デジタル接客/デジタルホスピタリティとは何か、

デジタル接客/デジタルホスピタリティとは何か、

 後で見る

今まで「日本ではデジタル移行はまず無理だ」と言われていた分野でも、新型コロナウイルス感染拡大により、ステイホームを余儀なくされたために、様々な分野で急速に進みました。会社に出社ありきであった業務がリモートワークに転じ、対面でなければ商売にならないと考えられていた接客や商談、セミナーなどが、瞬く間にオンラインに移行され、電子署名ツール、オンラインセミナーツールなどの導入は無理と考えられていた日本企業でも、この半年間で状況は劇的に変化を遂げています。

【合わせて読む】

サードプレイスを日本流に再構築!サウナやスナックも立派なサードプレイス
ウルサス(ULSSAS)せずにSNSマーケティングとか言ってない?
ニューノーマル到来。ECはライブコマースが席巻する。過去、日本で定着しなかったのはなぜ

アフターコロナ時代を迎えても、以前の世界に戻らないと考えられています。つまりオンライン上での仕事、教育、医療、買い物、娯楽は今後も増えていくのです。

多くの業界が変化していますが、中でも小売業はデジタル化が加速している業種の一つ。リアル店舗は赤字で閉店していても、ECサイトのチャットを使ったデジタル接客の利用率が、半年たらずで4倍近くまで上昇した事業が企業もいるほど、EC経由のビジネスが好調なのです。デジタル接客は、今後さらに需要が高まると期待されています。

今回は小売業にデジタル接客がもたらすものと、その将来について確認したいと思います。

デジタル接客とは

ECサイトやインスタグラムなどのSNS上で、販売員が商品を紹介したり、顧客からの質問やリクエストに直接応えるような、オンライン上での新しい接客方法がデジタル接客です。これまで対面(オフライン)で行われてきた接客をオンラインへ移行することから、オンライン接客と呼ぶこともあります。

デジタル接客とは実際どのようなものであるのか、アパレルでの例を挙げてみましょう。今もっともブレイクしているといえる「コーディネート投稿」は、販売員自らがコーディネートした洋服を、自分で実際に着て写真を撮り、撮った写真に商品の売りやコーディネートのポイントについて、コメントをつけてサイトに投稿し、サイト来訪者に商品の魅力を、販売員の生の声で伝えるというもの。

来訪者は販売員への問い合わせもその場で行えるので、感覚はリアル店舗と変わらない満足感を得られるのです。

デジタル接客の利用が増えた理由

3つの要因が考えられます。

1.ECサイトやSNSの来訪者が増加

緊急事態宣言発令による外出自粛で多くの店舗は休業となり、買い物をしたい時は、外出してリアル店舗に出向く代わりにネット経由で購買するしか方法がなかった

2.企業のプロモーションの効果

リアル店舗の赤字を補填し、生き残り対策でEC事業にテコ入れ

3.消費者(ユーザー)側の変化

現物を実際に手に取って確認することができなくても、ECサイトで購入しても満足できる買い物ができることがわかった

デジタル接客を行うメリット

次にデジタル接客のメリットを確認してみましょう。

1.販売員の活躍の場が広がり、売上向上に期待ができる

これまでは担当するリアル店舗に出勤し、来店した顧客に1対1での接客を行って商品を売ることが販売員の営業スタイルでしたが、デジタル接客では時間、場所に縛られることがないのです。ECサイトなら、24時間営業で世界中のお客様と会うことだって可能になりますし、デジタル接客は販売員の活動に新たな機会を与えるとも言えるでしょう。

地方店舗の販売員

対象となる顧客数が首都圏に比べたら少ない上に活動範囲が限られているので大きな成果が挙げられなかった地方店舗の販売員も、やる気になれば全世界の顧客に対しデジタル接客を行えるので、都心店舗に負けない実績を上げるのも可能になります。

子育て中の販売員

子育て中は時短勤務になることが多く、店舗で働ける時間が限られているものですが、デジタル接客なら、会社の承認は必要とはいえ、自分の都合に合わせての活動が可能です。自分の欲しいものは、同じ状況にある他の子育てママたちの欲しいものともニアリーイコールのはずなので、新たな売れる商材を見出すことだってできるはず。

シニアな販売員

ECサイトに来訪するのは若い世代だけではなく、幅広い年齢層の来訪者があるので、そこはシニアな顧客のニーズがわかる、ベテランシニアの販売員の出番でしょう。そこには共感が生まれ、等身大のお手本としてECサイトにおける、シニアな「人気販売員」になることだってありえるのです。

デジタル接客を導入することで、販売員のやる気をテクノロジーの力でマックスに変えるマジックが使えることも考えられます。デジタル接客で売り上げを伸ばした分、評価してもらえる制度があるならなおさらです。

緊急事態宣言発令中に、デジタル接待で人気を獲得した販売員にはファンがつき、そのファンが販売員と対面したいがために宣言解除後、リアル店舗が再開したおりには、ご贔屓の販売員を訪問するといった事例が数多くでているようです。

2.データを活用してPACDが回せる

デジタル接客ではリアル店舗での接客に比べて取得できるデータは多く、それを活用して次なる一手を講じるためのPDCAを回しやすいと言えるでしょう。

一般的なWebサイトであれば、よほど購買の意欲がある場合を除き、訪問者は単なる一元さんですし、デジタル接客も行われることはまずありませんよね。もしかするとリードになり得たかもしれない訪問者をみすみす見逃すことになるのですが、ECサイトでの効果的な接客手段であるチャットを導入することで、状況は変わります。訪問者とチャットを行うことは、リアル店舗の訪問客に接客を行うことと同義です。

