メルチャリやシェア自転車ビジネスは生き残れるか?中国にヒントがあった

メルチャリやシェア自転車ビジネスは生き残れるか?中国にヒントがあった

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シェア自転車とは、新しい仕組みの自転車貸し出しサービスです。日本では所定のポート(駐輪場)で自転車を借り、別のポートで自由に乗り捨てできる方式が一般的で、従来のレンタサイクルとは異なります。

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シェア自転車ビジネスの仕組みはシェリングエコノミーをリードするか

シェア自転車ビジネスの仕組みはシェリングエコノミーをリードするか

シェア自転車を利用する前に会員登録が必要で自転車の施錠・解除などは操作パネルにICカードやスマートフォンをかざして行うのが一般的です。料金設定は事業者によってまちまちですが、時間単位、1日契約、月契約の3段階の場合が多いようです。

シェア自転車はモノ、サービス、空間などを、必要なときに共有または貸し借りするシェアリングエコノミーの一つです。

自宅を宿泊施設として提供する民泊サービスの米Airbnb、自家用車で客を指定の場所に運ぶ配車サービスの米Uberなどはシェアリングサービスの代表格として、世界中に定着していますが、欧米や東南アジアとは勝手が違う日本では苦戦しています。

一方シェア自転車は環境への負荷が小さいため、欧米ではかなり前から導入されてきましたし、日本国内では民間企業が独自に事業を営む場合と、民間企業の仕組みを利用して公共団体や行政などがシェア自転車サービスを運営する場合とがあります。

公共団体や行政にとってシェア自転車ビジネスは、その収益のみならず観光促進、地方活性化に一役買っています。現在全国87都市が、まちづくりの一環として本格導入しています。特に大都市圏では放置自転車の削減や自動車利用の抑制、地方では公共交通機関の補完としても期待されています。

シェア自転車ビジネスの世界チャンピオンは中国企業だった(過去形)

シェア自転車ビジネスの世界チャンピオンは中国企業だった(過去形)

中国版シェア自転車の原型が誕生したのは2014年、場所は北京大学構内でした。中国の大学はキャンパスが広く移動にとても時間がかかります。自分の自転車で移動する学生も多かったのですが、時に自転車が邪魔になる場合もあります。だったら皆で自転車を共有しようということで、学生の中古自転車を集め、学内に配置して共同で使う仕組みができたのです。

これが中国のシェア自転車の草分けであるofoの始まりでした。その後ofoの最大のライバルとなるモバイクが創業し、その他にも100社以上の企業が生まれしのぎを削りました。

中国版シェア自転車ビジネスの勢いは強烈でした。シェアビジネスのサービスに取り組む中国で、中国四大発明(羅針盤、火薬、紙、印刷技術)に続く新四大発明の一つと称賛されました。

2018年には北京では190万台、上海でも150万台のシェア自転車が投入され、全国では3000万台を超えました。2015年末の段階で250万人程度だった登録者は、翌16年末には2000万人に、17年末には2億人へと増加していきました。

中国版シェア自転車の仕組みが斬新なのは、日本方式と異なり自転車を街のどこに乗り捨ててもよい点です。スマホのアプリで解錠して自転車に乗り、目的地に着けばそこで施錠して放置しておけばよく、その放置した自転車を他の誰かかが借り、行った先でまた乗り捨てての繰り返しで成り立ったわけです。

利用者にとってのこの便利さがシェア自転車をあっという間にブレイクさせ、2年足らずで大量のシェア自転車が、中国人の生活と街の風景にすっかり溶け込んだのでした。そしてofoやモバイクは欧米や日本にも進出していきました。

でもその中国企業にすでに陰りが見えてきた

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中国政府の対応が遅れてしまったこともあり、あっという間にシェア自転車数が顧客の需要を上回る供給過多に陥ってしまったので、多くのシェア自転車企業が破綻しました。また顧客のマナーも良くなかったので、シェア自転車の盗難や不法投棄が相次ぎました。

さらにはデポジット(保証金)管理の不透明さも問題となり、国の都市部には企業の破綻により使用されなくなったシェア自転車と、不法投棄されたシェア自転車があふれかえる事態に発展し、現在では社会問題となっています。

最近ある中国のメディアはこのシェア自転車について「都市に発生したバッタの大群」と称しています。要は害虫ということです。中国ではあっという間に状況が変わってしまいました。現在生き残っているのはofoとモバイクの2社だけです。

日本のシェア自転車は公共から

日本のシェア自転車は公共から

日本では札幌・仙台・富山・金沢・東京・横浜・名古屋・大阪・広島・松山・鹿児島など 77 の都市でシェア自転車が導入されています。提供可能なシェア自転車台数は平均するとまだ足りておらず、自転車走行レーンの完備は道半ばで、貸出ステーションの設置の絶対数も少ないため、まだ社会実験の域を超えているとはいえません。

2015 年に閣議決定された交通政策基本計画では「自転車の利用環境を創出するため、安全確保施設と連携しつつ、駐輪場・自転車道の整備、シェア自転車の活用普及、サイクルトレインなどの普及」など、自転車の活用に向けた取り組みを推進し、2020 年までにシェア自転車の導入を、100 市町村とする目標が掲げられています。

国が掲げる自転車の活用方針に合わせ、2016年に一般社団法人日本シェアサイクル協会(http://www.gia-jsca.net/) が設立されました。この協会の主な業務は次の通りです:

  • 自転車レーン・ステーションなどの配置・構造基準の策定
  • 整備・維持管理・料金をはじめとする事業スキーム・助成方法
  • 交通ルール・交通教育などの徹底などについても研究・枠組みの確立

