みんなのタクシーがタクシーDXを起こすと確信できる理由

みんなのタクシーがタクシーDXを起こすと確信できる理由

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最近IT関係の資料のどこにでも、DX(Digital Transformation=デジタルトランスフォーメーション)という用語が出てきます。それと一緒に「2025年の崖」というフレーズもよく見ませんか。英語の略語が多くて、理解する前にまた新しいキーワードが登場して、世の中のスピード感に息切れしている自分がいませんか。

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今回はDXの意味を確認し、その取り組みの一つ、タクシー配車サービスの「みんなのタクシー」が、タクシー業界DXのリーダーになりうるか検証したいと思います。

まずは用語の確認を

まずは用語の確認を

みんなのタクシーの話題に入る前に、冒頭で述べた用語の意味を確認しましょう。

DXとは15年前に初めて提唱された概念

DXの発祥は2004年。「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」という概念で、スウェーデン・ウメオ大学のエリック・ストルターマン教授が初めて提唱しました。ビジネスシーンでは「企業がテクノロジーを利用して、事業の業績や対象範囲を劇的に変化させること」です。

日本では経産省が2018年12月に発表した「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)」の中で、次の通りDXを定義しています。

企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。

そのDXの推進に必要な要素は次の5つ。

  • モバイル
  • クラウド
  • IoT
  • AI
  • ビッグデータ

2025年の崖

「2025年の崖」は、老朽化・ブラックボックス化した既存システムが残った場合に、想定される国際競争への遅れや、日本経済の停滞などを指す言葉で、2018年9月経産省のDXレポートの中で言及されました。

DXの目的を達成するには、自社システムがわかるIT人材の引退や、サポート終了などのリスクを回避するために、2025年までに集中して、既存システムを刷新する必要があるというわけ。

このまま放置すれば、2025年には21年以上稼働しているレガシーシステムが、システム全体の6割を占めると予測され、システム刷新の波に乗り遅れた企業は、多くの事業機会を失うと、経産省が警鐘を鳴らしているのです。

ここでタクシー業界の話に戻りましょう。タクシーの配車には長くアナログ無線が使われていましたが、2016年に使用期限を迎えた後、デジタル無線への完全移行が進んだのです。ひょっとしたら、タクシー業界のほうが一般企業よりDXのそばにいるのでは?そんな気がしてきました。

みんなのタクシーとは

みんなのタクシーとは

2018年5月に、ソニーがタクシー会社7社および子会社であるソニーペイメントサービスと共同で、「みんなのタクシー株式会社」を設立しました。ソニーが培ってきたAIとセンシング技術を活用し、「需要予測サービス」と「安全運転支援」の2つの分野に注力することがそのコンセプト。

希望があればどこのタクシー会社でも参画できるビジネスモデルを採用し、数年以内には、第一人者であるJapanTaxiに追いつくことを目標に掲げました。

ソニーの挑戦

みんなのタクシーの西浦社長は、過去には非接触通信規格のFeliCa事業やソニーモバイルの企業戦略VPも担当し、2017年10月にソニーが発表したAI試験車両「SC-1」のプロジェクトの統括課長も兼任するAI・ロボティクスのエキスパートのため、ソニーが自動運転カーへの本格参入を考えているのは間違いないありません。

しかし普通の進め方であれば、いの一番に自動運転車の実証実験から始めそうなものですが、何とソニーはタクシーの配車サービスから入りました。それがソニーのすごいところです。自動運転車そのもののハードウェアは、粛々と研究・開発を続けておいて、その出口の準備を今からしておこうという考えなのでしょう。

もちろん自動運転(AI)タクシーがいきなり街中に投入されることなど、現時点で非現実的。まずは地域限定や、乗客限定などの形で部分的に始まることが考えられるので、予約をされてから配車をする運用になる可能性が高いので、まずはタクシーの配車サービスを今から始めて、そのノウハウを会得する作戦でしょうか。よってみんなのタクシーが、ソニーの将来ビジョンの中で、懐刀的な役割を担った存在になるのかもしれません。今後の動向にも注目ですね。

みんなのタクシーがサービス開始

みんなのタクシーがサービス開始

みんなのタクシーは、2018年9月には準備会社から事業会社へ業務を移行。その後タクシー車両後部座席に設置したタブレットに動画広告を配信するIoTサイネージサービスである、「THE TOKYO TAXI VISION GROWTH」の提供を開始し、2019年4月には配車サービス、及び決済代行サービスが、東京都内で始まりました。サービス提供開始時点では、ソニー、ソニーペイメントサービスとタクシー会社5社(グリーンキャブ・国際自動車・寿交通・大和自動車交通・チェッカーキャブ)との連合で、タクシーの総数は都内最大規模の一万台超でのスタートとなりました。

みんなのタクシーが目指すもの

みんなのタクシーで使用する、タクシー配車アプリの名称はS.RIDE月に4回以上タクシーを利用するようなユーザーが、メインターゲットです。その名前には、Simple、Smart、Speedyな乗車体験を、新たに提供していくという思いが込められています。

Simple

アプリを起動したあと、ワンスライドでタクシーネットワークから一番近いタクシーをすぐに呼ぶことができます。迎えの位置は自動的に調整されるため、ユーザーが自分で設定する必要はありません。また待っている間に目的地を設定すれば、自動的にタクシーに設置されたタブレット端末に設定されるため、タクシーのドライバーに再度口頭で伝える必要がないのです。迎車車両確定後には、簡単なメッセージのやり取りがドライバーと出来るので、万一急なトラブルがあっても安心。

