実際に「令和」で儲けた業種と、その後
平成が終わるタイミングで、改元で儲かる業界を予想しましたがお読みいただいたでしょうか。今後2度とないであろう10連休は日本全国にお祭りムードをもたらし、ほぼ全ての日本人の財布の紐を緩ませたのでははないでしょうか。
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5月4日の新天皇の御即位一般参賀で、皇居正門前には早朝から多くの人が集まり、開門前の時点ですでに5万人が列をなしました。ついに令和が始まったのです。
今回は実際に令和への改元で儲けた業種についてお話ししていきたいと思います。
目次
果たして現実は
改元の祝い酒需要に期待したビール会社では、ビールの生産量を大幅に引き上げ、10連休で都市銀行が一斉に休業する中で、差別化のために店を開け続ける地方銀行もありました。
多くの業界で令和のお祭りムードに便乗した取り組みを行っていましたが、勝ち組は誰だったのでしょうか。
旅行業界
旅行業界はちまたの予想を裏切らず大きく業績を伸ばしました。JTB、近畿日本ツーリスト、日本旅行など旅行会社大手各社の売上高は、「経験したことのない数字」で、4月の段階で国内が前年、海外とも対前年の2.5-3倍。
特に海外旅行は10連休にあわせ、各社とも旅程の長い欧州行きのツアーを、例年の何倍も準備したのですが、あっという間に完売する事態となり、キャンセル待ちが積み上がり、結局行きたかったツアーに行けなかった顧客も多かったのです。
国内旅行でもツアー日程が長い地域が人気で、日本旅行では北海道が前年比4.8倍、沖縄が同3.7倍の売上となりました。
また成田国際空港が発表した4月26日から5月6日までの国際線旅客数は、出国旅客が55万2千人(前年比14.2%増)、入国旅客が53万8900人(同13.7%増)と前年を大きく上回り、出国先は従来も人気のハワイなどのリゾート路線や韓国などの近距離路線に加え、欧州方面が旅客数が大きく伸びました。
印刷業界
印刷業界は改元の特需に湧き、その対応が間に合わず10連休を返上して稼働する中小企業の姿も多かったのが印象的でした。
企業や官公庁で使用される帳票類のリニューアル、新元号に伴なう新天皇、新皇后、皇族関連や平成を振り返る書籍や刊行物の発売、元号修正用スタンプや新規の印鑑作成など多岐にわたって売上を伸ばしました。
新元号、改元関連の需要は一時的であると考えられますが、4月7日と4月21日に統一地方選挙が行われ、7月28日には参議院議員選挙が予定されていますので、ポスターなど印刷物需要が高まりますので、印刷関連企業には令和元年は、継続したビジネスチャンスの到来といえるでしょう。
5/1に入籍するカップルが市区役所に殺到
5月1日の深夜、各市区役所に異様な賑わいが見られました。それは令和元年の初日の5月1日0時に入籍を希望する「令和婚」カップルの行列で、しかもその日は大安という良き日だったのです。
歴史的な瞬間に入籍したいという理由から、入籍の予定を急遽早めたカップルも多くみられました。
一番を目指して前日4月30日の23時過ぎから人が集まり出し、多くの市区役所では特別対応に努め、例えば待合に追加の椅子を用意するなどの便宜を図りましたが、訪問者数に間に合わず立ち待ちも出る事態に。
愛知県豊橋市役所では入籍記念の写真撮影用に、新元号入りのフレームを用意しました。ゆるキャラが登場する地域もあったようです。
結婚披露宴会場でも賑わいを見せています。新元号令和を花嫁姿で迎える「カウントダウン挙式プラン」による挙式が、全国6つのプリンスホテルで行われたことを皮切りに、その他の式場でも令和元年記念プランを用意し、令和婚のカップルの購買意欲を刺激しているのです。
神社、寺院には御朱印求めて人が殺到
令和への改元のタイミングで想定外のことが起きました。御朱印を求めて神社、寺院に多くの人が殺到したのです。
御朱印とは日本の寺院や神社において、主に参拝者向けに押印される印章やその印影のことです。複数の御朱印をノートのような専用の冊子に集めることを集印といいます。
もともとは写経を奉納したあかしとしてもらう証書を指して御朱印と呼んでいましたが、今は写経を納めなくとも、参拝のしるしとして数百円で御朱印をもらえるのです。
御朱印の一番の魅力は、なんといっても、寺社名や本尊名が手書きされていることで、書道の心得がある宮司や住職による書は美しく、自分のためだけに作成されるという御朱印の特別感が、最近の御朱印ブームを呼びました。
今回の改元に伴い著名な寺院、神社では、通常の御朱印とは別に特別な御朱印を発行したのです。東京都台東区の浅草神社では銀色の紙に「平成」の文字、一方「令和」には金色の紙が使われた御朱印を用意したところ、令和元年の第一目の5月1日には長い行列ができ、最長6時間待ちという事態になりました。
