欧米プロモーション手法コピペは、日本でほどんど受けない。欧米本社を逆教育しよう。

欧米プロモーション手法コピペは、日本でほどんど受けない。欧米本社を逆教育しよう。

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“Japan is completely different! (日本は全く違う!)”は、海外本社から日本法人に初めて赴任した、あるいは仕事で初めて日本に訪れ、日本企業とコンタクトした海外企業のビジネスマンが頻繁に口にする言葉です。そうです、日本の商習慣そして市場トレンドを十分に理解することは、海外のビジネスマンにとって本当に至難の技なのです。

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多くの海外企業では日本進出を決めたら日本法人を早々に設置する一方で、実は自分達が未経験のことはしてほしくないのが本音で、マイクロマネージメントで日本法人を完全に管理することを欲しており、なおかつ自分達のビジネスプロセスに絶対の自信があるため、営業同様マーケティングにも同じプロモーション手法を使うことを日本法人に求めることが多いのです。この傾向は特に欧米に本社を持つ企業に多くみられます。

多くの日本法人では、1日も早く成果を出せと言われているので、限られた予算の中最良なプロモーション計画を本社に提案するものの、お金と手間がかかるわりに日本では効果的でない手法を強要されています。

そこで欧米企業の日本法人が、自らの主張を通したプロモーション手法を本社に認めさせるにはどうしたらよいのかというのが、今回のお話です。

マーケティング活動には何があるか

マーケティング活動には何があるか

企業によっては営業部門の下にマーケティング部門が位置している場合もありますが、本来マーケティングは営業と並列に位置する組織で、営業の上層に位置することも少なくありません。現行の市場を観察し、1年後、5年後、10 年後のトレンドを予見し、営業目標に従って案件につながる新規リードを潤沢に増やしつつ、自社のブランド力も高めるためのマーケティング戦略を立て、活動を計画して実行するのが大まかなマーケティングの業務です。

具体的には展示会やプライベートセミナーなどのイベント中心に活動するフィールドマーケティング、SNS, email, Webなどデジタルコンテンツを駆使するデジタルマーケティングに始まり、カスタマーマーケティング、パートナーマーケティング、テレマーケティング(テレセールス)など企業のマーケティング活動は多岐に渡ります。小規模の会社ではそれに広報活動も加わります。

現在企業での平均的なマーケティング予算は、企業収益(売上)の12%です。過去5年間では微増ですが、最も高い比率になっています。

ちなみに外資系企業の日本法人の売上高の全社売上高に閉める割合が10%以上なら、日本でビジネスはかなりうまくいっているという現れですが、現実の平均値は2-3%あたりなので、日本法人のマーケティング予算は、欧米本社のそれと比べて低い水準となるのは仕方ありません。

欧米人が好むプロモーション手法

欧米人が好むプロモーション手法

まず欧米ITのフィールドマーケティング活動を例に挙げると、新規リードを大量獲得しその中から案件につながるリードをどのくらい営業に渡せるかが成果の重要な尺度となります。成果を数字で分析することを好み、さらにはリードを渡した営業へのリマインドも忘れません。大量の新規リードの獲得には、派手にお金を使うのにも躊躇しません。

ともかく派手好み

IT企業だけではありませんが、欧米企業は日本企業と比べて派手にプロモーションします。プライベートセミナーより、イベント会社が主催する2-5日間の展示会への出展を推奨します。またプライベートセミナーを開催する場合は、ホテルに泊まりがけで参加者を囲い込む形式のビックイベントを年一回開催する方法をとる企業が、アメリカ中心に多いです。

大規模展示会が大好き

日本とは物価が違うこともありますが、欧米企業は大規模な展示会に出展することを好みます。出展ブースはいわゆるパッケージブースではなくて、壁一枚からオーダーメードし、コーポレートデザインに遵守したオリジナル装飾がメインです。

ブース訪問者にばらまくノベルティは何種類も用意し、ブースでは詳しい説明はあまり行いません。ブース訪問者IDをスキャンナで収集することにハイテンションで注力し、ノベルティや一枚ぺらの資料を手渡して対応は終わりです。後日テレマーケティングが電話でフォローアップを開始し、その後営業やテクニカルが対応します。

欧米の展示会は、日本のように名刺と引き換えにノベルティを配ることはほとんどしません。名刺交換していることもあまりありません。そもそも展示会の参加登録の際のプロフィール入力をしている参加者は、名刺を持ってきていないことが多いのです。

メール攻撃(リードナーチャリング)もすごい

メールゃMAツールを利用したプロモーション手法で徐々に購買意欲を挙げることで、実際の受注に結びつけることを目的とするマーケティング活動である、リードナーチャリングが欧米企業では主流です。メールの開封率やCTA (Call to Action) のクリック率か脈ありリードを絞り込んでいくしくみで、5回程度の継続的なメール配信をワンタームとして行います。

一通ごとのメールの容量が大きくかつHTML形式なので、日本のIT企業にまだ多いHTML形式のメールを受け取れないメールルールで運用している企業では、リードナーチャリングは迷惑メールの繰り返しになってしまいますので、折り返し受け取り拒否を設定されてしまいます。

所要時間の長いテレマーケティング(テレセールス)

