日本の何でも「サブスク」ブーム。過去の失敗例から学んだ方がいいワケ

日本の何でも「サブスク」ブーム。過去の失敗例から学んだ方がいいワケ

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「ものづくり」や「もの売り」で栄えた企業では、製品を販売したときに利益を確定する収益化モデル=「売り切りモデル」でビジネスを行なってきました。原価に一定の利益幅を付けて価格を設定することが、売り切りモデルでメインとなる考え方であり、製品を企業が設定した価格で買ってもらえれば、企業は利益を得ることができるというもの。

グッチやエルメス、ポルシェやフェラーリなどの超有名ブランド企業や、トヨタ自動車やユニクロのような十分なスケールメリットがある企業であれば、売り切りモデルはうまくいきますし、今後もそれを継続できるでしょうが、売り切りモデルでは「もの」が売れなくなった企業もあります。

今まで不況や競合他社との厳しい競り合いがあっても、セット売りや安売りなどで乗り切ってきましたが、その結果消費者は製品が安いから買うだけで、製品の価値を認識することがなくなってしまったのです。残るは在庫の山で、それを処分するためにまた安売りをする負のスパイラルが続けば、業績が行き詰まってしまうのです。

売り切りモデルが回らなくなった企業をよそ目に、全く真逆の成果を生むビジネスが登場しています。それこそがリカーリングモデルであり、リカーリングモデルの代表がサブスク(Subscriptioin=サブスクリプション)なのです。

売り切りモデルに長く支配された企業で、継続的に収益が入ってくるビジネスモデルであるサブスクへ方針転換する動きが加速しており、今やサブスクブームの真っ只中といえ、日本も例外ではありません。

サブスクのおさらい

まずはリカーリングモデル (Recurring model) のお話をしたいと思います。リカーリングモデルとはリカーリングレベニュー(Recurring revenue) を実現する収益化モデルのことで、「もの」やサービスを買い取るのではなく、期間内の利用に応じて料金を支払う契約方式のサービスを指し、リカーリングレベニューは継続的に入ってくる収益のことです。

つまり販売時に売上を立てて、利益を計上し終えるのではなく、時間をかけて収益を回収していくため繰り返し収益が入ってくるので、「繰り返し」のところだけ見れば、経営者には嬉しいモデルとなりますね。

IT系企業の契約から始まったサブスク

リカーリングモデルのサブスクをいち早く採用し、成功しているのがIT系企業です。莫大な収益を達成することに加えて、株式時価総額を高めています。

IT系企業での収益モデルは、ライセンス料金+年間保守料金か、ライセンス料金(売り切り)の2種類が従来標準とされていました。一方サブスクではユーザーにはライセンス購入を促すのではなく、契約をしてもらいます。契約後は月額や年額などで課金する期間での定額制や、利用量に応じて課金する従量制で、企業は継続的に収益を生み出すことができるのです。

ユーザー側ではサブスクなら膨大な初期投資が不要となりますが、あまり長いタームで同じサブスクを継続すると、ライセンス購入より結果的に高くなることもありますので注意が必要になりますね。

サブスクブームが到来

サブスクブームが到来

2018年はまさにサブスクブーム元年でした。企業規模に関係なく、大手も小規模企業もサブスク導入を目指したのです。サブスクはもはやIT系やメディア系だけのものでなくなりました。

ファッションにもサブスク

サブスクでアパレル製品などをレンタルするサービスが増殖しています。インターネットを通して衣服やアクセサリーの選択から購入(またはレンタル)までが完結するというプロセスが一般的です。保管場所が必要で、選定にも購入にも時間がかかる衣服をサブスクで借りられることに価値を見出せるユーザーは少なくありません。メチャカリエアクローゼットRkawaiiなどがその先駆者といえ、その後大手アパレル販売サイトのZOZOTOWNも参入しました。

そんなアパレル業界におけるサブスクブームですが、レンタルという選択肢が増えると「衣服は購入するのがよいのか、借りるべきか」とユーザーにとってはその判断が難しくなりますね。

食のサブスク:対フードロスも

サブスクは業種を問わず広がってきましたが、対フードロス分野にもサブスクが始まっています。Reduce Goは、月額1,980円で1日2回まで廃棄食品を受け取れるというサービスです。廃棄食品が欲しい人はReduce Goのアプリで検索し、欲しいものが見つかったら交通費自己負担で受け取りに行くしくみ。あちこちのレストランなど飲食店の廃棄食品を検索し、欲しいものを自分で選ぶことができるので、美味しい外食を食べたいけれど、お金をあまり使いたくないという場合にぴったりのサービスといえましょう。

廃棄食品を提供する側(個人経営の飲食店がメイン)では、まだ食べられるものを廃棄しなくてすみますし、アプリを通じて露出が増えることで、思わぬ集客効果も期待できるおまけ付きです。

