ヘッドレスCMSを導入すべきいくつかの理由|WEB制作者はもうお済みですよね?
ウェブマーケティングに携わっている方であれば、最近ヘッドレスCMSという用語を目にすることが増えたのではないでしょうか。ヘッドレスCMSが従来型のCSMと何が違うのかを確認したいと思います。
CMS定義のおさらい
CMS(=Content Management System)は、コンテンツ、ファイル、ワークフロー、リポジトリなどの情報を管理して公開するシステムのことです。Webメディアの記事、企業のウェブサイト、ECサイトの商品情報に多く使われていますし、個人ユーザーでも利用する人は多いですよね。
CMSといえばWordPress、はてなブログやQiita、Noteなどが有名どころですが、CMSのビューには次の三種類があるのはご存知でしょうか:
- サービス固有の画面(Qiita、Noteなど)
- テンプレートの選択が可能(WordPress、はてなブログなど)
- HTMLをベースに自由に作成可能(WordPress)
中でもWordPressは2003年にリリースされ、今では世の中に存在するウェブサイトの約30%がWordPressで管理されています。WordPressはPHPで作成されたオープンソースソフトウェアで、コンテンツの管理や、テンプレートの集まりであるテーマを自由に編集でき、見た目(ビュー)とコンテンツの両方を一括管理することができるものです。
しかも専任のエンジニアがいなくても、CMSのオペレーションに慣れれば簡単にウェブサイトの更新ができてしまうのですが、ユーザーのレベルにあったCMSを選択する必要があります。
ヘッドレスCMS
ヘッドレスCMSのヘッドとはビューを指すので、ビューがないCMSのことをヘッドレスCMSというのです。つまりヘッドレスCSMではコンテンツを管理するバックエンド機能だけがあり、ビューやUIを作るフロントエンドは、分離独立したものとして位置付けられます。バックエンドとフロントエンドが結合してないことから、デカップルドCMS (decoupled CMS=結合していないCMS)と呼ばれることも。
さくっと理解するためにまずは一例を。企業サイトでは「新着情報」のみをブログのように更新を行い、「企業概要」や「サービス」などはあまり更新しない場合が多いと思いますが、ヘッドレスCMSであれば、必要な箇所にだけCMSを使い、他のページはCMS外に制約がない形での作成が可能なのです。WordPressでは更新があるないにかかわらず、全て「固定ページ」としてWordPress上で管理する必要がありますので、大きな違いといえます。
またフロントエンドとバックエンドが分離しているので、それぞれの開発も別々にできるために、効率向上にも期待が。
個別で作ったものを、どう連携させるのか
ウェブサイトとCMS本体のAPI (Application Programming Interface) 経由で接続し、バックエンドからコンテンツを取得し、ビュー(フロントエンド)で表示させ、あたかもひとつのWebシステムのように稼働させることができます。API経由で接続できるのであれば、どんなデバイスやデザインにもコンテンツを提供でき、レスポンシブよりもさらに柔軟な展開が可能になるのです。
どこにCMSを置くか
ヘッドレスCMSでは、どこにCMSを置くかで種類が分かれます。
セルフホスト型
WordPressもこの型ですが、自前のサーバやデータベース上にCMSを置いて動かすものです。オープンソースのCMSを利用すれば、利用料は無料で柔軟なカスタマイズ実装が想定できますが、展開するにはそれ相応の知識や技術が要求され、アップデートやセキュリティ対策も十分に行う必要があります。
CaaS (CMS as a Service)型
サーバやデータベースがクラウド上にあり、CMSがツールではなくて、サービスとして展開されているもの。その多くはクラウドの運営企業にサービス料を支払い、CMSの管理画面のみを利用するものです。管理業務はお任せできるので手間が省けますが、利用料金のことを考えなければなりませんし、運営企業が突然サービスをやめてしまうリスクもゼロではありません。
ヘッドレスCMSのメリット
ヘッドレスCMSのメリットを、従来型CMSと比較してみましょう。
マルチデバイスに対応できる
ヘッドレスCMSでは、コンテンツをWeb、スマホアプリ(iOS/Android)など複数のデバイスでの表示が可能になります。例えばスマホアプリ内にWebと同じお知らせを配信したい場合、現状のCMSであれば専用のWebビューを作成してから、スマホアプリ内で照会させることが多いのですが、Webビューでは画面を表示するのに時間がかかります。スマホゲームをやっている時に、お知らせの表示だけとても時間がかかって、イラッとしたことがある人は少なくないですよね。
一方ヘッドレスCMSを使う場合には、API経由でコンテンツを取得できるためスマホアプリのネイティブ機能でそれらの照会ができるので迅速でスムース。ユーザーを無駄に待たせることはなくなるのです。
必要な部分だけCMS化
企業ウェブサイトをHTMLで作成してあったとしましょう。後からにマーケティング担当が自由に入稿できる「お知らせ」機能を追加してほしいという要望があった場合には、従来のCMSなら、ウェブサイト全体をWordPressなどで作り直する必要があります。ヘッドレスCMSを使えば、「お知らせ」部分のみをAPIから取得し、サイトに表示することができるので、最小限の開発で部分的に入稿機能を付けることが可能になるのです。編集頻度が高いサイトも同様の対応ができますね。
