無断キャンセル被害は年間2,000億円!活躍するノーキャンセルTecが拡大。

無断キャンセル被害は年間2,000億円!活躍するノーキャンセルTecが拡大。

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予約した客が連絡せずに時間になっても来店しない、無断キャンセル被害が後と断ちません。レストランや居酒屋などお店側にしてみたら、見込んでいた売上を失ったり、準備した食材や人件費が無駄になったりするリスクがあり、ややもすれば経営困難に陥ることも。

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無断キャンセルはNo Show(ノーショー=姿を現さない)とも呼ばれ、飲食業界で強く警戒されています。何か有効な防止策はないのでしょうか。

無断キャンセル被害は年2,000億円

経済産業省の有識者勉強会が2018年11月に公表したNow Show対策レポートによると、無断キャンセルによる飲食業界の被害額は年間で約2,000億円に達し、それは予約全体の1%弱を占めていました。さらに予約当日-2日前に生じるキャンセル分を加えると、被害発生率は6%強に達し、被害額は約1.6兆円にまで及ぶということでした。

少し古いデータですが、経産省企業活動基本調査の2016年の結果から鑑みると、飲食業界全体の市場規模を25 兆円、平均人件費率が 37%だと、無断キャンセルの損害額である 2,000 億円は、飲食業全体における賃金の 2%強 に相当するのです。しかしながら2日前以降の予約キャンセル(連絡がある場合も含む)を抑制できれば、賃金約 15%増、もしくは営業利益率が約 6%回復するという仮定もできます。無断キャンセルが防止できるのであれば即利益に跳ね返るので、店には有効な対策が必至なのです。

無断キャンセル・ドタキャンが増えている理由

まずはドタキャンとの違いを理解しましょう。ドタキャンは「土壇場(どたんば)キャンセル」の略語で、予約日時直前のキャンセルです。ドタキャンの場合は直前であっても連絡があるので、店側では予約席をリリースしたり、材料を他に流用するなどある程度対応策がとれます。

一方無断キャンセルは予約時間を過ぎても予約時間内は、客が来るまでともかく待つことになるので、他の客に席を解放することもできず、用意した食材などがまるまる無駄になるなど、損失が大きいのです。よって無断キャンセルのダメージの方が格段に深刻と言えるでしょう。

ネット予約の普及が一因

無断キャンセルが増えている理由として、最も多いと考えられるのが、Webサイトやアプリなどネット経由で簡単に予約がとれるようになったことです。あまりにも簡単に予約ができるので、予約したことをうっかり忘れてしまっても罪の意識が低い。その中でも多いケースが大人数の宴会を任された幹事が、「とりあえず場所確保」の目的で複数のお店を予約した後、決めた店以外の予約に対し、キャンセルの連絡を入れ忘れることです。

体調が急に悪くなったり、トラブル等に巻き込まれたために、事前連絡ができなかったという場合もあり、相対的には悪意のある無断キャンセルは少ないと言われていますが、理由はどうあれ店側にとって無断キャンセルは迷惑以外の何者でもなく、お店存続の危機となる可能性だってあるのです。

店への嫌がらせ目的の場合も

悪意のある無断予約をめぐる事件も起きています。2019年11月に59歳の男が偽計業務妨害容疑で逮捕されました。事件の詳細は同年6月のある金曜夜に、1万円のコースに3千円の飲み放題をつけて、17名分の電話予約しながら予約日に来店せず、店の業務を妨害したというもの。その店の系列店に確認すると、他の4店でも同内容の予約が合わせて58名分無断キャンセルされており、最初から来店するつもりがなかったと見て調査が進められています。

被害が51万円に上ったとして店が警視庁に被害届を提出したことで、この事件が明るみに。男は「系列店でのサービスに不満があり、嫌がらせしてやろうと思った」と供述しているそうです。よほどの恨みがあったのでしょうが、もっと大人の対応がありましたよね。

まともな客に、被害を与えているかも

また無断キャンセルは、本当に店を予約したくてキャンセル待ちしていた客などに、機会損失をもたらします。あるいは一定の確率で発生する無断キャンセル被害の穴埋めのため、店側が通常のメニュー料金に、一律の被害額を転嫁していることもあるので、無断キャンセル問題は何の落ち度もないまともな客にも、被害を与えている可能性があるのです。

被告不在で、1分で原告は勝訴したけれど

被告不在で、1分で原告は勝訴したけれど

2018年3月に東京簡易裁判所において、無断キャンセルに関して、おそらく日本初とみられる民事裁判が行なわれ、無断キャンセルした被告に対し、損害賠償支払いの判決が出ました。

ある日東京新宿歌舞伎町のバーに、40人分のコース料理予約の電話が入りました。人数が多かったので、念のため予約当日も店の方から最終確認の電話を入れたところ、「あとで折り返します」との回答。しかしその後電話がこないばかりか、予約時刻を過ぎても誰も来なかったのです。

店から再度電話してもつながらず、何度メールしても返信がなかったので、同日夜10時過ぎには第三者に相談するという内容のメールを送ると、ついに相手から電話がかかってきましたが、自分は単なる窓口といい張るだけ。

全くらちがあかないため予約の際に相手が申告した住所宛に、40人分の料理コース費用計13万9,200円の損害賠償の要求を内容証明で送ったのですが、受領されないまま戻ってくる始末だったので、店が無断キャンセルした相手に対して、訴訟を起こすことになったのです。

