バーチャルユーチューバー創世記。天下を取るのはヒトかCGか

バーチャルユーチューバー創世記。天下を取るのはヒトかCGか

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2011年から2012年ごろ、アメリカニューヨーク市立大学大学院センターのデビッドソン教授が予測したことに「アメリカの小学校に2011年入学の子供たちの65%は、大学卒業後今は存在していない職業に就く」というものがありました。

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当時存在していない職業の代表選手であり、今や小学生男子の憧れの職業ランキング上位の常連なのがユーチューバーです。そして今その先をいく存在なのがバーチャルユーチューバーといえます。

今回はバーチャルユーチューバーについて、詳しく見ていきたいと思います。

バーチャルユーチューバー とは

バーチャルユーチューバー とは

Youtubeなどの動画サイト上でタレント活動をするキャラクターのことを、バーチャルユーチューバーと呼びますが、実際にはCGにより作成されたキャラクターに動きと声を当て、キャラクターが生きているかのような動画の配信を行う人々の存在があってしかるべきものです。Vtuberと称されることも。バーチャルユーチューバーでは、プレーヤが実況しながらゲームをプレイするゲーム実況をする、あるいは既存の曲をキャラクター自らの声で歌う、自分の意見の主張を行ったり自己紹介する、日常ネタや視聴者からのコメントを紹介するなど、様々なジャンルの動画像を配信しており、娯楽を目的としたものがほとんどです。

キズナアイが自分自身をバーチャルユーチューバーと呼んだことが、その始まりと言われています。2017年12月にはニコニコ動画のランキング上位を、バーチャルユーチューバーが占めるようになったため、バーチャルユーチューバーの存在がにわかに知られてきました。この時期にバーチャルユーチューバー四天王として、キズナアイ、輝夜月(カグヤルナ)、ミライアカリ、電脳少女シロ、バーチャルのじゃロリ狐娘Youtuberおじさん(ねこます)の5人(5人ですが、なぜか四天王と呼ばれます)が話題に。

バーチャルユーチューバー は2017年12月から増え始め、2018年3月1,000人、2018年9月では5,000人、2020年11月には1万3,000人を突破しています。

2020年11月時点での、バーチャルユーチューバートップ3は次の通り:

  1. キズナアイ:286万人
  2. がうる・ぐら:126万人
  3. 戌神ころね:104万人

仮想キャラクターとはいえバーチャルユーチューバーもユーチューバーのメンバーですから、ユーチューバー人気が継続するのなら、バーチャルユーチューバーも必然的に知られてくるもの。

バーチャルユーチューバーを始めるのは技術的に難しい感じがしますが、自分自身がリアルに登場するユーチューバーと異なり、名前も顔も声さえも変えて活動できるので、副業としてこっそりデビューする人が実は増えているようです。

登場の背景にあったもの

2Dや3D技術を使ったキャラクターは以前も存在しましたが、その技術を使いこなすのにはエンジニアならまだしも、一般人にはほぼ無理の世界でしたので、大きな発展はありませんでした。

2007年のヤマハが開発したボーカロイド(VOCALOID) という音声合成システムに対応したアバターの初音ミクが登場しました。言ってみればこれがバーチャルユーチューバーの前身のようなものでしたが、依然として多くの人が自由に参入するにはハードルが高いまま。

ところがスマートフォンでのLive2D技術や、モーショントラッキング技術の拡張で、人の表情や運動などの動きのデータを撮ることが簡単になり、誰でも気軽に試すことができる土壌が整ったのです。技術的なハードルの解消によって2Dのキャラクターを作成し、YouTubeを通して発信することが一気に身近になりました。

1. VR (virtual reality=仮想現実)技術の進歩が後押し

VR機器の進化とVRプラットフォームの登場で、リアルなライブ会場に行かなくても、自宅からデジタルのライブ会場にアクセスしてライブを視聴できるようになりました。量販店で簡単に入手できるレベルのハードウェアのスペックが格段に上がり、専門知識がなくても簡単に操作できるようなスタンドアローンの機体なども出現。あるいはVR上でアバターが集ってイベントをするというコンセプトのウェブサービスも登場、Zepp(実在するライブハウスの名前)の仮想ライブ空間であるZepp VRが2018年に登場し、バーチャルユーチューバーのライブ会場として知られてきました。まずはチケットを買いVRのハードウェアを用意すれば、Zepp VRにどこからでもログインできるのです。自宅にいながらライブを視聴できるので、現在のコロナ禍においてはさらにファン層が広がったのではないでしょうか。

2. 360度カメラの性能が進化したことも

2Dのみならず、3D領域でもVR機器を用意するだけで、ライブ感満載の体験ができるようになりました。360度撮影のカメラが安価になり気軽に使えるようになってきたために、リアルな世界の全方位型の動画視聴コンテンツがどんどん登場。その臨場感はVR機器(VRゴーグル)をつけてみないと実感がわかないと思いますが、試してみるとバーチャルユーチューバーが実在すると錯覚するくらいの衝撃が得られるようです。

ユーチューバーの憂い

ユーチューバーの憂い

2006年にGoogleに買収されたのち、Youtubeは急激な進化を遂げてきました。2011年からは誰でも自由に動画をアップロードできるプラットフォームとなり、多くの若者が趣味感覚で利用するように。その後2013~2014年頃には、Youtubeを活用して収益を得られるビジネスモデル(Youtuberの登場)へと発展しました。

