ禍においてもっとも深刻な打撃を受けている、飲食店、航空会社、旅行関連業界(旅行社、宿泊施設、航空、公共交通機関など)はもちろんのこと、米Airbnbや米コカ・コーラ社のようなグローバルな大手企業でも、マーケティング予算を大きく削減。
緊急事態下での派手なマーケティング活動は不適切とみなされ、一般消費者の反感を買う恐れがありますし、手元の資金を確保するには、マーケティング予算の削減が最良の策でもあるのです。
長年にわたりマーケティングは、二番手のコストセンターと見なされてきました。管理部門と同一視される場合や、日本の大手企業ではいまだにマーケティング部門がなく、マーケティング業務は、営業部門の片手間のような位置付けも。
「CMO -> CGO」|CMO不要説
「マーケティングがわからない人間に、企業のトップは務まらない」と言われている欧米では、CMO (Chief Marketing Officer=最高マーケティング責任者)の位置付けが、コロナ禍前から変化し始めていました。CMOに新たなタスクが追加される一方で、その在職期間は概して短くなり、CMOの転職サイクルは18ヶ月以下に。
2017年コカ・コーラ社ではCMOを廃止、その代わりにCGO(Chief Growth Officer=最高事業成長責任者)が新設されました。同社は長年にわたり、広告やその他のマーケティング活動で成長し続けましたが、グローバルの視点で見ると、徐々に爆発的な成功がむずかしくなったのです。
そこで成長のための商品開発を行い、ポートフォリオを充実させるためには、マーケティングのトップよりも、決断ができるCGOが必要になったと言われています。
その後タコベル(Taco Bell)、ジョンソン・アンド・ジョンソン(Johnson & Johnson)、マクドナルド(McDonald’s)などでも、CMOを完全に廃止。CGOのジョブディスクリプションは、これまでそれぞれの部門に分断されてきた、新規事業開発、セールス、マーケティング、オペレーション、情報システム部門などの社内リソース、さらにはパートナー企業などの外部リソースをも統合して、成長への仕組みを作ることとしています。
今後CMOのあるべき姿
今までCMOのタスクとは、ブランドをコントロールしながら、マーケティング活動による市場拡大でした。企業の成長のため、マネジメントには短期的な成果と、長期的なビジョン両方を有することが必要。しかしCMOには短期的な成果を求められる比重が高いために、既存の成功体験を拡大することに注力するようになり、ハイリスクである可能性がある、新しい領域へと手を広げようとしなくなりがちでした。それでも、それなりの成果をあげられたのです。
しかし従来のマーケティング活動一筋では、このコロナ禍で生き残れません。柔軟な発想と、新規事業の成功を確信できうる長期的なビジョンをも持ちあわせなければ、CMO不要という企業がふえていくに違いないのです。CMOが経営者にその存在価値を認識させるには、セールスやインフラなど他の業務について知見を持った上で、オフライン活動からオンラインへ移行した戦略を打ち出していくしかありません。これはマーケティング活動だけに閉じたものではなくて、企業全体をとらまえた戦略をも、CMOのテリトリーとすべきなのです。
マーケターの役割変化
現場担当のマーケターも、従来型のマーケティング活動を見直す必要が生じています。マーケティング戦略とは、「自社製品、ソリューションをどうやって売るか」「自社ビジネスをどうやって伸ばしていくか」です。つまり顧客にどんな価値を提供するかを考えることです。
そのためには総合的なアプローチでのブランド確立が必要となります。これを簡単に定義すると、次の2つの要素からなります:
- プロポジション: 製品・サービスの持つ価値や魅力を最大限に高めること
- プロモーション:それらをアピールし、消費者に購入を促すこと
多くのマーケターは、プロモーションこそが自分のタスクとばかり注力し、プロポジションは二の次でした。プロポジションの競争力が落ちれば、企業の成長は止まってしまうにもかかわらず。
コロナ禍という非常事態は、ピンチというだけではないのです。今まで優先度を下げていたプロポジションを自らのマーケティング戦略に加える、絶好のチャンスともいえます。つまりマーケターにとって、コロナ禍はチャンスにも転じるのです。
プロダクトマーケティングのウエイトを上げる
プロダクトマーケティングとは、日本ではあまり確立していない役割ですが、プロポジションのためには、まず自社製品を知ることなので、プロダクトマーケティングは重要です。
プロダクトマーケターのタスクは、まず製品ローンチ前には、製品のポジショニング、メッセージング、顧客からのフィードバックの収集、製品を市場に投入するための戦略全体を担当し、ローンチ後は製品の需要を高め、定着率を上げるための活動を行います。