全国の地方公共団体や民間団体に対する情報提供や技術的協力の実施

民間と公共とのコラボレーション

民間と公共とのコラボレーション

NTTドコモ・バイクシェアが公共と共同で社会実験(https://project.nikkeibp.co.jp/atclppp/PPP/news/111500951/) を実施しています。2016年から自転車シェアリング広域実験として、東京都内7区(千代田区、中央区、港区、新宿区、文京区、江東区、渋谷区)で展開されている、すべてのステーションで貸出・返却することが可能となりました。

通常であれば地方自治体や企業ごとに運営されており、新宿区内で乗り始めたら、返却も新宿区内となっていましたが、自治体を横断しての利用ができるようになりました。2018年末にはサイクルポート570か所、自転車5,900台となり、順次拡大しています。

民間企業の参入は続く

民間企業の参入は続く

2015年にNTTドコモ・バイクシェアが設立されたあと、中国のシェア自転車企業が日本市場に参入してきました。その後2016年にメルカリ、ソフトバンクといったIT企業の子会社による参入が続きました。主な日本企業は次の6社です。

NTTドコモ・バイクシェア (https://docomo-cycle.jp/9 )(NTTドコモ子会社)(2015年設立)

東京中心に神奈川、大阪、広島、奈良などで展開。公共の社会実験を積極的に支援。パナソニックグループとも技術協業

Hello Cycling(https://www.hellocycling.jp/) (ソフトバンク子会社)(2016年設立)

東京を中心に全国展開。最近ではコンビニ最大手のセブンイレブンと協業を発表(https://k-tai.watch.impress.co.jp/docs/news/1092732.html) 、セブンイレブン店舗の敷地にステーションが設置され、利便性アップ

メルチャリ(https://merchari.bike/)(メルカリグループ子会社)(2018年設立)

福岡県のみで展開だが、2018年8月に東京都国立市と3ヶ月間の実証実験を実施

PiPPA (https://pippa.co.jp/) (ピッパ->オーシャンブルーマットが事業会社で、大和ハウスパーキング、京阪電気鉄道の3社で設立)(2018年設立)

東京、京都、宮崎でサービス提供。大和ハウスパーキング、京阪電気鉄道がサイクルポート設置場所を提供

COGICOGI (http://cogicogi.jp/) (コギコギ)(2015年設立)

半日以上(12時間以上)の長時間利用を前提としたサービス提供。東京、京都、福岡、鎌倉といった観光地でのサービスにフォーカス

現在はNTTドコモ・バイクシェアが先行している感があります。

シェア自転車ビジネスの難しさ

シェア自転車ビジネスの難しさ

一方2017年末〜2018年初頭にサービスインを予定としていたDMM.comではシェア自転車ビジネスへの事業参入を断念しました。

DMM.comでは中国版シェア自転車方式を採用し好きな場所に乗り捨てができるタイプのサービスを計画していたのですが、シミュレーションの結果乗り捨てられた放置自転車が通行の妨げとなり、結果的に世間から叩かれることになる可能性が高いということが断念の理由のようです。

またサイブリッジグループでも2018年にシェア自転車ビジネスを始めると発表していましたが、まだ本番稼働をしていません。サイブリッジグループでは、ビジネス計画の発表以来アップデートを配信していませんので、このまま立ち消えになる可能性が高いようです。

シェア自転車ビジネスでは利用料が低く抑えられているため、1台あたり1日の利用回数を上げることで収益を確保しなければなりません。例えばメルチャリでは1分4円で30分使用しても売上は120円にしかなりません。

収益を上げるには1台あたり1日の利用回数を上げる必要がありますが、住宅街まで踏み込むと1日当たりの利用回数は減り、ユーザーが求める場所にシェア自転車のステーションがない可能性も出てきます。

都心部における駐輪場の確保はコストがかかるため、シェア自転車が浸透し、利益が出るようになるまで事業を継続できる資本力が求められるので、親会社の後ろ盾を持たない独立企業が、このビジネスを手がけるのは困難と言えるでしょう。

また街中よりも人通りの少ない住宅に自転車が置かれても利用されにくく、街中での移動のみに限定したほうが収益的にもいいはずなので、実証実験を繰り返したり、先端技術を駆使して十分なシミュレーションを行う必要があります。

今後の展望

今後の展望

現時点においてはシェア自転車サービス単独での利益確保が難しいため、新たなビジネスモデルの模索が今後も続くことでしょう。駐輪場の確保の問題は依然として解決が困難ですがHello Cyclingとセブンイレブンの協業のような、異業種協業でクリアしていけるかもしれません。

IoTやAI技術の進化も、シェア自転車サービスの助けになりますが、シェア自転車の運用管理にはまだまだマンパワーも必要です。IoTやAIなどの先端技術で、シェア自転車の貸し借りの管理のみならず、人のスケジュール管理にも活用されていくでしょう。

システムのセキュリティ対策も万全にしなければなりませんが、特にIT企業が親会社の場合には問題はないでしょうし、ひょっとしたら技術面だけは同業での協業スキームができるかもしれませんね。

公共は日本政府の方針からも、シェア自転車ビジネスに前向きだと思いますので、爆発的な躍進はないかもしれませんが、ビジネスとして定着していくのではないでしょうか。

2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックまでにシェア自転車の導入を完了しようと、公共と民間での社会実験が継続していますが、これがきっかけとなって次のことが期待できるのではないでしょうか:

  • 自転車走行レーンの設置や自転車の車道走行の徹底
  • 貸出ステーションの道路上設置
  • 導入地域の住民、事業所の賛同や協力

東京都民や東京オリンピック・パラリンピックに訪れる利用者から評価が得られたら、日本におけるシェア自転車ビジネスが新たな社会インフラと認知されることでしょう。

 

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