  • Smart

ソニーペイメントサービスとの連携で、事前にクレジットカードを登録しておけば、ネット決済が可能になります。加えて後部座席タブレットに表示されるQRコードをS.RIDEで読み込むという、独自のQRコード決済の「S.RIDE Wallet」にも対応し、到着後はすぐに降車できるのです。

Speedy

自分がいる場所から1番近くにいるタクシーが迎えにくるので、待ち時間で時間をロスすることが少なくなります。

2019年10月には、位置特定サービスを提供する 英what3words社と提携して、3 つの単語を入力するだけで、3 メートル四方の目的地を自動設定を可能にしました。これは国内タクシー配車サービスアプリでは初となりました。

2019年度内にAI技術を用いた需給予測サービス等のサービスの拡充が予定され、今後も様々な業界のリーダー企業とのパートナーシップを推進し、東京都のみならず、みんなのタクシーを利用できる環境を全国で整備していくと共に、Simple、Smart, Speedlyな移動体験の提供を通じて、さらなるモビリティサービスを開発する方向性のようです。

先行する他社は

先行する他社は

アプリによるタクシー呼び出し件数は年々向上しており、都内ではアプリでの注文が約8割を占めるなど、スタンダードなサービスとなりつつあります。

ですからタクシー配車サービスの競争は、益々激しさを増しているのです。日本最大手のJapanTaxiや、米Uber Technologiesの日本法人に加え、ディー・エヌ・エー(DeNA)の「MOV(モブ)」や、ソフトバンクが中国の滴滴出行と組んで展開する「DiDi(ディディ)」も上陸しています。

Uber

Uberの生業はライドシェアを目的とした自動車配車ウェブサイトおよび配車アプリで、車に乗りたい人と、ドライバーになりたい人をマッチングさせるシステム。日本語では白タクと訳されるビジネスであり、本来はタクシービジネスとは一線を画しているのですが、日本では白タクの存在が認められていないためにライドシェアは諦め、東京都内からタクシー配車サービスを始めました。

2018年9月にフジタクシーグループとの提携で、名古屋市で正式に配車アプリ事業の「ウーバータクシー」をスタート。2019年1月には未来都との協業で、大阪市でも事業を開始し、さらに仙台中央タクシー、西条タクシー、成長タクシーとも提携し、仙台・福島・青森の各市でもウーバータクシー事業を始めました。また新たに提携タクシー事業者の目途がついたら、全国に手広く事業を拡大していく計画です。

2017年にソフトバンクグループが80億ドル(約9,600億円)を出資して、Uberの筆頭株主になっており、トヨタ自動車でも2018年にUberとの協業拡大を発表し、5億ドル(約560億円)を出資していることでも知られています。

Uberがすごいのは100%人手に頼っていた配車のビジネスプロセスを、スマートフォンアプリでいち早くデジタル化した点。ユーザーが配車を依頼するときに車のタイプも選択でき、乗車前に目的地までの料金がわかり、支払いも登録クレジットカードから引き落としで、インターネット経由で領収書取得も楽々というプロセスを、日本でも可能にしたのです。

Uberが配車するのは、認可を受けている地元タクシー会社のタクシーなので信用できますし、特に仙台や青森の都市部でないユーザーにとって、今までいちいち電話でタクシーを依頼しなければならなかったのが、アプリで気軽に依頼ができるようになったのは大きなアドバンテージ。東京、名古屋、大阪の次は、東北にフォーカスしたUberの戦略は正解です。

JapanTaxi

全国47都道府県、約7万台のタクシー車両をネットワークするタクシー配車アプリ、「JapanTaxi」のダウンロード数が、2019年8月に800万を突破したJapanTaxi。

同社のアプリには他社サービスにはない、翌日や1時間後といった先の予定に合わせた予約機能や、空港定額、車種指定といった機能を搭載し、エリアによってアプリを使い分けることなく、シームレスに全国で利用できるのが最大の強みです。また外部パートナーとの連携により、約15の外部サービスと連携しています。

IT活用によりタクシー会社の負担軽減や付加価値向上をサポートする、タクシーDX事業を先導し、日本のみならず世界中に販路を広げていくことが次のステージとみなしており、タクシーを利用したIoT見守りサービスなどの、次世代モビリティ事業にも意欲的に取り組みを始めているのです。

みんなのタクシー:今後

みんなのタクシー:今後

先行する2社の勢いが落ちない中で、みんなのタクシーはどちらを向いて進んでいくのでしょうか。

2019年みんなのタクシーは、KDDI、NTTドコモそしてJR東日本と相次いで資本業務提携しました。KDDIとはMaaS (Mobility As A Service) プラットフォーム構築、新規タクシーサービスの開発、ビッグデータを活用した新ビジネスなどの共同検討を進める予定で、NTTドコモとは配車予測で連携、JR東日本ともMaaS領域での連携予定です。

キャリアや鉄道会社という誰にとっても身近なところでDXを推進するとは、タクシー配車サービスとしては後発でも、目の付け所が違います。

繰り返しになりますが、ソニーの技術力がバックにあることは、他社と一線を画していますので、みんなのタクシーには今後、全く違う世界観が見られることが想定でき、楽しみではないでしょうか。

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