GAFAが夢見たデータエコノミー社会は、夢では終わらない。

GAFAが夢見たデータエコノミー社会は、夢では終わらない。

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近年GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)をはじめとするプラットフォーマーが個人データの囲い込みを行うことで巨大勢力となりましたが、本来自分のデータは自らがコントロールすべきものではないでしょうか?今回はデータがもたらす近未来について考えてみましょう。

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データエコノミーとは

データエコノミーとは

データエコノミーは競争力向上のため、人の行動や企業の活動が生成したデータを生かす新たな経済のことです。最近はAIやビッグデータの実用化で、広告や商品開発にデータを取り入れる動きが活発になってきましたね。日常の生活にもデータ分析を活用するケースが広まり、データが社会に及ぼす影響が大きくなりました。

電子情報技術産業協会 (JEITA) によれば、2030年にはIoT関連市場が世界で404兆円と、現在の2倍強まで成長するようですので、データエコノミーがますます広まることが考えられます。

個人データの利活用では各国で温度差があります。ドイツの調査会社GfKの調査では、利便性のために個人情報を提供すると答えた中国人は中国人全体の4割に上っていました。一方最も慎重だったのが日本で、提供すると答えた人は1割以下でした。つまり日本では一人一人の理解をどう得るかが、データエコノミーの拡大に向けた課題となります。

先導していたGAFAの弱体化

先導していたGAFAの弱体化

これまでGAFAはデータを制すことでビジネスを制し、新しい社会をも示したのです。この状況に危機感を覚えたEUでは、データポータビリティ権を定めたGDPR(General Data Protection Regulation=EU一般データ保護規則)が施行されました。

個人データを他のサービスでの再利用を可能にし、データの持ち運びや移転ができるようになった結果、プラットフォーマーの独壇場に風穴が開き、データエコノミーが推進されたというわけです。このEUの取り組みにおける各国の反応はまちまちでしたが、これに追随する動きも見られました。

日本ではデータポータビリティ権に関する検討を進めており、2017年に経済産業省と総務省が共同で「データポータビリティに関する調査検討」を開始。まず医療や金融といった業界に限定した形で実施する運びです。データポータビリティ権が設定されれば、日本でもデータエコノミーが一気に活発化すると考えられます。

一方中国はインターネット安全法 (サイバーセキュリティ法)を施行し、⾃国産業保護・育成や安全保障を理由とし、データポータビリティ権とは真逆の政策を打ち出し、データの国外移転を禁⽌しています。

GAFA流ビジネスの規制が生む商機

プラットフォーマーを規制することで、市場が縮小するのではという懸念が生じますが、たとえ一時的に市場が縮小することはあっても、長期的には市場は拡大すると考えられます。

GAFAの弱体化で各国のIT企業が ローカルで有力プラットフォーマーに成長できるかもしれず、またベンチャー企業が巨大プラットフォーマーに対抗できる可能性も生まれるのです。

ユーザー自らのコントロールが始まった

各個人が自分のデータをコントロールする考えは、日本では個人情報保護法が施行されてもなお、浸透していませんでしたが、国際的には本人によるデータのコントロールが重視される状況なのです。

企業が個人データ利活用を検討する際には、すでにお話しした通りデータポータビリティの実装がキーとなります。 個人が自分に適したサービスを自由に選択することができることが、同時に事業者のデータ利活用の推進にもつながります。

プラットフォーマーなどの事業者に囲い込まれて散在していたデータが、個人に集約された上で、利活用に適した形で事業者間に流通することになれば、個人のための新しいサービスやイノベーションの創造も期待できるので、データエコノミーの未来は明るいのです。

データエコノミーの新規サービスの検討に

データエコノミーの新規サービスの検討に

データエコノミーで新たなサービスを検討する場合に、各企業は個人データを大量に保持することに強みを見出すのではなく、個人起点で流通するビジネスプロセスを作り、個人が求めるサービスを追求しつつ、個人がストレスなく自分のデータを預けられる仕組み作りを検討することが必須となります。

そしてそれが達成できる企業はデジタル時代の競争を勝ち抜けられるのです。

ビジネスモデルの変化

現在先進企業の多くでは、ITが浸透することで、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化すると考え、デジタルトランスフォーメーション(DX)DXに取り組んでいます。

まず製造業を例に挙げてみましょう。今までは製品を構成するハードウエアの質や性能をキーに競争していましたが、現在は製品を製造して売ることから、データの利活用で製造した製品を組み込んだサービスやソリューションの提供へシフトし、そのエンジンとなるソフトウエアが差別化ポイントとなりました。

小売業でも変化が起きており、ネット経由で受注、製造、販売をするD2C (DIrect to Consumer)D2C型の企業が成功を収め、急速に成長しているのです。

さまざまな製品に関して、量産の既製品ではなくて、自分の好きな製品をカスタマイズし、自分に最適なサイズ、量で発注することが今後当たり前となっていくのでしょうね。

データエコノミーは家、近隣など、居住の領域でも生まれています。インスタントコーヒーには、センサーやソフトウエアを搭載した家電を各家庭に配置し、コーヒーがなくなるタイミングになると、自動的に発注するという仕組みがすでに稼働しています。

