【平成から令和へ】改元で儲かる業界と、注意点は?

【平成から令和へ】改元で儲かる業界と、注意点は?

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平成が間も無く終焉を迎え、時代は令和へと変わります。元号が変わると影響を受けるものが大変多く、残る数週間で変更作業を完了しなくてはならないものも。例えば「平成」の文字が印刷されている印刷物全てに訂正か差し替えが必要です。

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今上天皇の生前退位で平成が終わると発表があって以来、「平成最後のXX」という枕詞で、平成関連ビジネスで儲けている業界もあります。2018年の夏は「平成最後の夏」というフレーズが流行りました。「平成最後だから…」と様々なイベントや限定商品のマーケティング戦略に翻弄される消費者は少なくありませんし、「平成最後の駆け込み婚」も話題になっています。

4月1日に次の元号は令和との発表があった直後、全国紙や地方紙が街で一斉に配布した号外が、同日の15時の段階ですでに300件以上がメルカリに出品され、価格は1,000円前後にも関わらず、購入済みになっていた商品も多かったということも驚きでした。

さらに令和の出典元になった万葉集が注目を集めたことで、発表同日の午後には万葉集がどの書店でも完売。次の日には各書店に急遽万葉集特設コーナーが設置されたそうです。この書店に与えた特需が起こることを、事前に想定できた人はまずいなかったでしょう。

元号が変わるタイミングは確かに特需ですが、残り数日で完結しないと賞味期限が切れるという、緊張感でいっぱいの業界もあると考えられますが、実際に令和への改元となる5月1日まではある程度の猶予があるので、特需は限定的と考えられますが、それでもいろいろな場所で特需が発生する可能性があります。

昭和から平成への改元時に起こったことから

昭和から平成への改元時に起こったことから

1989年1月8日に昭和から平成に元号が改元されました。昭和天皇の崩御による改元だったため、即日に新元号へ改元されることになりましたので、元号を利用していた官公庁や自治体、企業では待った無しの対応に追われました。次にあげる3つが代表的なものです。

1) 印刷関連

紙幣、印刷物の切り替え
紙幣や貨幣、印刷物といった元号を使用するすべての差し替え。印刷が間に合わなかった時用に「昭和」の文字を2重線で消し「平成」に修正できる、消し棒訂正スタンプの準備

2) 硬貨・紙幣処理関連

紙幣や効果のデザイン変更による読み取り機械
新元号に対応した銀行券を読み取るための機械の仕様変更 (現在の硬貨・紙幣などの銀行券は、平成12年以降徐々にデザインが変更された)

3) システム関連

元号管理や表示の改修対応
官公庁や金融機関など元号で管理や表示を行っている組織でのコンピューターシステムの改修

これらの対応は令和への改元時にも同じように必要となりますので、印刷・デザイン、コンピューター・機械などの業界では特需となるのは間違いないでしょう。

銀行券に関しては2024年度から全て変更されることが、この度発表されましたので、機械メーカーでは改元時と2024年度の2度の特需がありそうです。

旅行業界は

旅行業界は

今上天皇の退位と新天皇即位の日を迎えるにあたり、国民間のお祝いムードをもっと盛り上げるために、日本政府は2019年のゴールデンウイークが10連休にすることを決定しました。有給休暇を足さなくても祝日だけで長期休暇が取れることになるので、旅行業界やレジャー業界そして観光地ではすでに特需が到来しています。

日本人の国民性なのかもしれませんが、祝日だけで10連休なんてもう2度とないのだから、これはどこかに旅行しなければいけないという、切迫感や義務感にも似た感情が湧き、我先にと旅の予約をするわけです。例年のゴールデンウィークに比べて料金が驚くほど高いのにも関わらず、行き先によってはツアー旅行完売ということが、すでに2018年末に起きていることからも、旅行業界にとって言い値で商売ができる絶好なチャンスを迎えました。

旅行予約サイトのエアトリによると、10連休が発表された2018年10月12日の1ヶ月後には、海外旅行の予約件数は前年同期比766%に急上昇し、大手のJTBでも海外旅行予約が前年比2倍に達したとのことです。

国内旅行の予約も負けてはいません。天皇陛下の退位・新天皇の即位前後は、特別な皇室行事が多く行われるので、日本の古い文化に関心が集まり、にわか歴史通になる日本人が続出するので、京都奈良をはじめとする、日本の伝統を感じる場所への旅行者が急増するといえるでしょう。

新しいことに挑戦する人が増えるかも

新しいことに挑戦する人が増えるかも

新元号がきっかけとなり何か新しいことを始めたいと思う人もいるでしょう。新しい何かとは例えば習い事やダイエット、旅行、貯蓄、マイホームなどです。

そういった気運が盛り上がれば、金融、旅行、不動産、カルチャーセンター、スポーツクラブなどのサービス業界が、それぞれキャンペーンを実施して当たれば、これもまた特需となりえます。

元年婚ラッシュと婚活需要増?