チャットで適切な接客ができていれば、emailアドレス情報の取得も容易となるので、その後はMAやCRMツールを活用して、リードナーチャリングもできますから、一元客がポテンシャルリードに変身することもあるというわけ。

デメリットは何だろう

リアル店舗の場合、そこにある商品はもちろん、店舗のレイアウトやスタッフ、馴染みの顧客層、店の雰囲気など全ての要素が、店舗のブランドになります。が、デジタル接客では販売員の顔は見えても、その他の要素を訪問客が一気に体感することは難しいですね、

また本来の目的以外の「偶然」の出会いや、想定外のものを発見することをセレンディピティ(serendipity)と言い、リアル店舗にはこれを生成する力があるのが一つの魅力といえますが、実際の商品を直接手にできないために、デジタル接客でセレンディピティを生み出すのは難しいといえます。

以上の点から考えると、デジタル接客とリアル店舗の組み合わせは、今の所ベストの販売戦略のようですね。

デジタル接客の進化状況

デジタル接客の進化状況

コロナ禍において、消費者の生活にオンラインは切り離せない存在となりました。当然デジタル接客のブームも一過性のものではなくて、今後ますます進化すべきものといえます。

デジタル接客のトレンドを確認してみましょう。

AI活用

デジタル接客にはチャット導入が必須ですが、最近このチャットにAIを活用する企業が増えています。無論AIには各訪問客に対し、個別の対応を行って深い関係性を作ることはできませんが、一般的な問い合わせには回答することは得意です。そこで簡単な問い合わせであれば、ほとんどすぐに回答ができる体制を作っておけば、答えを知りたい訪問客を、長時間放置することが減るはず。

またECサイトで訪問客が行なった行動をAIに分析させ好みを識別した上で、今サイトを見ている訪問客が気に入るに違いない商品を提案することがAIにはできます。

人の代わりをAIに求めるのではなく、AIが得意なことを見極めて、活用するのがデジタル接客の成功の秘訣のひとつでしょう。

ライブコマース・動画コマース

著名人やインフルエンサーがライブ動画を配信し、それを見ている視聴者はリアルタイムに質問やコメントをしながら商品を購入できるという新しいEコマースの形がライブコマース。中国では驚異的にブレイクしていますが、日本ではまだ浸透しきれていないデジタル接客手段です。

しかし最近ではライブコマースの配信を、ECサイト上にアーカイブして、売上を向上させている企業が日本でも出てきました。時間に縛られず、アーカイブされたコンテンツのすぐ横に、詳細な商品情報の記載があるのは、ECサイトの訪問者にとって嬉しいサービスと言えるでしょう。

視聴者が動画かライブ配信を見ながら、そこに映っている商品を直接クリック、あるいはタップして商品をカートに入れることができるEコマースの形が動画コマースと呼ばれるもので、こちらも日本企業は波に乗れていません。しかしライブコマースのアーカイブ版同様に、成果が出やすいフォーマットが開発されれば、ブレイクするのも早いと予想できそうです。

デジタル接客認定制度プランが検討開始

デジタル接客の導入が急速に進んできたことから、2020年7月には、非対面接客における顧客対応ノウハウを持つ株式会社ジーネクスト、AIチャットボットのWhatYaを運営する株式会社空色、米国COPC社のコールセンターや、BPO業務のパフォーマンス改善モデルであるCOPC規格の運営を担う株式会社プロシードが、デジタル接客の品質向上を実現するため、3社共同でデジタル接客認定制度プランの検討を開始しました。

デジタル接客の導入を目指す企業がこの認定を取得することで、高い顧客満足やカスタマーエクスペリエンスを提供できる体制の用意があることをアピールできるというものにする計画です。この3社ではそれぞれの強みを活かし、リアルとデジタルを組み合わせた次世代型店舗などにおいて、高いサービス提供を目指せるプラットフォームを提供する予定であり、実現に向けた第一弾として、チャット接客のスキル認定プロジェクトを始動することが明らかになっています。

デジタル接客の今後

コロナ禍での生活様式の変化(ニューノーマル )は、案件獲得にはリアルな対面営業、また新規リード獲得には実店舗や窓口への来客に期待するしか方法がないと信じていた業界や業種に大きな影響を与えました。コロナ感染拡大の可能性が否定できない中、今後もデジタル接客のニーズが高まることが予想されますし、たとえコロナ感染問題が落ち着いたとしても、以前のスタイルに戻ることはないでしょう。

機材や知見がないからとデジタルの波に乗り切れない企業は、たとえ日本が誇る大企業だとしても、そのITリテラシー格差のために、自社が淘汰されてしまう未来もあり得るのです。まだ注力ができてない企業は、デジタル接客にフォーカスしましょう。

加えて言及すると、あと5年弱に迫る2025年の崖問題の対応も、企業にとって最重要課題であることを鑑みると、デジタルへの変革や変換、ひいてはデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進について前向きに検討するタイミングは、もう今を逃すとないのではないでしょうか。

【合わせて読む】

サードプレイスを日本流に再構築!サウナやスナックも立派なサードプレイス
ウルサス(ULSSAS)せずにSNSマーケティングとか言ってない?
ニューノーマル到来。ECはライブコマースが席巻する。過去、日本で定着しなかったのはなぜ

«

»

 後で見る
OFFCOMPANY スタッフ

この記事のライター

OFFCOMPANY スタッフ

 JOIN US
OFFCOMPANYへ参加する


もっと表示する