これからは生産工程の姿、工場の在り方も大きく変化し、生産する製品自体の単位のあり方も今とは異なるものになることでしょう。さらに生産したものを個人に届ける上で、物流のあり方の検討も必然です。

さらにインターネットを通じて単発の仕事を受注するギグエコノミーを活用することで、自前で物流網を構築したり、物流プラットフォームを活用するなど、データエコノミーがサプライチェーンにまで影響することになります。

日本の課題

日本の課題

マッキンゼーの推定では、AI搭載のデータ主導型のアプリケーションは、2030年までにグローバルベースで13兆ドルのデータエコノミーを創生するとされています。これは20世紀の経済大国の出現に石油が果たした役割と似ていますね。

欧米から遅れている日本で、データエコノミー社会の実現のためには3つの課題があげられます。

1. 産業情報、個人情報取扱に関する法整備

日本は個人情報の規制が厳しく、産業データの取り扱いでも整備が不十分ですし、各個人の意識も変える必要があります。

2017年に施⾏された改正個⼈情報保護法では、グローバル化への対応も図り、これをベースに、日本とEUの制度下で、個⼈データの双⽅向の流通を確保する枠組みの構築を推進していますが、まだ理想形には至りません。

2. セキュリティの担保

日本のみならず世界各国で、IoTの情報セキュリティに関するガイドラインが発表されていますが、IoTはクラウド、エッジ、デバイスなど複合的な技術や製品のコンビネーションですから、絶えず脆弱性の脅威と背中合わせの状況です。利用者にとっても、得られた情報のセキュリティ確保が万全かどうかが気になるところ。

情報の透明性やセキュリティを確保するための仕組みとして、ブロックチェーン技術の活用にも期待が高まっているようです。

3. 必要データが足りない

すでにお話している通り、膨大なデータをAI活用やビッグデータ分析することで、はじめて価値あるデータエコノミーのサービスが生まれるのですが、2018年の日本経済新聞の調査では、国内主要大企業113社でも、未だにAIに必要なデータが不足、さらにはデータ形式が不揃いのため活用できる状態に至らないと考えている企業が6割とのこと。

今後の日本

今後の日本

データエコノミーのさらなる拡⼤を目指すことは間違いありませんが、それはいかに?個人の嗜好、行動の動機を深く直接的に理解することが、企業の動きにも大きな変化を与え、その結果新たなデータエコノミーが生まれるのではないでしょうか。

例えば、脳波などの脳に関連するデータの利活用や、脳科学の理論とAIを組み合わせることなどいけそうな気がしませんか。

日本製品が世界をリードしていた、「Japan as No. 1」 時代には、日本の製造業が提供する製品は、例えば電化製品や半導体など、人々の生活での重要なシーンといつも一緒でした。

今日のデジタル時代において、日常生活でも物品より、クラウドから提供されるサービスやそのサービスを利用するためのデバイスが重要視されており、それらを提供する企業が市場をリードしています。

このようないわば「勝ち組」企業は、創業当初からデータとアルゴリズムを活用したプラットフォーム型のビジネスを展開し、グローバルを目標とした戦略でビジネスを拡張してきました。

さまざまなステークホルダーが、商機のシグナルを発するデータの提供元であるとみなして、データの流れを全社視点で創り出すために、会社の中を循環するデータの流れを作ることが不可欠となるでしょう。

AIとデータを中心に据えたビジネスプロセス上で、顧客、従業員、そして取引先などから発せられたシグナルが、部門を越えて流れることでシグナルが共有され、活用することでシグナルがさらに強くなる。データが広まれば広まるほど、強いシグナルとなってキャッチできるようになるという流れは、デジタル・フィードバック・ループと呼ばれています。

デジタル・フィードバック・ループは、データの流れる速度と、シグナルの配信元であるステークホルダーの多様性から、いい意味で多くの差異を生み出します。

最近IT企業中心に広まりつつある「カスタマーサクセス」という考え方も、デジタル・フィードバック・ループにおいて重要な役割を果たしています。

ITの中でも特にクラウド業界では、頻繁に起こりうる他社サービスへの乗り換え防止、既存顧客に対しての積極的なアップセルやクロスセルが収益に大きく影響します。

強いシグナルの確保のため、データがループするスピードアップが必要となりますが、それにはカスタマーサクセスを推進するカスタマーサクセスマネージャー(CSM)を社内に配置することが有効であり、彼らを通して顧客からの意見や顧客の感情、嗜好を理解することが重要な意味を持つのです。

もともとお客様第一主義が根強い日本企業には、ステークホルダーのシグナルを全社で共有する仕組みの確立は難しいことではありません。それが実現出来れば、近い将来「日本版GAFA」が多く誕生し、データエコノミーのグローバルリーダーに登りつめるかもしれませんね。

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