5G時代に生き残る企業とは〜すべてがネットワーク化したらこんなに変わる〜
1980年代に第1世代 (1G) に数えられる、初の携帯電話が登場してからおよそ40年。当初の携帯電話は高額で誰でも持てるものではなく、重さは3キロで大きなショルダーバッグといった大きさでしたが、外出先で通話ができるだけで、人は感動できました。
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その後2Gでデジタル化し、3Gで高速データ通信ができるようになり、4Gでは大容量・高速化がさらに進み、たった40年で誰もがスマートフォンを持つようになるとは、誰が予想したでしょう。
2019年は『5G』元年と言われます。アメリカや韓国では、5Gの商用サービスの開始が今年から見込まれており、日本では2020年の5Gサービス開始を目指すとのことです。
欧米ファンドが日本の5G関連業務を担う企業への積極投資を開始し、対象企業の株価の上昇が確認されています。5Gの普及で広範な分野でビジネスチャンスを生み出し、その波及効果が期待されるため、生き残りをかけた書く業界での対応が注目されます。
5Gのおさらい
5Gとは第5世代移動通信システムのことで、現在規格化が進行中の、次世代無線通信規格です。英語では5th Generationと言われるので、それを略したのが5Gなのです。
例えば、2時間の映画を4Gでダウンロードした場合5分ほどかかるが、5Gの通信技術なら「約3秒」である。5Gの通信システムではこれほど技術革新が進む。
5Gのキーワードは
- 高速大容量
- 低遅延
- 低コスト/省電力
- 多接続
という4つ。5Gが実用になると、身の回りのありとあらゆるアイテムが、ワイヤレスでネットワークに繋がることになります。
多くの端末を同時に接続できることになりますので、IoTが一気に進むと予測されているのです。
5G実用後の影響
5Gの経済効果については、多くの経済研究所で試算が行われています。日本では2025年までの5G関連での新ビジネス規模は、1300兆円ともいわれています。
5Gの最先端市場は中国で、基地局数がアメリカの10倍ともされています。その中で先頭を走っていたのは、中国ファーウェイでした。
ファーウェイは低価格高品質のスマートフォン端末で知られるようになり、瞬く間にアンドロイド端末では世界シェア2位となりましたが、ファーウェイの売上の約50%は通信事業であり、同社は5G通信網に関しての研究に多く投資しました。
しかし米中貿易戦争の影響からか、アメリカがサイバーセキュリティのリスクを理由に、ファーウェイの排斥を進め、ファーウェイ側でもそれに強く反発しているので、現在不穏な空気が世界中を覆っています。
ドイツでは自国の5Gネットワークの構築ベンダー候補として、ファーウェイの入札を許可しましたが、ファーウェイ製品の採用を取りやめるよう諸国に求めるアメリカでは、ファーウェイを許可すれば、現レベルでの重要機密情報の共有が維持できないだろうという、警告書簡をドイツに送りました。
5Gの実用が、国際問題にまで発展しつつあります。
通信端末・半導体
5Gは通信設備から端末まで、その影響は広範囲に及ぶわけです。商用サービス開始に合わせた、5Gスマートフォンが、世界で30種類以上発売されと予想されています。
最近では急減速してきた半導体需要の、再浮上への旗振り役としても、5Gに期待が集まってきました。
5Gが普及すると、大容量のデータを高速でやり取りすることになり、データセンター投資などにより、半導体需要の拡大が期待されているからです。
自動車
最も影響が大きいとみられるのが、自動車産業です。5Gの実用で、自動運転の開発が急速に進むと見られています。
自動運転は車に積んだカメラやレーダーで集めた膨大な情報をクラウドに送り、人工知能で分析して、リアルタイムで遠隔処理するしくみですが、それには5Gの高速大容量、低遅延という特性が有効なのです。
コネクテッドカーは、情報無線端末としての機能をもった自動車です。
5Gの高速通信技術を用いて、自動車から発信された情報と街中の情報と組み合わせて、人工知能が交通状況を高速分析し、関係機関や走行中の自動車に情報を流すことが、ついに実用になると目されます。
いずれコネクテッドカーと自動運転が、統合されるとも言われていますので、こちらも楽しみです。