CA Young Labが2017年に行った国内ユーチチューバー市場調査では、ユーチューバーの市場規模は2017年で219億円、5Gが実用化される2022年には、579億円規模に拡大すると見込まれています。

Youtubeで活動しているのは、日本だけでも多めに見積もって2万人ほど、Youtuberとして生活できているのは2,000人程度、総数から見ると1割程度と、順風満帆に見えて実は一握りの人しか生活できていません。もちろん小遣い稼ぎ程度ならい良いのでしょうが。しかも今から新規に参入してトップに上り詰めるのは、芸能人であっても難しいのが現実でしょう。

年収数億円稼ぐトップクラスのユーチューバーであるヒカキン氏でも、数分の動画の公開のために、それを6時間かけて編集しているとのこと。つまり仕事している時間で比べてみたら勤め人とさほど変わりません。これだけ苦労して動画を投稿し続けていても、視聴者が必ず喜ぶ保証もなく、飽きられてしまったらもう終わり。今人気者であっても未来永劫それが続く保証もなく、絶えず新しい何かを持ち続けることが必要なのです。

ニッチな分野に転身も、あるいは

多くの視聴者をターゲットにするのではなくて、それより少ないけれど熱狂的な視聴者をターゲットにするといった、ニッチユーチューバーに転身する人も少なくありません。Youtubeであまりみないようなコンテンツを求めるユーザーは必ず存在しますし、ライバルがいないぶん成功する可能性も高いかもしれませんね。

しかし顔出しをせずに、キャラクターを自分の分身として登場させたら、ニッチユーチューバーに完全移行しなくても、リアルな自分とバーチャルと2つの顔で活動することもできますがね。

バーチャルユーチューバーの魅力

バーチャルユーチューバーの魅力

バーチャルユーチューバー として活動する人が増え続ける今、活動の面白さはどこにあるのでしょうか。

別の人格が誕生し育つこと

バーチャルユーチューバーには、誕生と同時に新たな人格(魂)が生まれます。キャラクターを操作する人とは別のものです。これは他の人を演じる役者になるのとは根本的に違います。基本的には操作する人がキャラクターになりきり、自分とは違う人格でロールプレイをしていくのですが、演じ続けているうちに自分が想定したこともなかった別の魂が宿るものです。また男性が女性のロールを客観的に体験することも、その逆もありますよね。ふしぎなものでこれがどんどん自然に振る舞えるようになる。これがバーチャルユーチューバーとして活動する上での一つの魅力といえるのでは。視聴側にとっては、キャラクターの進化(成長)が楽しみになるのです。

すでにお話ししたとおり、顔出しなしでユーチューバーができる点も魅力ですね。本業で顔が売れている人も、こっそりはじめられますので。

企業も起用するバーチャルユーチューバー

企業がマーケティング施策の観点から、Youtubeが有効なツールと判断し、ユーチューバーに自社製品やサービスの宣伝を依頼することが増えています。しかもバーチャルユーチューバーを起用するのは、地方自治体や大企業がほとんどであることが特徴なのです。

例を挙げてみましょう。キズナアイが日本政府観光局の訪日促進アンバサダーに就任。茨城県の広報を担うバーチャルユーチューバーの茨ひよりは、茨城県の職員としての位置づけです。

企業の事例ではサントリーが燦鳥ノム(さんのとりのむ)を起用。彼女は水の国からやってきた120歳の歌手で、同社製品のレビューや、動画やゲーム実況などの活動にも携わっています。花王ではバーチャル世界の女子高生である、月ノ美兎(つきのみと)とタイアップを行なっています。

自治体や企業がバーチャルユーチューバーを起用する理由としてあげられるのは、実在しないからこそ、スキャンダルリスクが少ないことや、テレビのアニメキャラクターと違い、既存イメージが先行しないことなどが考えられます。

事業として取り組む企業も

バーチャルユーチューバー新規事業として取り組む企業も少なくありません。例を挙げてみましょう。

グリー(GREE)

2018年に40億円規模のVTuberファンドプロジェクトを開始し、まずはライブ配信プラットフォームのFacemojiを提供する米スタートアップのOmnipresence, Inc.に出資。

gumi

VRなどに特化した事業支援を行うTokyo VR Startups株式会社を設立し(現在はTokyo XR Startuup株式会社)キズナアイの開発元であるActiv8に対し6億円の出資。Activ8が手がけるupd8と連携して、バーチャルタレントの育成プログラムの新設。

Active8

キズナアイを開発したスタートアップ 。個人・企業を問わずタレントを支援するバーチャルユーチューバープロジェクトのupd8を、2018年ー2020年末まで運営。

バーチャルユーチューバー の今後

バーチャルユーチューバー の今後

コロナ禍の今、急速に知られてきたバーチャルユーチューバー市場ですが円熟期を迎えたわけではありませんので、まだまだユーザーを増やしていく可能性が大きいです。一般的なユーチューバー市場と比較すると収益性の面では劣るかもしれませんが、今後数年で人気はさらに上昇することが考えられます。

今後は企業の製品紹介やプロモーションなどの宣伝広告、テレビ番組や動画サービスへの出演、ライブコマースへの活用など、バーチャルユーチューバービジネスの規模が拡大していくのではないでしょうか。

バーチャルユーチューバー市場の今後の明るい未来に期待したいですね。

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