フロントエンドの選択肢が多い
フロントエンドにはシングルページアプリケーション、JavaScriptで行う画面の書き換え処理などをサーバー側で実行させて、ユーザーの待機時間を短くするサーバサイドレンダリング、あるいはスマホやタブレットのホーム画面に、アプリケーションストア経由でインストールして使用するネイティブアプリなど多くの選択肢が。選択肢が多いことでウエブサイトのパフォーマンスも最大限に高められ、またデザインの自由度も高まるというものです。
フロントエンドの仕様変更が簡単
従来のCMSの場合、どんな仕様変更でもウェブサイト全体に影響を及ぼす可能性がありますが、ヘッドレスCMSでは各ページごとに仕様変更を行うことが可能になります。
ヘッドレスCMSのデメリット
次にデメリットも確認しましょう。
管理情報の場所を検討する必要がある
ヘッドレスCMSを使う場合も、情報へアクセスするためのログインユーザーやパスワードなどの情報が必要です。管理者以外知られたくない情報をどこで管理すべきか検討する必要が大いにあります。
統計情報の収集が別に必要
WordPressなら、Google Analyticsで作成されたWebページごとに、アクセス数などの統計情報の収集ができますが、ヘッドレスCMSでアクセスされる情報はコンテンツ情報なのでGoogle Analyticsの対象外。よって統計情報の別の収集方法を確立する必要があります。
API管理がマスト
ヘッドレスCMSの肝となるAPIのバージョンアップやライセンスなどの確固たる管理が求められますし、APIへの同時アクセスに対するパフォーマンスなどの品質管理も忘れてはいけません。
従来のCMSの機能が使えなくなることも
使い慣れていたエディタやプラグインなどが、ヘッドレスCMSでは利用できなくなる可能性があるので、コンテンツの作成に今まで以上に時間がかかることも想定する必要があります。
開発内容が専門的になり、開発工数が増加する
ヘッドレスCMSの方がより専門的な知識が必要となるので、開発工数が増加する場合もあります。
ヘッドレスCMSにはどんなものがあるか
すでにヘッドレスCMSは多く存在しています。いくつか代表的なものを紹介したいと思います。
Contentful
SpotfiyやWeWorkが導入する、ヘッドレスCMSでは最も知名度があります。APIベースのクラウドサービスですから、ユーザーがサーバ管理をする必要がありません。画像の自動リサイズ機能など、実に多くの機能が搭載されています。開発の幅が広いので、愛用者が多いため、ユーザーからの情報も充実しています。日本語での投稿は可能ですが、管理画面の日本語への対応はなされていません。またビジネスユーザーレベルでは、管理画面が扱いにくいといえます。
MicroCMS
管理画面のUIは扱いやすく、また純国産のヘッドレスCMSなので日本語対応は完璧。頻繁に情報更新しているため最新情報がとりやすく、問い合わせにも日本語サポートがあるのが嬉しいですね。無料版でも十分な機能が用意されているのもアドバンテージ。しかし相対的に見ると機能やドキュメント類の用意が他のヘッドレスCMSと比較すると、まだ足りない部分もありますがアップデート頻度も高く、ロードマップも公開されています。ユーザーからの要望や意見を積極的に取り入れようとしているので、迅速にパワーアップしそうなヘッドレスCMSです。
Framelink
Googleが提供するバックエンドサービスのFirebaseを、データベースにしたヘッドレスCMSがFramelinkです。Firebaseではオブジェクト型の高速なデータベースなどの様々な機能やサービスを備え、非常に汎用性の高いサービスで、Googleのクラウドサービスである、Google Cloud Platformとの連携も簡単なのが大きなメリットといえるでしょう。
prismic.io
1ユーザーのみが使う管理画面なら無料で契約でき、機能をほとんどフルで使用できる、ヘッドレスCMSです。個人事業主などの小規模サイトにはもっとも向いているCMSの1つといえるでしょう。ダッシュボードの UIも完成度が高く、サクサク動作しますが、テキストに使用できるのはリッチテキストのみとなるところや、チュートリアルの読み解きに、他のCMSより専門知識が必要になるところが注意点です。
ヘッドレスCMSの今後
今後もヘッドレスCMSは急速なパワーアップを継続していくと考えられます。しかし日本語環境での対応という点では、まだ日本語の資料も少なく、学習するのも比較的難しいために、テクノロジーを習得しているエンジニアもそう多くありません。だからCMSエンジニアが、まだライバルが少ないうちに、このチャンスを逃さず早いタイミングで挑戦するのもよいと思います。
中小規模企業のウェブサイトでは、もうしばらくWordPressの活躍が続くと考えられますが、大企業向けでは、ヘッドレスCMSが早い段階でスタンダートになる可能性があります。新しいアプローチやユーティリティがどんどん組み込まれていきますし、最先端のweb開発がもたらす利点を組み込む試みが、大企業から始まるに違いないからです。
ヘッドレスCMS時代がやってきても、エンドユーザーの存在が重要視されることは今後も変わりません。ヘッドレスCMSの各ベンダーは、エンドユーザーからのインプットに迅速対応して、コンペの前に出ることを目指します。
我々エンドユーザーが利用するチャネルやデバイスにかかわらず、ヘッドレスCMSで高速と魅力あるコンテンツを高速レスポンスで楽しめる日はもうそこまできています。楽しみに待ちましょう。