食のサブスクは定額食べ放題など企画しやすいものですが、Reduce Goはフードロスを防ぐという社会的意義も担える点でユニークであり、さらに利用料金の2%が社会活動団体へ寄付されるという優等生ぶり。しかしサービス対応は首都圏に限られ、しかも提供側は個人店がほとんどで大手飲食チェーンの加盟がないことから、ユーザーの選択肢が爆発的に増えることは期待できません。

もっとも大手が廃棄食品を配りだすとブランドイメージが悪くなる危険性があることや、食中毒などの大リスクも否めないので、一歩が踏み出せないのですよね。

米ブルーエプロンから学ぶ教訓

米ブルーエプロンから学ぶ教訓

サブスクビジネスで先を走るアメリカでのサブスク利用者の数は1,850万人と推定されます。2018年米マッキンゼー・アンド・カンパニーの報告で、2011年には5,700万ドルだったサブスクEC市場の規模が2016年には何と26億ドルと、たった5年間で爆発的な急成長を遂げたことが明らかに。

ニューヨークに本社を置く2012年創業のブルーエプロン (Blue Apron)は、自宅で料理するための食材宅配のサブスクで有名になった企業です。富裕層をターゲットに、30分程度で作れるミールキットを定期的に宅配する定額サービスを提供しています。

その内容は自宅にいながらレストランで提供されるような、インスタ映え間違いない高品質のオリジナルメニューを、1食あたり9.99ドルで味わえるのが特徴で、料理に必要なすべてのもの(必要な分量の食材と調味料)がレシピ付きで送られてきます。1週間に3食を2人前分届けて、59.94ドルというコースが一番の売れ筋です。

ブルーエプロンはこのサブスクのミールキットで急成長し、創業5年の2017年に早くも上場、さらなる成長が期待されましたが、世の中そううまくはいきませんでした。ブルーエプロンの成功を目の当たりにした競合他社の参入が相次ぎ、既存のスーパーもミールキット市場に参入。さらには大手スーパーマーケットチェーンであったホールフーズを137億ドルで買収したアマゾン・ドット・コムが、食料品市場に本格参入と共にミールキットの独自開発して販売を始めたことも、ブルーエプロンには大きな打撃となったのです。

ミールキットの利用者のほとんどは、ブルーエプロンに強い思い入れがあるのではなくて、たまたまブルーエプロンだけが提供していたサービスであったから購入していただけです。ですから気になるミールキットが他に見つかったら簡単に乗り換えるので、その引き止め策を講じる必要が起きました。

これまでブルーエプロンは自社サイトのみを顧客との接点としてきましたが、多くの競合が出現したのちに、この方法だけではもはや新規顧客の獲得が困難となりました。そのため有償のSNS広告を使うようになったのですが、そのことが販促コストがかさみ収益を圧迫したために、ビジネスモデルの転換をも余儀なくされたのです。創業社長は退任に追い込まれ、株価も低迷してしまいました。

サブスクビジネスから撤退した企業も

メディアもサブスクを助長し、単なるレンタルやクレジット会社を仲介させただけの割賦販売をもサブスクと呼びこともありました。しかし実際には収益の増大どころか減少をもたらし、短期のうちに撤退した事業も少なくありません。

「紳士服のAOKI」のCMで昔から知られるAOKIが展開していた、サブスクのsuitsbox(スーツボックス)は、約半年という短い期間で終了しています。料金は月7800円からで、スーツ、シャツ、ネクタイのセットを借りられて、借りたスーツを返却すれば、他のスーツに月1回だけ交換できるという充実した内容で商品が追いつかないほどの盛況ぶりでしたが、想定していた効果が得られず、システム構築費ならびにサービス運用コストがかさみ、黒字化が見込めなかったことが、サービス終了とした最終的な理由でした。

サブスクビジネスに参入する際に、ユーザーが使えるお金に限りがあることを決して忘れてはいけません。興味があるものがネットでヒットすれば、ユーザーは新たな契約をするものですが、毎月の支払額がただ増え続けるのも困るし、飽きてしまえば簡単に解約をします。

さまざまな業界にサブスクサービスが誕生したことで、今では業界を超えたサブスク市場全体で、ユーザーの獲得競争が起きているのです。

サブスクの今後

あらゆる郵送物が定時に届き、電車、バスなどの公共交通機関は定刻発着が当たり前という、十分に発展した日本のインフラに乗る形で、サブスクはこれからも成長していくことでしょう。

しかし現在のサブスクブームは首都圏だけという限定的なので、限定地域だけのブームで終わるのか、地方都市にも広まる大きな動きになるのかまだはっきりとは見えてきません。東京中心に浸透したサブスクが、日本中の生活そのものを飲み込む日が来るかどうか、引き続きウォッチしていきたいと思います。

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