しかし弁論の場には現れたのは、原告である飲食店オーナーとその弁護士だけで、被告側は誰も現れずわずか1分で結審。被告が答弁書を出すことも、弁論の場へ出席することもなかったので、原告の申請内容を認めたものとみなされ、被告に13万9,200円と、訴訟費用を原告に支払うことが命じられるというあっけない結果となりました。

一般論として裁判の場にも出てこない相手が、きちんと賠償金を払うのか保証はありません。もし相手が判決に従わないときには、裁判所が強制執行することになるのですが、現実には裁判所が相手の支払いを保証してくれないのです。原告側で追跡するならば興信所などに依頼することになるのですが、13万円取るために10万円を興信所に払うのかという、苦しい決断が必要になることも。

飲食店も動く

店側はネット予約した人の素性がわかりません。しかも偽名を使われたり、携帯電話の番号も本人でないこともあるため個人の特定ができず、無断キャンセルされても請求しようがないといったケースも多く、泣き寝入りする場合が多かったのですが、飲食店が民事訴訟などで対抗する動きがついに広がり始めました。

個人飲食店のオーナーが集まって運営する全日本飲食店協会は、2018年2月19日から団体予約の無断キャンセルやドタキャンによる被害を減らす新サービス「ドタキャン防止システム」の稼働を始めました。過去にドタキャンをした人物の電話番号を登録、店側の事前の予防策に役立てるのが狙いです。

また飲食店でつくる業界団体などでは、無断キャンセルをした客に対して、民法に基づいて料金を請求することを可能とする指針を、同年11月にまとめました。肝心のキャンセル料については、コース予約の場合は支払予定額の全額、席のみの場合は店の平均客単価から5割程度とするなどの目安を示しています。

経産省は解決支援を表明

飲食業界による無断キャンセル被害の解決に向けた活動を受け、経産省はIT導入補助金をはじめとした施策を活用し、IT化を通じての生産性向上と課題解決を支援し、関係省省庁と連携して、民間事業者が一事業者では解決できない業界全体の課題の解決に向けた取組に対し、支援していく予定を明らかにしました。

無断キャンセルから店を守れ

店を守るための、無断キャンセル対策サービス開発が進んできました。今回は2つご紹介したいと思います。

無断キャンセル保証サービス

保証事業会社のガルディアは、2017年から飲食店や美容院を対象とした、無断キャンセル被害の保証サービスを開始しています。加盟者数はすでに30,000に達する勢いです。店側が同社に支払う保証料は月額で1万円に満たない程度ですが、無断キャンセルが発生した場合に、予約されていたコースなどの代金を店に全額保証してくれるのです。

同社実績による無断キャンセルによる被害請求額は、1店舗あたり平均5万~10万円程度。大手予約サイトとも連携し、無断キャンセル歴がある人から新たに予約があった場合、ガルディアから店側にその情報を伝えることもでき、事前のリスク低減にも一役買っています。

同社では無断キャンセルだけでなく、直前の予約キャンセル(ドタキャン)へのサービス拡大も今後検討するようです。

無料キャンセル被害を弁護士が代行するサービス

無断キャンセルで発生した被害分を、弁護士が代行回収するサービス、ノーキャンドットコムもサービスを開始しています。こちらは店側の会員登録無料ですが、回収できた場合はそのうちの3割が手数料となります。

無断キャンセルの連絡を店から受けた弁護士が、無断キャンセルした相手に連絡を取り、被害分の返還を督促するもので、具体的には弁護士名義のショートメールを複数回送って入金を求めます。

このサービスのテストランの段階でも、回収成功率は約8割という高確率は特筆すべきでしょう。店側の要望次第では訴訟も支援する予定で、すでに10店舗以上がサービスに登録中。ノーキャンドットコムでは、弁護士が無断キャンセル問題に積極的に関わることが、無断キャンセル被害の抑止につながるとも考えており、最終的に無断キャンセルが起きない社会を目指す考えです。

ITを活用した対策

ITを活用した対策

ITツールを使って、無断キャンセルやドタキャンを防ぐ対策もあります。例えば予約をした人に対して予約日前日にSMSで通知を送るサービスである、予約お知らせくんは、無断キャンセルの防止に一役買ってくれるのです。飲食店の方なら無料で利用できるのもアドバンテージです。

「予約受付時、1週間前、前日」と頻繁にリマインドメールを送り、毎回店のキャンセルポリシーを明確に伝え、それを相手が確認したというエビデンスをとっておくことも効果があります。加えてSNSを利用している店であれば、ドタキャンが発生した場合には、「席予約可能」をネットで周知して別のお客の来店につなげるといった利用方法も考えられます。

飲食店の予約受付サービスの中には、事前決済や料金の一部を預かるデポジット機能、無断キャンセル時の見舞金サービスを行っているところもあります。これらの多くは有料のサービスですが、あまりに無断キャンセルの影響が大きいのであれば使うことを検討してもよいでしょう。

最後は良心に訴えること

しかしながら考えられる対策を全て行っても、無断キャンセルを完全になくすことは不可能です。限りなくゼロに近づけるには、例えば無断キャンセルから派生する食品ロスや資源枯渇など利害を超えた諸問題を絡めるなどして、ともかく相手の良心に訴えることが最後の手段なのかもしれません。

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