軽い気持ちかつスタンプラリー気分で生まれて初めて御朱印をもらいに来た人も多く、東京都渋谷区の明治神宮では御朱印を求めて最長10時間待ちの行列ができ、令和ゆかりの地とされる福岡県太宰府市の坂本八幡宮も、驚くべき人数が御朱印を求めて集まり、大混乱を招いてしまったのです。
文句を言うのは筋違い
御朱印を配布している神社14社にメディア会社が最近アンケートしたところ、13社が「以前より希望者が増えた」と回答。うち2社は10倍に増え、希望者が増えたことでトラブルが起きた神社は8社だったことが明らかになりました。
つまり信仰心から御朱印を集めているわけではない人が増えている傾向にあったところに、改元のプレミア御朱印の登場で状況が悪化してしまったのです。
寺院や神社の参拝など興味ゼロだが、令和記念なので御朱印をもらいにきたら、待ち時間があまりにも長いことに勝手に逆ギレして、その関係者に対し暴言を吐き、暴力に近い行為に及ぶ人がいたことは祈りと感謝を捧げる信仰の場である神社、寺院に対し失礼な行為であることはいうまでもありません。
浅草神社ではこの10連休の状況から鑑み、例年特別な御朱印を配布してきた三社祭で、今年はその発行を取りやめました。特別な御朱印がないということで、SNSでは非難の声も上がりましたが、もとは心無い人々の身から出たサビなのです。
メルカリで特別の御朱印が販売
御朱印でもうひとつ問題となったのは、特別御朱印や参拝証明書がネットオークションやフリマアプリにて転売されたことでした。浅草神社の1000円の特別御朱印が、最高9倍の値段で売買されていて、しかも出品されると即完売という状況だったのです。
新元号が令和に決まった時に新聞各社が発行した号外(無料)がメルカリで高値がついた上で完売していたことも記憶に新しいですが、このように常識のない人間が存在する日本が、今後どうなってしまうのか本当に心配になります。
期待はずれの業界
特需に沸いた業界があった一方で、あてが外れた業界ももちろんありました。その中でも流通業では、しっかり準備して臨んだにも関わらず、令和最初のGWは残念な結果に終わったのです。
百貨店
百貨店主要4社が発表した改元に伴う10連休の売上高を平均すると、前年の同時期に比べて伸び率が1割に満たなかったことがわかりました、つまり期待値を大きく下回わったのです。
改元による祝賀ムードで国内消費は活発になったとされますが、旅行代金が高騰したのでインバウンドが10連休に訪日することを避けたことも伸び悩みの要因となりました。
大丸松坂屋百貨店の親会社であるJフロントリテイリングの売上高は約7%増。4千円前後の豪華弁当や「令和」の焼き印が入ったお菓子など食品の売上は伸びましたが、全体では予定を下回りました。
3%増だった三越伊勢丹ホールディングスは、伊勢丹新宿本店など首都圏店舗への集客はある程度成功しましたが、天候が崩れた連休前半に夏物衣料品が不振で売上全体の足を引っ張ることになりました。そごう・西武では売上の伸びが1%にも届かず、高島屋は入店客数が1割前後増えたものの、売り上げの伸びは数%にとどまる結果でした。
スーパーマーケット
スーパーなどでつくる日本チェーンストア協会が加盟58社、約1万店の状況をまとめての発表では、全国のスーパーの4月の売上高は前年同月比1%減でした。
減少したのは実に2ヶ月ぶりで、改元に伴う10連休で旅行などのレジャーに出かけた人が多く、食品や衣料品の出費が抑えられたことが原因とされています。連休中の出費に備えた買い控えだけでなく、連休中も外出で客足が遠のいたことも影響しました。
想定外のトラブルも
長いようで終わってみるとあっという間であった令和元年の10連休後、トラブルに見舞われた業界もありました。それは金融機関のオンラインです。
もちろん休業中でもATMは利用できましたが、休み明けに送金などの処理が集中したため、システムが過度に遅くなるかあるいは、一時的にシステムダウンする事態が起きたのです。
ネット銀行のシステムダウン
その中でも楽天銀行の障害は深刻でした。楽天銀行は親会社がIT企業の大御所ということもあり、堅牢な銀行システムとして定評がありますが、5月7日のお昼過ぎにシステムに不具合が起きログインができなくなり、約11時間の間個人と法人合わせて約700万口座が影響を受けました。
残高照会や振込など瞬間的に通常の10倍以上の負荷がかかったことが原因とされ、完全復旧はその日の23時過ぎでした。
改元特需は続くのか
令和元年10月に消費税が10%に増税されるので、それが実行されると景気は停滞することが予想されます。また2020年の東京オリンピック・パラリンピック後は令和不況に陥る可能性も。
どの時代においてもリスク要因は存在しています。改元で儲かった企業も次を見据えていかないことには、生き伸びられないということでしょう。
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