新しい何かの中には、結婚も含めることができるでしょう。結婚による新たな生活のスタートを考えれば、平成駆け込み婚より、新時代の始まりでの元年婚がふさわしいのかもしれませんので、結婚を決意するカップルが増える可能性もありそうです。宴会場やブライダルビジネスなど期待が高まっているといえます。

相手がいないのに元年婚はできないので、元年婚めざした婚活需要が拡大することも考えられます。具体的には婚活サイト、お見合い・婚活パーティー、合コン、結婚相談所が儲かるかもしれません。

歓迎できないことも起きうる

歓迎できないことも起きうる

改元によるお祭りムードの中に、ネガティブな影響があることも忘れてはいけません。

1) 平成XXの商標登録による被害

商標権というのは登録者が登録した商標の使用を独占し、他人の使用を排除できる権利で、特許庁に最も早く出願した者がその権利を得られるものです。

平成は現在元号として使用されているので、商標登録ができないのですが、改元によって平成が現行の元号でなくなれば、平成または平成XXといった商標の登録が制度上可能になります。

商標登録が可能になってしまうと、平成XXというさまざまな商標を即座に登録する輩が現れ、その商標を社名や商品名として使用している企業に対し権利を買い取るよう求めてきたり、商標を使用するためのライセンス料を請求される危険性が起きるのです。

会社名に平成を含む企業は、東京商工リサーチの2018年3月の調査の時点で1,270社、中には同一名称の会社も存在しており、混乱が起こる可能性は否めません。

長年使用している会社名を、信用やブランディングの面からも簡単には変えられない場合も多く、やむなくそのような不当に値するような請求に応じなければならないと決断する企業は少なくないでしょう。

2) 新元号に便乗した消費者トラブル

4月30日の今上天皇の退位と、5月1日の新元号への改元に便乗した消費者トラブルが既に発生しています。例をあげてみます:

  • 電話で天皇陛下の退位を記念したアルバム、掛け軸、仏像などを売りつけようとする電話勧誘販売
  • 注文した覚えがないのに皇室に関する書籍などが届く、送り付け商法
  • 「改元に伴った登録変更のため、口座情報や個人情報の提出が義務」といった嘘の情報で口座情報等やキャッシュカードをだまし取る手口

特に高齢者がこういったトラブルに巻き込まれるようですので、いつもにも増して、家族や地域が高齢者を注意して見守る必要があります。

西暦表記に動く政府

西暦表記に動く政府

今回の天皇陛下の生前退位は、一代限りという条件の元で承認されたということではありますが、現皇太子も還暦近いですし、同じ意向で生前退位を望む可能性は大きく、生前退位でないにせよ昭和ほど長く続く元号はこの先ないと考えられますので、いつ変わってもおかしくない元号を正として使い続けること自体がいささか不条理です。

ここに来て政府もようやく重い腰をあげました。運転免許証の有効期限は、改元に先立って西暦表記に統一されることが決定しているほか、他の各省庁の行政システムについても、改元のタイミングには間に合わないものの、日付の記載を西暦に一本化する方向で調整しているとのことです。

投資家はどう動く

投資家はどう動く

投資家にとって現在最も関心度が高いのは、2019年10月に予定されている消費税の10%への引き上げと考えられますが、慶祝ムードの高まりやイベント関連需要の拡大で、個人消費が予想以上に堅調に推移する可能性があるとの見方がありますので、投資家もそれに注目しています。

新元号銘柄として投資家が確度が最も高いとみなしているのは、様々な書類の更新需要が見込める印刷関連企業です。2018年12月に今上天皇の退位に伴う行事日程が発表された時点で、すでに複数の印刷会社の株価が急上昇しました。

そのほかには改元後に通貨を認識するメカニズムの改修需要は固いことから、それに関連する機械メーカーや、コンピューターシステム更新の需要が高まるであろうIT企業にも注目が集まっているようであり、今後改元が近づくにつれて、ますます投資家の関心が高まりそうです。

ブライダル、旅行関連、運輸といった業界でも恩恵に預かれる可能性があるとされていますが、まだ様子見と見受けられています。

平成がスタートした時の株価状況は

平成がスタートしたのは1989年の1月8日で、市場を取り巻く環境も大きく違っていましたが、どのような業種が上昇したのでしょうか。

1989年1月の東証33業種別指数で最も上昇した業種は鉱業でした。続いて、機械、ゴム製品でした。こうしてみると前回の改元と業種株価の騰落の間に、どのような関連があったかが見えにくいことがわかります。ちなみに1989年1月から3月までの3カ月間で見ても、鉱業と機械は持続的に上昇が見られたようですので、改元だけの影響ということではなさそうでした。

改元のお祭りムードの後には

2019年10月から消費税が10%に増税されます。このタイミングの良さは何なのでしょう。まるでお祭りムードに絡めて増税のことを忘れさせる策ではないかと勘ぐりたくなります。

日本国民としては新天皇の即位をお祝いするのは大切ですが、その先の増税対策もお忘れなく。

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