自社製品をよく知ることで、「新製品が出てきたから機械的にプロモーションを行う」という思考からマーケターから離れるのではないでしょうか。
Webマーケティング/デジタルマーケティングが重要に
感染リスクを最小限に抑えるため、人との接触が伴う活動に制約のかかった今だからこそ、Webマーケティングに軸足を移して、現状を乗り越えるべきなのです。万一その経験値がないなら、取り急ぎ外部マンパワーを使いベースとなるノウハウを会得し、直ちに自分自身の新たな能力にすることが必要です。
Googleアナリティクスなどの外部ツールを活用し、自社製品の中で検索サイトで検索されることが増えたものや、自社WebサイトでPVが増えているページなどをフィードバックすることで、経営者が売上を伸ばすための施策を、見出す支援ができるというもの。
Web マーケターが本来の業務を超えて、社内での業務のオンライン化のリードも求められることもあると考えられます。こういった業務に関わることで、社内におけるマーケターに対する見方が確実に変わりますので、自分の仕事ではないと突っぱねずに、支援することがおススメです。
マーケターが生成したリードを受け取ったインサイドセールスが、クレンジングして抽出した見込み顧客に対し、アカウントセールスが対面訪問を行い受注する。こういった業務プロセスが多くの企業で主軸だったに違いありませんが、今後しばらくは同じことを行っても、同等の成果が期待できません。オフィスに電話したところで、多くの場合リモートワークのために先方の担当者に到達できないからです。
それに変わる施策として、自社ウェブサイトかのホワイトペーパーのダウンロードによる新規リードの獲得、オンラインセミナー・ウェビナーの定期開催や、MAを活用したリードナーチャリング、オンラインチャットサポートで新たなファンの獲得など。これまで検討はされても、対面営業と比べてすぐに結果がでないために、優先順位を下げられていたWebマーケティング施策に、今こそギアチェンジするべきなのではないでしょうか。
日本はウェビナーなど、オンラインのプロモーションが流行らない土壌がありましたが、今は顧客の情報取集の方法がオンラインしかないので、まさに今取り組むべきでしょう。アフターコロナですべてのマーケティング活動が、デジタルに移行することはあり得ませんが、オンラインで行われ定着した活動は、その後もとどまると考えられます。
いつ収束するか先がまだ見えないコロナ禍です。単なる一過性の災害ではなく、コロナ前とアフターコロナで、人々の行動様式が抜本的に変化することになるのです。
無論終わりが見えているならコストを最小限に抑えて、過ぎ去るのを待つといったマーケティング戦略もありえますが、この先何年か続くことも十分に考えられます。コストを抑えつつ、売上を伸ばすことが期待できるチャネルとして、今デジタルにかけられる期待は大きいと言えるでしょう。
マーケティングにもニューノーマル
アフターコロナでのイベントは、オンラインイベントが定着し、オフラインイベントとの併用がトレンドとなり、オンラインベースでのマーケティング活動への投資も続くと考えられますが、オンラインイベントが増えるということは、その頻度も増えるということなので、マーケティング効果が高く出ると予想される分野と、期待できない分野を明確にし、マーケティング実行の優先順位を正しく付けられるマーケターが求められます。
新型コロナウイルス感染が、日本のみならず世界中で、急激に安全や安心への関心を大いに高めたので、顧客やユーザーへの安全を配慮し、安心感を与えることができることが、今後求められます。
つまり単にマーケティング予算の削減するのではなく、マーケティング活動を止めずに安全衛生に関するコストを把握、予算化し、徹底的に管理していく必要があるということです。
経済復興の兆しが見えるまで、マーケターはできる限り低コストでいかに費用対効果を上げるかという点を意識した施策を、実施していくことが求められます。苦しいところですが、乗り切りたいですね。
広告を簡単に信じるな
コロナ禍ではメディアによって、さまざまな情報が流れました。もちろん正しい情報もありましたが、いわゆるフェイクニュースの配信も多く、さらにはコロナにかこつけたオンラインベースでの詐欺まで起こったので、情報に対するユーザーの信頼度がとても低くなってしまいました。信頼回復のため今後マーケターが留意すべきことは、情報に信頼性のあるメディアのみを活用して、マーケティング活動を行なうこと。
正しい情報を求める消費者の目が厳しくなるなかで、どのメディアにどのような広告を出稿していくかは、今後のマーケティング活動において非常に重要になってくるでしょう。
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