製造業
工場や建設現場、遠隔医療などで、インターネット経由で機器をコントロールするときに、通信速度の遅延が原因で作業のタイミングがずれたり、低品質な通信データによってエラーを起こすようなことは許されません。5Gの「低遅延」「高速大容量」で、遠隔操作に不安がなくなります。
残念な状況も
5Gを構築する通信インフラ分野で、日本は世界に後れを取っています。携帯基地局市場では、ファーウェイを筆頭に、エリクソン、ノキアの大手3社で市場の約8割を占めており、日本メーカーのNECと富士通の世界シェアは、それぞれ1%前後に過ぎません。
NECと富士通は、単独での5G機器の早期開発を断念し、NECは韓国サムスン電子と、富士通はエリクソンと提携しました。これはグローバルに通信規格が統一され、日本の通信機器メーカーは単独での生き残りが難しくなってしまった現れです。
生活のIoT化
一般人にとって最も身近なIoT化といえば、スマート家電。今もテレビや照明などの家電製品の操作が可能ですが、端末自体が直接ネットワークに繋がれているわけではありませんし、WifiやBluetoothなどの機器を経由しているため、多くの端末の同時接続はできないのです。
1平方キロメートルあたり100万台以上のデバイスの同時接続が可能となる5Gの導入後は、これらが直接ネットワークに繋がりますので、ストレスなく使えるようになります。
スポーツ観戦時など、人が集まる場でも遅延なしでの通信が可能で、大量データをタイムラグなしに、世界に向けて通信できるようになるのです。人工知能などの技術にも対応するよう、今後も開発が進められることでしょう。
5Gで変わる生活
消費者の生活に、5Gがどんな変化をもたらすのでしょう。まずは働き方改革がより身近に感じられるようになるのは間違いないです。勤怠管理はオンラインで行い、必要な時にはWeb会議がスムーズに開催できれば、オフィスの場所を選ぶことなく、リモートワーク(テレワーク)の機会が増えることでしょう。
つまり近い将来には、地方に住みながら都心の企業で働くことも可能となるということです。現在は顔を合わせたコミュニケーションを重んじて、リモートワークを積極導入していないのが日本企業の伝統ですし、働き手も出勤しないと罪悪感があるという人がまだ多いのですが、技術革新により、意識改革も一気に進むと考えられます。
5Gにより、4K/8Kサイズの高精細なものが扱えるようになるので。途切れたり、固まることはなくなります。技術が進めば、3Dで立体投影もできるようになるので、自宅にいながら、オフィスいるような感覚で働くことができますし、遠方の取引先への営業も、頻繁に行かずに済むことになるでしょう。
さらには機器のリモート操作ができるようになるため、様々な職種の働き方が見直されることになりますね。
公共の交通機関が少ない地域では、5Gの実用により自動運転が普及するので、住みやすくなります。過疎部で高齢化が進み、孤立してしまう地域でも、IoT化により医師がネットワーク接続された医療機器を利用して遠隔診療も可能になるし、ドローンでの宅配も一般的になると予測されています。
少子化にまつわる課題解決もできるでしょうし、学校教育では、高度な映像・音声通信により、どこにいても格差がない、良質な授業を受けられるようになります。
働き手不足が問題になっている農業えは、機材の無人・遠隔操作ができるスマート農業化が進むと予測されれています。少ない人員で生産可能となるわけですね。
5Gの次には
5Gの次の世代に向けての取り組みが、すでに始まっています。日本企業の先頭にいるのがNTTです。
NTTは2つの技術分野で、世界に先駆け、無線による100Gbpsデータ伝送実験を成功させました。いずれも2030年代に登場する6Gへの導入を目指して、開発が進められています。
- OAM(Orbital Angular Momentum) 多重という新原理で、5Gの5倍(予定)の、毎秒100Gbpsの無線伝送 (距離10m) に、世界で初めて屋内環境で成功
- 東京工業大学と共同で行った実験で、300GHz帯での100Gbpsデータ伝送に成功
今後もさらに進んだ技術が台頭してくるでしょう。まだ5Gの実用前なのですが。
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