テレマーケティングも欧米特にアメリカで好んで使われるプロモーション手法です。アメリカは広いので情報を取りに行くのが物理的に難しいため、テレマーケティングへの電話対応が概ね好意的なのです。それに多くの企業でダイヤルインを導入していますのでターゲットにリーチしやすく、20分以内であれば超多忙でない限り、相手をしてくれる顧客が多いようです。ですから企業のテレマーケティング部門ではいかなる状況にも耐えうるコールスクリプト(台本)を用意して、主に新人に割り当てられる任務です。

日本で相手が電話を切らずに聞いてくれるのは、最長2分といったところです。万一話を悠長に聞いてくれる人がいても、間違いなくその人は決定権から遠く離れた位置にいる人か新入社員です。

日本企業は代表電話のことがまだ多く、ターゲットにリーチできないことも多いので、日本のテレマーケティング担当者は欧米とは違い、ある程度のスキルが必要になります。

日本人が好むプロモーション手法

日本人が好むプロモーション手法

平均的な日本人は、匿名である程度の情報を得たいという人が多いです。例えば展示会で興味があるネタと出会ったら、ある程度の情報をその場で収集したいので、長く展示ブースに滞在します。情報が十分得られたとなれば、長く話を聞いたとしても名刺を置いていきません。

最近日本の展示会でもスキャナが利用されてきましたが、訪問者のプロファイルデータの精度が低いことが多いです。スキャナのデータでは、後日連絡がつかないことも多いので、日本では依然として名刺交換が重要です。企業のロゴがある名刺であれば、もしかするとデータは幾分古くても、そこに在職しているエビデンスになります。

個別質問はしますが、公然の前で質問するのは好きではありません。よってアンケート用紙に質問事項を記述することを好み、迅速に答えが来ないとクレームしてくることもあります。

テレマーケティングからの電話やリードナーチャリングは、本心からすれば好みません。

これらを鑑みると、欧米企業が得意とするプロモーション手法をコピペして日本で行ったところで、大きな成果が期待できないのがわかります。

日本法人のペイン

日本法人のペイン

欧米企業の日本法人のメンバーは、日本市場でのエキスパートです。経験に濃淡はありますが、日本市場に向けた仕事に関しての、成功も失敗も経験しています。

しかしながら最速で売上を上げる方法をいくら提案しても、欧米の親会社は自分たちの方法でプロモーションを行うことを指示します。最初から日本法人にマーケティング戦略を任せる欧米企業はないでしょう。自分達がわからない、やったことがない方法を、自分達が管理しきれない海外拠点で行うことを嫌うのです。まあ心底信用していないせいもありますが。

日本法人としても活動しないことには何も始まらないので、欧米本社を説得できない場合には、その指示に従わざるを得ません。ダメだと思ってやってみたら案外うまくいくこともあるので、100%失敗するとは言い切れませんが、特に立ち上げ段階や、欧米本社のトップが変わったときなどは、まず残念な結果となります。辛いですよね。

欧米同様の成果が出ない

すでにお話したとおり欧米と日本のプロモーション手法の好みが違うため、欧米のまんまコピーでは、日本で新規リードが十分に獲得できないことになりかねません。

欧米本社なみの成果を求められる

でも欧米本社のやり方を受け入れて日本で行うからには、本社からは同等の成果を求められます。「だから最初からうまくいかないといったのに」と抗議しても、一度受け入れてしまったからには、日本法人「だけ」の失敗になってしまいます。ものすごくやりきれない気持ちになります。

日本流プロモーションを欧米本社に納得させるには

日本流プロモーションを欧米本社に納得させるには

欧米本社の言う通りにやって、何度も失敗すると評価されないどころかクビも覚悟しなければなりません。ですから早い段階で、日本で成果が出る方向にスイッチしなければなりません。どうやったら本社を納得させられるでしょうか。

まずは言われた通りにやってみる

最低一度は言われた通り欧米のコピペ方式でプロモーションをしてみせましょう。でもただ受け入れるのではなくて、欧米と日本間で想定されるビジネス文化の差異がわかる日本での公的なデータ、例えば受け入れられうるテレマーケティングの時間とか、自分たちの規模相当の会社が手がけるイベントの平均的な規模などを提示したり、同じ業界での先人の外資系企業の日本法人と本社の人間を面談させて、日本の状況を直接ヒアリングさせるのも有効です。そして日本法人が考える最適なプロモーション方法については、事前に本社に提示しておくことが必要です。

客観的に結果を分析する

プロモーションの結果を数値で客観的に分析します。どうして欧米本社同様の数値が出なかったかの理由づけは、事前に提示しておいた資料で裏付けができるはずです。万一良い結果が出たら、本社のやり方も悪くないかもと、認識を改めることもできますしね。

同じ方法でうまくいかないのなら、本社は納得すると思います。意固地になったらお金の垂れ流しになることくらい、企業の上層部にいる人ならわかるはずです。

畳み掛けるように日本流プロモーションの提案をする

本社との交渉を諦めないことです。まずは日本法人の提案のうち30%を受け入れられるように交渉してみましょう。コツは相手の手法を完全否定しないことです。その次は50%と割合を増やすように頑張ります。月日が経てば信用度も上がってくるので、徐々に日本流のやり方にスイッチするよう努めましょう。

まとめ

まとめ

海外から疲れて帰ってきた時日本人は寿司や日本そばが食べたいと思うように、フランス人はコンソメスープが飲みたいのだと聞いたことがあります。

外資系企業で働くということは異文化交流の繰り返しです。日本に関しては日本人の方がわかっていて当然ですので、欧米本社の顔をつぶさないように、でも自分たちの主張も通せていけたら、外資系企業で働くことは楽しいですよ。

 

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